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イニシェリン島の精霊のHKのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
公開年度の私のベストだった『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督作。
予告では『聖なる鹿殺し』と同じくコリン・ファレルとバリー・コーガンのツーショットもあり、観る前から一筋縄ではいかない映画だろうと思っていたらやっぱり。
観ている間も観終わってからも、いろいろと思い当たるフシがあり、考えさせられました。

これ、主役がオッサン二人なんでカモフラージュされてますが、離婚の顛末、もとい結婚の顛末ですね。
それもよくありがちな。
もちろん、夫婦の離婚だけでなく、友人と縁を切る理由、恋人と別れる理由、戦争(内戦)する理由、どれも理由なんてこんなものかもしれません。
でも、私にはまさにドロ沼離婚劇に見えました(経験者は語る?)

自称イイヤツですが相手の気持ちが読めない夫がファレル、今の生活が続くのはイヤと急に心変わりして相手の顔も見たくなくなった妻がブレンダン・グリーソン。
どちらも自分が被害者だと思っています。
また、嫌いなら一貫してその態度を続ければ、相手も諦めがつくものを、たまに優しくしたりするから、これが余計にたちが悪いんですね。
もはや修復の余地は無いのに。

そして、グリーソンの指は・・・子供たち。
一種の人質効果もある離婚の最大の犠牲者、指はその象徴のようにも思えます。
相手を憎んでも相手の犬やロバは気遣うところも似た感じ。

舞台はアイルランドの孤島。
監督もファレルもグリーソンも、こういう役が十八番のコーガンも、一番まともに見えるファレルの妹役ケリー・コーガンも全員がアイルランド出身です。全員が印象深い名演。
邦題の訳は妖精ですが、バンシーとはアイルランド・スコットランド伝承の泣き叫んで死を予告するという女性の妖怪のこと。

深読みが苦手で見落としも勘違いも多い私ですから、理解不足の点も多々あると思います。
ロバの違和感のある死因は何かの象徴?
絶壁から手を振る主人公の横の人影は?などなど。
それでも、ある意味ホラーで、コメディで、寓話性もある見応えある人間ドラマでした。

私もこの二人同様、動物としか仲良くやっていけないのかも。
やっぱりロバは無理だけど、犬とは暮らしたいな・・・
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