タスマニア

さがすのタスマニアのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
4.0
2022年15本目。

"今年の邦画で既にベスト級" という前評判のバイアスをしっかりと受けながらも、自分もこの作品は傑作だと思った。

まず、本編が持つ価値を全く損なわずに、人に「見たい」と思わせる予告編の映像が素晴らしい。
大部分の映画の予告映像って、そのバランスのチューニングに苦しめられているイメージがあったので尚更。
"作り手の意図" と "映画の面白さ" をしっかりと汲み取れているように思えた。というか、良質なプロモーションに自然につながるような構成と脚本なのかもしれない。

片山監督は天下のポン・ジュノ監督の助監督だったらしい。
その情報に引っ張られている気もするが、確かに "ポン・ジュノみ" を感じた。
とりあえず、近年の邦画ではあまりお見かけしない空気感や描写に新鮮さを感じる。
「韓国ノワール」とよく表現されている、その色味は片山監督の映画作りにポン・ジュノの DNA が刻み込まれているからなのかもしれない。
題材は違うけど「見えない目撃者」を見た時のワクワク感やゾワゾワ感に近い感覚。「お、日本の映画でこんな描写見れるのか!」みたいな。

"ポン・ジュノみ" って何かな?って自分の中で咀嚼してみた。
それは、「描きたい社会的なテーマがありつつも、その土台となるストーリーや脚本が(サスペンスやミステリーとして)シンプルに面白いこと」だった。
うん、普通に展開読めなかったし、結末まで目を離せない面白さが強い。
そういった点では個人的には「岬の兄弟」とは違って、かなり見やすい。
(この映画で万引きの取り調べに出てきた警察官が「岬の兄弟」の松浦裕也に見えたんだけど、どうやら違うみたい笑)

キャストの演技も良い。
「アドリブで共演者噴き出させるおじさん」でお馴染みの佐藤二郎の違った顔が見れる。そもそも、ちょっと小汚い無骨なおじさんも全然似合うから、こういった役柄もバッチリハマるはずだよな笑
良くも悪くも福田組の呪いにかかっていた。
今後も、こんな佐藤二郎を見てみたいよ。
なんか、昨年の「空白」で、古田新太の個人的なイメージと相反する側面を発見できたときの感覚にも近い。

そして、そんな「空白」にも出てた伊東蒼。
この子も演技すごいなぁ。
失礼ながら、地の顔つきがやや陰がある雰囲気。
難しい役柄を引き受ける女優さんになっていくんだろうなぁ。
ちょっと、門脇麦的な感じ。
とりあえず、この映画では「空白」のときと違って、自分の主張をはっきり言葉に出したり、泣いたり、笑ったりしてくれたので新鮮だった笑

清水尋也はこういった役柄上手すぎん?笑
同時期のドラマでも「かつて、少年犯罪を犯した少年A」を演じているけど、その役柄に説得力を持たせる目ができるのがすごいぞ。
現在の "綺麗な顔のヤバい男" 枠の個人的な最前線は岡田将生だけど、清水尋也も間違いなくプロスペクトだ。そもそも、微妙にタイプが違うので、棲み分けもできてる気がするし。
よく考えると「渇き。」のときから、その才覚と雰囲気が溢れ出ていたなぁ。

個人的に悔しかったのはムクドリ=森田望智に気付けなかったこと笑
今個人的にもキテる女優さんなんだけどな。。。
メガネかけて、化粧薄めにして、ビジュアル的な印象を薄めている感じがしたけど、キャラクター的にはすごく印象的だった。
この映画の個人的なベストシーンは智とムクドリのトイレでのシーンだと思うし。「お父さんと同じ匂いがする」だってさ。
ちょっと泣けてくるよ、あのシーンは。

そんな感じで、映画が作られる背景やキャストやその演技で触れたい/語りたいところがいっぱいあったので、すごく心に残る映画だったんだと思う。

最後の長回しも印象的だったなぁ。
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