バイクでぶっ飛ばすのが生き甲斐くらいのことを言っていた宇津井健がスピードを求めてボートレーサーに転身。 モーターの開発と新ボート売り込みを巡って人の命まで巻き込んだドス黒い争いが繰り広げられる。なにをどうしたらこうなるのかという圧倒的新東宝クオリティな珍作で故になかなかどうして面白い。というか笑うしかない。何度も言うようだが、ヤング宇津井の空虚な存在感は何故か僕を魅力してやまないのである。

2021/10/17
千葉泰樹『バンコックの夜』
香港三部作に続く泰樹のアジア観光メロドラマ。前半に展開する加山雄三・星由里子・張美瑶の恋と友情の三角関係は『香港の星』における宝田明・ユーミン・団令子のそれのほぼトレースではあるが、ライバル心に燃える星と天然かます張の対比が可笑しい。星を置き去りにして台北・バンコク編に移ってからは例によって想い合うのに結ばれないプラトニック悲恋モードに。それでもエンディングに見せる加山の笑顔が本当に素敵でこれまでの全てが報われた気持ちに。やっぱり映画は顔。海外赴任先で頼りになる男としてすっかりおなじみの藤木悠が今回も活躍していて嬉しい。ワンシーンのみ出演の上原謙が加山に向かって「君の親父は本当に素晴らしい」と虚実を撹乱するリアル父子ギャグを放っていた。

バイクに命をかける宇津井健が大真面目なのに失言だらけで終始笑える。恋人の星輝美が人質に取られ八百長を強要された宇津井が「嫌だ！」と断るシーンは開いた口が塞がらない。スピードボート開発が加熱し誰よりもスピードを追い求めるスピード狂ヤング宇津井をみれるだけで儲けもの。

• #mingo2021

スピードに命を賭ける宇津井健。女優陣が最高。三条魔子、星輝美もすばらしいが、ジャガーを飛ばす魚住純子を堪能する一本。