コンテナ店子

落下の解剖学のコンテナ店子のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.0
 パルムドールを撮った映画の中で見れた物はどれも好きです。「万引き家族」「パラサイト」「チタン」等少し癖はありますが年間トップクラスの傑作を連発していました。
 なので本作もかなりの期待を持って映画館へと行きました。率直な感想を言うと、悪くなかったですが、上記の作品と比べると少し弱かったです。とはいえすごく好きな人もいるとは思います。あくまで私の好みではなかっただけだなと言う感じです。

 良かったところからあげると、撮影が素晴らしかったです。キャラクターの捉え方が興味深いことが多く、それだけで彼らが感じている物であったり今の状況であったりを美しく表現していました。特に主要キャラクターの1人であるミロ・マシャド・グラネールの撮り方が本当に素晴らしかったです。演技については特に特別な物とは思いませんでしたが、それでもこの映画で一番好きだったのは彼のキャラクターでした。

 あとは少し変な評価にはなりますが、犬の演技がよかったです。本物の犬を使ってるのかcgなのかわからないですが、この映画の最終的なメッセージにも深くかかわっていると思いますし、犬が出てるシーンはそれが美しい抽象表現として有効活用されていて、無駄に出ていると感じるシーンは1つもありませんでした。

 とはいえ好きじゃなかったところももちろんあります。この映画はジャンルとしては法廷ドラマだと思いますが、そのリアリティを追求した結果、話の展開が無意味に遅かったように感じます。キャラクターのセリフ1つ1つがすごく間延びしているというか、説明臭いセリフが長々と続くことが多く、そのせいで必要以上に映画の尺が長く感じられて少し疲れてしまいました。
 法廷以外のシーンは上でも言った通り撮影がすごく美しかった上に、キャラクターの感情が深く描かれていて、どのシーンを取っても説明なくキャラクターが会話しているというシーンが多く、人によって受け取り方がだいぶ変わりそうな素晴らしい要素が多かったです。

 法廷でのキャラクターのセリフをどう感じるかによってこの映画の評価は大きく割れてしまいそうです。個人的にはその部分があんまりハマらずあんまり満足できなかったですが、もちろん好きな人がいるのも納得出来ます。
 あんまりキャラクターの内面に深く踏み込まずに裁判の結果の予想ばかりしていて少し退屈に感じました。もっとキャラクターの心情に踏み込んで、好きになれるようにして、この裁判で争っていることを応援できるようにして欲しかったです。
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