へたれ

イニシェリン島の精霊のへたれのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.9
良かったとこ1 コリン・ファレルの演技
「話がつまらない退屈な人」という人物をこれ以上ないくらい的確に演じている前半。そこから「良い人」であることが剥がれていく後半。彼の俳優人生の中から、昔のカッコいい役と、最近の弱々しい役をうまくミックスして、キャリア集大成のような演技になっていた。特に眉間の力の入り方と、セリフがない間の演技が良かった。

良かったとこ2 隙がない脚本
マーティン・マクドナーの脚本だから言うまでもないけど、脚本にまったく隙がない。
一方的な理由から始まった友情の亀裂が、エスカレートして想定外の酷い結末に向かっていくという分かりやすいテーマ。賢い妹や頭の弱い弟分など、この手のストーリーに出るべき「善良な人」がちゃんと配置されている。時間配分がきっちりした王道の三幕構成。主人公たちのケンカと本土で起きている内戦を対称関係に置くという構図も分かりやすい。
そんなウェルメイドな枠組みだけど、マクドナーらしい居心地悪いブラックコメディは健在。60を過ぎたコルムが突然「中年の危機」に目覚めるのがまずアホっぽいし、そのアホらしさに見合わないレベルの暴力に発展するし、周囲にいる人たちの狭いコミュニティならではの陰湿さもあるし、とにかく隙がない。

ダメだったとこ 安っぽい小道具
劇中でかなり重要な役割を占める小道具が、作り物っぽくなっていて舞台劇の域を出ていなかった。具体的には指と膝の上で横たわるロバ。
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