磔刑

デューン 砂の惑星PART2の磔刑のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.0
オススメ度☆☆☆
劇場映えする映像なので是非映画館で観たい一作。
予習は前作のみなのでまだ入りやすいです。
ただ世界観が独特だしエンタメと言うにはオフビートで硬派なSF感なので、前作で合わなければ今作もダメかもしれない。でも前作よりは派手でスケール感もあります。
<以下ネタバレあり>












予想してたより良かったです。
評判通りの圧倒的映像表現でこれぞ映画館で観てこそ!!と思わず唸る映像作品です。

個人的にはスティルガー演じるハビエル・バルデムとフェイド=ラウサのオースティン・バトラーの2人の好演が特に満足しました。
ハビエルはポール(ティモシー・シャラメ)が砂漠の民の生活に順応するための橋渡し役、それに観客が感情移入させる役割として非常に上手く機能していました。
オースティンは風貌的に視線でしか演技力を活かせない難しい役割だったが、見事目だけでカリスマ性を発揮していた。活躍こそ少ないが主人公のライバル役として文句なしの存在感があった。

ストーリーは複雑風だが途中で「これ『マトリックス』やん」と思った。
預言者を狂信するスティルガーはモーフィアスで、主人公の死を間接キスで救うチャニ(ゼンデイヤ)はトリニティ。救世主のポールは言わずもがなネオ。
そう考えると端々の細かい設定やキャラの交通渋滞がゴチャついてるところを抜きにすれば分かりやすい王道展開である。

個人的には満足なのは確かだが、ドラマ性の低さというか…長い割に感情を動かされる場面がないのがね…。それのせいでボーッと画面を眺めることが割とあった。
宿敵のハルコネン(ステラン・スカルスガルド)を討つところなんかアッサリしてるし。ガーニイ(ジョシュ・ブローリン)の生存展開もサラッとしてるし。(というかどういう経緯で離脱したか覚えてない…モモアと混同してた)
それに最後の大作戦も危なげなく成功してて、ハラハラすらなく肩透かし。
なので映像の満足度に反して人間ドラマがドラマティックではないので総合的な映画としての完成度には偏りを感じる。
イルーラン(フローレンス・ピュー)が年表?を記してたようにあくまで宇宙史?の革命劇の全体像を俯瞰で淡々と映すのがメインで、個人の悲喜劇は二の次三の次といった淡白な印象を受けた。
映画的な満足度はあるとはいえ、どうしても単調に感じる場面はテレビドラマ的だなぁと要所要所で感じる。

あと前作っとホントに三幕構成の一幕目だったんだなと今作を観てつくづく感じた。
前作見た時は何の話も進展してなくね?と思ったけど、いやホント主人公の動機作りと設定の説明だけで2時間半使うの贅沢過ぎてヤバい。
かと思ったら今作は打ち切り少年漫画のラストみたいに「俺たちの戦いは続く!!」展開。しかも更に強い敵(?)までいるらしく、話を収束するどころか風呂敷広げて終わった…。率直に砂の民が宇宙に出て何ができるんだと思った。トレマーズ使えないじゃん…。

観てて感情移入できるキャラが全然いないのがドラマに盛り上がりを感じない要素てはある。
ポールは相変わらず感情を読み取りにくく、大義と復讐のために信仰心を利用する姿にはチャニと同様ドン引き。
ガーニイとスティルガーもポールに狂信的過ぎ。レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)は絵に描いたような宗教狂いの毒親。そうなると相対的にチャニが一番マシなんだけど、個人の恋愛感情を天秤に掛けてる時点でクソ女の印象は完全には沼払拭できん…。原作だと妾になることを受け入れるらしいので、ラストのブチギレトレマーズライドは現代的なアレンジらしいけど、遠い宇宙人の考えることなんで地球人に理解できなくても仕方ないね。

フェイド=ラウサは良かったんだけど、敵役の描き方がありがち過ぎてね。部下や手下に対する暴行で凶暴性を表現するのって月並み過ぎません?作品全体の映像表現がいいだけに敵の性格は親の顔より見た感じがしたね。まぁ、ハルコネン一家全員部下に暴行働いてて似た者同士を端的に表現てきてるとは思うが…。
あと前作の宿敵のラッバーン(デイヴ・バウティスタ)が今作で格速攻落ちするのもどうかね。ハルコネン男爵もシャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)にヘコヘコしてて前回養ったキャラの魅力が相対的に目減りする展開の多さはちょっとガッカリ。『幽☆遊☆白書』で戸愚呂がB級妖怪って突然言い出すアレを連発してる感じ。

前作全然好きじゃないので復習しなかったので人名や固有名詞は文脈から理解した。というかあの情報量は観客に容赦なさ過ぎでしょ。
そもそも香料が何か覚えてない。
諸悪の根源ら教母ぽく見えるんだけど、何が目的か分からん。前作で教母の説明パートあった気がするけど覚えてないです🤪
もうね観てる方の記憶力、暗記能力が試される怪作なのは間違いない。でも表層上の映像に身を浸すだけでも十分価値があるのは間違いないです。

全米では超ヒット飛ばしてるブロックバスタームービーですが、アメコミ映画のように単純ではなく観てる側の教養や映画への素養が試される難易度高めの作品なのは間違いない。派手な要素、売れっ子のキャストを大量起用した人目を引く要素はあれど、このような作品がヒットするアメリカはまだ映画がエンタメの第一線なのだと感じた。
それに比べて日本では『変な家』の方がヒットしてて、本格的に文化としての映画は死んでいるんだなとつくづく感じました。
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