ポルノ映画の企画脚本を完成させるべく、温泉街で合宿することになった製作陣が、占星術に基づいた女性の性観念を探求していく。性的嗜好の多様性をコミカルに描いている、日活ロマンポルノ。

新人の脚本家（椎谷建治）、デカチンの監督（益富信孝）、オカマ風のプロデューサー（山下洵一郎）が、群馬県谷川岳でダラダラと合宿をおこなう。そして、劇中劇というかたちで、鶴岡修がオールスター女優を相手に小芝居を打っていく。

劇中劇では、音声モザイク処理を使用して声を変えたり、書き割りを使用して虚構の世界を演出したり、曽根中生の作家性が色濃く出ている。また、山本晋也脚本ということもあり、たこ八郎がカタコト日本語のヘンテコ芝居で登場する。

「100人いたら、100通りのセックスがある」「他人のセックスほど、笑えるものはない」を地で行く作風になっており、人間の性行動の滑稽さがビンビンに伝わってくる。曽根中生と山本晋也の化学反応を楽しむべし。

山本晋也×曽根中生という冗談のようなコンビが生み出した、不思議すぎるコメディ・ポルノ。意味のわからないタイトルも、この作品の全容が掴めない宣伝部が発狂寸前になりながらつけたのだろうなと思ってしまう。

ポルノ映画を作っている監督、脚本家、プロデューサーの三人が脚本執筆のため温泉宿に籠るも、脚本家はいくつか構想するもまとまらず、他の二人は遊んでばかり、挙げ句の果てに三人は女性と遊ぼうとするもぼったくられて帰っていく…というゆるゆるな物語。それだけでも凄いのに、作品の半分近くが物語を練っている脚本家の空想シーン、配役に登場するメインの女優三人は空想の世界にしか出てこない、おまけに絡みのシーンは早回しで処理されコントチックな仕草になってしまっているという曽根監督らしいぶっ飛んだ演出が炸裂して麻痺しそうになる。肝心のポルノ目当てで見に来たお客さんのことをまったく考えていないし。

しかし曽根中生監督の空間を超越した「天才」としか言い様のない演出術が即物的な山本晋也の世界観をより豊かにし、他愛のない内容の映画のグレードを上げて映画独自の快感を堪能させる。グダグダな話にも関わらず人物や物語を捌く演出は冴え渡り、最低限の描写のみで物語を観客に把握させるテクニック。そして脚本家が空想する世界の登場人物が、突如壁を越えて主人公たちの住む世界に現れるシーンの奇跡。こういうかぶいた演出を見るとさすが鈴木清順を敬愛しているだけあるなと思ってしまう。

コメディとしてもよく出来ていて、役者たちの軽妙な演技が曽根監督の軽やかなテンポと合わさって気楽にクスクスと笑いながら見れる。空想のシーンでお尻をたたきながらプレイする男女から、実際の世界では空想に興奮した脚本家が監督の尻を叩きまくっているシーンに移行する馬鹿馬鹿しさ。でもやはり変だけどね。

八代夏子のコミカルな演技、裏社会のリアルな雰囲気を醸し出す庄司三郎&たこ八郎コンビも見所。

ちなみに1970年代後半から80年代初期にかけてピンク映画で活躍した女優・日野繭子が庄司三郎が連れている女の子の一人として出演している(これがデビュー作、芸名を考えたのはこのとき一緒に仕事をした曽根監督と助監督の根岸吉太郎) 。脇役のはずなのに目力の強さのためか存在感がかなりあり、後年の活躍ぶりのきざしを感じさせる。ただし日野本人は契約などの問題で早々にロマンポルノを飛び出し、より低予算だが熱気のあるピンクの世界へ入り込んでいくことになる。

2021年11月25日追記 とある映画ファンから日野繭子のデビュー作はこの作品ではなく、前年のピンク映画『谷ナオミ 縛る！』(葉山英子名義)でデビューしていると教えられたのでここに書いておきます。

私にはありえない曽根中生2連続鑑賞。ポルノ映画つくるおっさんたちの温泉ロードムービー。益富さん好き好き。３人それぞれキャラ立ってて魅力的。劇中劇はヘリウム吸ったみたいに変な声で、いとしの鶴岡さんがいろんな女優とまぐわって大好き大好き。酔っ払った八城夏子さんかわいすぎる。日本語カタコトなたこ八郎。ハッピーライフハッピーセックス。いつも演出凝り凝りで苦手な曽根中なわりに楽しく観ちゃったのは山本晋也パワーかな。いい感じに肩の力が抜けて、とにかくゆるゆる、抵抗ない作品。