ノーラン監督作品は好きです。「インターステラー」なども好きですが、特に人間味に溢れていた「インセプション」が好きでした。本作も科学考証のクオリティの高さを保ちながらもあれのような人間味に溢れた作品を期待していました。
個人的にはその期待に応えてくれたかどうかは少し微妙なラインです。「テネット」でも思いましたが、最近のノーラン作品は難解にすることが主題になってしまっているように感じます。
キャラクターに関しては後半部分はかなり良かったです。その辺りではこのキャラクターが何でこのストーリーに関わるのかかなり理解しやすかったですし、その感情の変化もかなりわかりやすかったです。
特に撮影等を利用した抽象表現がずっと興味深く、主人公の人格形成は本作の中でそこまで説明されるわけではないのですが、それでもその見せ方で今このキャラクターはこう考えているのだと表現していたので、視聴者も自分で読み解いていくことが出来ました。非常に芸術性の高い視覚的表現が多かったです。
その一方で、前半部分は時系列もごちゃごちゃしている上に、その必要性もあまり感じなかったです。テネットは世界観がそう言った物なのでわかりますが、本作でそれをしなくても別に伝えることはできたんじゃないかという疑問がずっと付きまとっていました。
さらに、本作はキャラクターのストーリーに関わる動機もかなり薄く感じました。どうして原爆を作るという大仕事に付き合うことになるのか後半になってくるまでいまいち伝わってこなかったです。
映画に置いてキャラクターは全てです。キャラクターが好きになれていないとその中で起きていることにも興味を向けられませんが、本作はそれを忘れてしまっていたように感じます。その上に様々な要素が本作には出て来るので、どれが本作にとって重要な情報でどれがスルーしてもいい物なのかわからなかったです。
あと、シーン同士のつながりも悪かったように感じます。さっきまでやってたことと全然違うことをしているというシーンが度々あり、ちょっと何を目的としてやっているのかわからないことがちょいちょいありました。
他にも「ダンケルク」でも見られたような緊張感のある音楽表現が本作でも見られたので、それもすごく好きでした。映画の技術的側面は非常に優れていたように感じます。しかし、その一方で脚本はそんなに好きになれなかったです。
後半部分は4.0点くらいで前半部分は3.0点くらいでした。ノーランの映画すごくいい物多いので、結果としてはその中ではそんなに好きではない部類でした。