great兄やん

マイスモールランドのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
5.0
【一言で言うと】
「招かれざる“住人“」

[あらすじ]
幼いころに家族と共に来日し、日本で育った17歳のクルド人・サーリャは、埼玉の高校に通っている。数年前に母を亡くし、父のマズルム、妹のアーリン、弟のロビンと暮らす彼女の夢は小学校の先生になること。サーリャは大学進学の資金を貯めるため、父に黙って始めたアルバイト先で、東京の高校に通う聡太と出会う...。

”住めば都“だなんて良く言ったものだがサーリャからしたら”住めば地獄“だし、日本という国が如何に難民に対して不寛容なのかというのがハッキリ分かった。
”客人“としてはもてなすが”住人“としてはもてなさないこの国の理不尽さ...昨今のウクライナ人の積極的受け入れといい、実際は”建前“ばかりなのでは…という事実に日本人として反吐が出そうになりましたね😡

とにかく終始やるせない。観ていて自分が何もできないという無力さに苛まれますし、何も悪い事をしてないのに何故このような仕打ちを受けなければならないのか…という悔しさというよりも、”怒り“の涙が込み上げてきた。

自身がクルド人という事すら伏せて、更には自身のアイデンティティ、それに”故郷”すら無いという現実にもただただ打ちのめされますし、そもそも観る前まではクルド人という民族があるという事自体知らなかったので、いやはや胸が詰まる思いでしたね😔

それに主演の嵐莉菜さんも初演技とは思えない程の真に迫る演技で素晴らしかったですし、サーリャに想いを寄せる聡太役の奥平大兼くんも相変わらず良い演技で魅せてくれる。
それから全体的な雰囲気やストーリーとしてもどこか是枝監督テイストな優しくて、そして真っ直ぐ突き刺さるようなメッセージ性があって、尚且つドキュメンタリーを観ているかのような生々しい手触りをも感じてしまう。

今作がデビュー作となる川和田恵真監督ですが、監督自身も日英のハーフとの事なのでより一層サーリャが直面する悩みに深い説得力が伝わってきましたね🤔

とにかく何故こうもクルド人は生きるために苦しまなければならないのか、日本はどうしてこうも難民に対して冷徹なのかというゾッとする現実に、改めて日本人として考えさせられる一本でした。

難民申請が不認定となってから次々と起こる負の連鎖には観ていてただ恐ろしい思いでしたし、自分がどれほど“自由”な環境下で暮らしているのかというのにも痛感させられました。

実際サーリャの父が入国管理局に収監されてからの生活はまさにクルド人版『誰も知らない』ですし、サーリャのような高校生というまだ“未熟”な存在にこんな“業”を背負わせる日本の難民申請制度の”責任“を感じましたね😫

ラストシーンにおける彼女の”眼差し“...日本人として、この映画を通じて難民申請に”変化“が訪れる事を願っております🙏...