ひろるーく

リコリス・ピザのひろるーくのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.2
俳優であり高校生であるゲイリー(クーパー・ホフマン)と、彼が恋する10歳年上の女性アラナ(アラナ・ハイム)の、「(ずっと付き合わない)二人」の物語。

クーパー・ホフマンは、今は亡き名優フィリップ・シーモア・ホフマンの子息。そしてアラナ・ハイムは人気(日本でも)姉妹バンドHAIMのギター/ボーカル。
二人とも映画初出演。というか、俳優デビュー作らしい。
プロフィール的に話題性ある二人だが、見た目が極めてふつう。そこがこの映画においてはものすごくプラスに作用している。
この二人は、本当に初めての演技?と思えるほど、上手い。
天賦ってすごいな。

この映画は、元ネタ(影響を受けている)があるらしい。
エイミー・ヘッカーリング監督(知らないのですが)の「初体験リッジモンド・ハイ」という青春映画。舞台となった土地が同じだという。

本当は、この作品を観てからレビューしようかと思ったのだけど、ちょっと動画が見つからなかったので(Amazon Prime Videoにあった!)、とりあえず書き始めた。

そうそう、この「初体験リッジモンド・ハイ」の主役がショーン・ペン。
この「リコリス・ピザ」ではジャック・ホールデン(多分ウィリアム・ホールデンから)役で登場している。

出演者はほぼ、実在の人をモデルにしているという。
ゲイリー=「映画プロデューサー ゲイリー・コーツマン」
ジャック・ホールデン(ショーン・ペン)=「名優ウィリアム・ホールデン」
映画監督(トム・ウェイツ)=「名監督サム・ペキンパー」
なんだかわからない映画プロデューサージョン・ピーターズ本人役(ブラッドリー・クーパー)=「映画プロデューサー ジョン・ピーターズ」

このジョン・ピーターズは映画の中でもバーブラ・ストライサンド(映画「スター誕生」で有名)と交際していることになっていて、それは実際もそうだったらしい。そして、ブラッドリー・クーパーは、レディ・ガガ主演作「アリー・スター誕生」の相手役。

もうこんがらがるので、書くのをやめるが、あれとあれがあーでこーでと、考察好きにはたまらない内容なのだけど、1970年代の映画事情に詳しくないと、ちょっとわからないかもしれない。僕もだけど。

あと、レオナルド・ディカプリオのお父さんが出ていたり、選挙事務所に怪しい男が出入りしていたり(タクシー・ドライバー!)と、映画好きが、あれもこれもといいたくなるようなことが…、繰り返しになるのでやめます。

物語は、消して結ばれることがなさそうな、ゲイリーとアラナの不器用な恋愛を描いたものだが、ポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)監督ならではの無駄に意味もなく長いシーンを入れてきたり、時間と場所が一気に飛んだり、不条理ともいえる演出は本作でも冴えています。
これが好きなんですよね、僕は。

PTA監督の代表作(と僕は思っている)「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のラスト。映画だから許される合法的な(当たり前だけど)不条理な展開に、あっけに取れられるというか、もう麻薬的に気持ちがよくなるシーン。
「リコリス・ピザ」では、ゲイリーとアラナがとにかく走る。意味もなく、とはいわないけど、走ることに何か特別な意味があるのでは、と考えてしまうような、確信犯的な演出。ほんと気持ちがいいです。

彼氏はいる? Yes&No…。

面白い映画です。僕は大好きです。
ひろるーく

ひろるーく