創

やがて海へと届くの創のネタバレレビュー・内容・結末

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

あなたに何が分かるの?という問いはそのまま、自分は何を分かっているのか?あるいは分かったつもりになっていたのか?という自問になる。

残された人に必要なのは真実でも事実でもなく、記憶なのではないかと思う。
どんな人だったあんな事したこんな事した楽しかった嬉しかった。
新しい記憶は生まれないからこそ、過去の記憶を大切に抱えてその記憶とともに生きていくしかない。
これは相手の生死に関わらず、繋がりが途絶えてしまった全ての関係に共通することだと思って私は生きている。

それには時間が必要で人によって必要な時間は異なる。
母や遠野くんはただ真奈より早かっただけで国木田さんはおそらく既に誰かを喪失していただけの事なのだと思う。
というか、家まで行くぐらいだからそれも初めてでは無かったのかもしれないし、そのまま東北まで運転してくれるなんて素敵な先輩過ぎるだろ。

おそらくは最後には真奈もそういう、分かりたい思いではなく忘れない思いに切り替わったのだと思うのだけど、いかんせんそこまでの過程がキツかった。
たぶん共感性羞恥のようなもので、なかなか切り替えられなかった過去の自分を見ているようで良い映画だとは思うけど、ただただ居心地悪かった。

記憶を大切にすることだけが正解ではないし、真実や事実を追い求めるのが不正解でもない。

宗教や慣習によって違うのだろうけど、死者と向き合う形はいくつもあって良いのだと思うけど、
あなたに何が分かるの?と聞いてしまう主人公に感情移入するのは難しかったし、
我々も真奈の知らないすみれは知るべきではなかったのではないかと思った。

岸井ゆきのが持つ少女性のようなものがとてもハマっていたと思うし、浜辺美波の透明度高すぎて透明人間になりそうな感じも良かった。

でもやっぱり、共感し難くて入り難かった上に、知らなくても良いことまで知らされると余韻も残らず、なんだかボヤけた印象の残る映画だった。

タイミング悪かったのかもしれない。
今度は春じゃない時に観よう。
創