ひろるーく

ある男のひろるーくのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.8
これはもう平野啓一郎の原作がいいんです。話が面白い。
そしてその原作の丁寧な映像化をした石川慶監督も素晴らしい。
「愚行録」もよかった。「蜜蜂と遠雷」もよかった。とても優れた監督さんなんだなと思います。

過去を消したい。過去を封じ込めて生まれ変わりたい。
できれば多くの人にそのまま先入観なく溶け込めるような人生を送りたい。

そう思っている人は多いのだと思います。

本人にはなんの罪もなく、やましさもなく、ただただ生まれ育っているだけなのに、世の中は偏見をもって悪意あるフィルターをかける。
とても辛いと思います。

この映画は、死刑囚を父親に持つX(窪田正孝)が、名を変え、土地を変え、ただただ生きようとします。
父親の大きな罪をその姿そっくりの自分が抱えてしまっているであろう罪が憎くてたまらない。だから世の中から疎まれるのだ。そう思っても仕方ないとも思います。

そしてこの事件を追う弁護士城戸(妻夫木聡)も在日三世という自身をXに投影します。
自分も血という過去を消したいのではないか?と葛藤します。
なぜ自分はそのような立場に生まれてしまったのか(何も悪くないのに!)。
Xと自分、何が同じで何がちがうのか。

演技派の俳優が多く出演していますので、映画がしまっています。
緊張感は最後まで続きます。

そしてラストに向かって大きなうねりが起こります。


おすすめです。
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