人は人を殺すこともできれば、治療して病気や怪我を治すこともできる。人工的に受精させることもできるし、遺伝子操作である程度のコントロールもできるだろう。しかし、創造の神にはなれないので、何も無いところから人間を創ることはできない。人間の探求心は限りがなくて、宇宙の起源までにも手を伸ばそうとしている。しかし、やはり限界があって、地球を蝕むことはできても、人類が住める新しい惑星を創造することはできない。
プロメテウスは、火を与えることで寒さに苦しむ人々を救った。しかし、その火によって人類は武器を作り出し戦争に取りつかれることになる。それを知ったゼウスはプロメテウスを捕らえ、何万年もの間、拷問し続ける。オッペンハイマーにもその苦行が課せられた。冷戦に終わりはなく、核戦争の脅威は人類が滅ぶまで消えないだろう。自然界を創造できない人類は、自然界を破壊するような武器を手にしてはいけなかったのだ。神話にも出てこない解決策など、我々に思い付く筈はない。滅び去るのを待つだけだ。
この壊れかけた世界を元に戻す術は誰も知らない。全てをリセットするしかないのかもしれないが、神話で残されたのエルピスという希望だけだ。人生１００年時代らしいけど、それでは足りない。数千年、数万年先の世界が見たい。そこには、どんな平和な世界が広がっているのだろうか？ まだオッペンハイマーは苦行から逃れていなのだろうか？ もしかしたら、ただ荒野が広がっているだけかもしれない。まずは山崎貴監督の次回作に期待しよう。
