せいけさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

せいけ

せいけ

映画(1414)
ドラマ(1)
アニメ(0)

アンダーカレント(2023年製作の映画)

4.5

夫が失踪した銭湯の店主の物語が深く水の底に沈んでいるかのような静けさと危うさで展開されていく
淡々としているが、はち切れんばかりのわだかまりを抱えていそうな陰影ある人物を真木よう子が演じていてこれがハ
>>続きを読む

ほつれる(2023年製作の映画)

5.0

不倫相手にまさかの出来事が訪れた倦怠期夫婦の話
腹に据えかねた何かがあるが過剰なほどに理性的に振る舞う人物たち
むしろその理性こそが事態をじわじわ取り返しのつかない方向に進めてしまった
お腹が空いたけ
>>続きを読む

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

3.5

普通に面白い90分の日本映画を久しぶりに観れたのでその点では満足
やはり池松壮亮の存在感あってこその映画
タイトルの出し方もカッコよくて銀座の夜の街の雰囲気が艶やかで引き込まれてややフィクショナルな世
>>続きを読む

二十代の夏(2016年製作の映画)

4.5

エリック・ロメールのバカンス映画の正統オマージュを日本でやってみたという感じ
ただあの感じを日本人の気質のままやってしまうのはあまり現実的ではないということなのかひとつレイヤーのかかった語り口はなるほ
>>続きを読む

按摩と女(1938年製作の映画)

4.5

勘が鋭い盲目の按摩と東京から逃げてきた謎の女の人情物語
抑制されたカメラでほっこりした温泉街の空気を映し出すけれども、底に流れるドロっとした感触はまさしく高峰三枝子の存在感ゆえ
決定的なことは何も起こ
>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

4.3

予習なしで鑑賞したけど、1作の中で神話性と血生臭さが両立されていることに驚き
ボンドでもない、イーサンでもない世界観
ひたすらアクションのつるべ打ちでボロボロになりながら闘うジョンウィックを表面的なク
>>続きを読む

君と別れて(1933年製作の映画)

4.7

現代にも通ずるようなヤングケアラー的な家庭環境を成瀬らしいやるせないメロドラマで描いたサイレント映画
思春期を迎えた息子に対する母親の葛藤、
双方を気にかける若い女性、息子と女性の恋模様と緩やかに視点
>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

4.0

この手の題材に刺さり切らないときに自分の良くない意味での男性性を痛感
生後15ヶ月に子供を殺めてしまった女性の裁判を異常なリアリティで迫る
定点的に置かれたカメラとフランス語によってどうしても眠気の誘
>>続きを読む

ションベン・ライダー(1983年製作の映画)

4.8

そりゃみんな相米慎二にやられるわけだわ
話の筋はめちゃくちゃでぶっ飛んでいるけど、もう説明のつかないパワーがそこらじゅうに迸っている
撮影とアクションのアイディアでどんどん展開していく語り口、意味がわ
>>続きを読む

夜ごとの夢(1933年製作の映画)

4.5

初めてのサイレント成瀬
初期作ながらエッセンスがすでにいくつか詰まっている
貧困に喘ぐ市井の人々、女性の生き方
確かなショットのセンスとリズムのいい編集はこの頃からある程度確立されている
後期では見受
>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

5.0

電車とビデオカメラ
いかにも映画と相性のよいモチーフから織りなすロードムービー
電車旅行で粗暴な男と相席してからどうなるかと思いきやとても愛おしい作品でした
狭い車内を出たり入ったり、寄り道と一期一会
>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

5.0

スラップスティックコメディ的なバタバタ感で目まぐるしく人物関係が右往左往していきながらもどこか不穏さが漂う
急成長した台湾と同様にどこか身の丈に合わない役割を任された若者たちのむき出しの行動に滑稽だけ
>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.5

ウェス・アンダーソン印と言うべき確立された世界観
締まった構図とちょっと戯画化されたキャラクターとシュールな間合い
やっぱりおしゃれでかわいい
ただ個人的にはそこまでハマれず
劇中劇というレイヤーや喪
>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

3.0

加害者側の視点や都合の悪い事実を隠しがちな日本(日本に限った話ではないかもしれないけど)に一石投じるという意味で意義ある作品
100年前の事件でもスケールの違いあれど、コロナ蔓延当初のことを思うと遥か
>>続きを読む

捜索者(1956年製作の映画)

4.5

圧倒的な画の力
ショットひとつでその場に流れる空気感や状況、関係性が浮かんでくる
有名なあのショットを筆頭に奥行きを生かした撮影がとにかく美しい

イノセンツ(2021年製作の映画)

4.0

エッジがたった映像表現と抑制が効いた演出、団地を印象的に扱ったロケーションの妙などなど映像として見どころがとても多かった
個人的には子供の無垢さゆえの行動のエスカレート、コントロールのできなさという題
>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

5.0

ホン・サンスは明らかに映画作家として円熟期に到達しているとも言えそうだけど、ただ個人的な映画を気軽に撮っているようにも見える
それでも会話の撮り方は洗練の極致に達しているとしか言えないレベル
映画を見
>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

4.3

鮮烈なビジュアルとミアゴスの熱演で元は取れてる
時代設定は100年以上前だけで、むしろ今の話になっているという印象
極彩色も展開するにつれどんどん皮肉に映ってくる
思いは赤裸々であっても感傷的になりす
>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

5.0

2人の少年の親密な関係性とその悲劇を描いた映画
レオの1人称視点が多いこともありかなり感情移入させられた
曖昧なもの、というよりわざわざ決定させる必要がなかったものもはっきりさせたがる周囲の好奇心が2
>>続きを読む

マンハッタン(1979年製作の映画)

4.3

マンハッタンという街で描かれるちっぽけな人間たちの恋愛模様
理屈っぽく捻くれた人たちをおしゃれな映像で見せていく
正しさだけで紡がれない人間関係はフィクションで見るとやはり面白い
この情けなさ、みっと
>>続きを読む

クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡(1997年製作の映画)

4.5

クレヨンしんちゃん映画の中でも意外と渋い魅力も持った作品だと感じた
ポスターでも示されるようにアメリカンニューシネマを思わせる演出が頻出してきて、安直なカタルシスに回収しない、これはコメディだという意
>>続きを読む

書かれた顔 4Kレストア版(1995年製作の映画)

5.0

一言で言ってしまえばとても美しい映画でした
ドキュメンタリーという体裁をとっているけど、確実に演出も入っているしフィクションとドキュメンタリーの境界を彷徨っているような感覚
どんな映画もドキュメンタリ
>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.7

激動の時代を生き抜きながらも運命に翻弄される京劇の演者2人とその妻
愛憎乱れる三角関係というミニマルな話と戦争や革命など歴史的な大きな話が掛け合わさり要素は多くともしっかり密度が濃い物語に
とにかく映
>>続きを読む

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)

5.0

ほとんどのシーン、特に終盤以降は何を見せられているんだ?の連続なのだがどうしても惹きつけられてしまう
愛を信じ渇望するサラは離婚により心のバランスが乱れてしまうが決して生きることを諦めない
良いも悪い
>>続きを読む

アシスタント(2019年製作の映画)

5.0

限定された空間での非常に抑制された語り口
声にできないもどかしさが環境音などで代弁するかのごとく訴えかけてくる
いやらしい社会の歯車にたらし込んでくるような演出がとても見事で直接的ではないからこそ効い
>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

5.0

作家としてホップステップジャンプの具合が凄まじすぎるグレタ・ガーウィグ
ポップでキュートなバービーランドの世界観と現実世界の対比からなる鋭い批評性に唸りながら何度も大笑いさせられた
過剰なブラックユー
>>続きを読む

マイ・エレメント(2023年製作の映画)

4.5

火と水による多人種間のシンプルな王道ラブストーリー
若い2人の惚れた腫れたや夢についての話に感動させられて、自分にもまだ瑞々しさが残っていてひと安心
正直に言えば話の展開自体は特段意外性もなくテーマ性
>>続きを読む

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜(2023年製作の映画)

4.3

今回もしっかり笑って泣ける安定のクレしん映画
不安要素であった3DCGはアクションシーンでしっかり活きていて特撮風なケレン味あるカメラワークなどこれまでと違った面白さを十分感じられた
ストレートでやや
>>続きを読む

青春神話(1992年製作の映画)

4.0

台湾という街がただ画面に現れるだけで勝手にエモーショナルになる不思議
この時代に台湾の映画作家はそれをクールな撮影で捉えている
それだけで2時間弱引きつけられる
ストーリーらしいストーリーはなくモラト
>>続きを読む

ラルジャン(1983年製作の映画)

5.0

フレーム内で提示される情報の整理が洗練され尽くしている
大仰な演出は一切取り除き、見せるものと見せないものの正確な取捨選択で映画の緊張感を極度に高める
ストーリーの説明は少ないが、一言で言ってしまえば
>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.0

頑固なお爺さんが作ったわからなければ結構という雰囲気と童心に帰って生き生きとした雰囲気両方感じる不思議な映画
とにかく所作の描写が洗練され尽くしている
そして珍妙で印象に残るキャラ造形
スクリーンでジ
>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

4.5

ケレン味溢れまくるカメラワークとまさしく命懸けのアクション最高に楽しい映画
正直関係性が複雑で説明セリフも長い割によくわからない、アクションと会話が分離されすぎている、というか余りにもアクションを見せ
>>続きを読む

遊び(1971年製作の映画)

4.3

倫理ではなく欲望に突き動かされる未熟な男女のメロドラマ
回想の入れ方やなんでそうなる的な行動の飛躍などスマートではないけど、ある種の過剰さに引き込まれる
ちょっと古風が過ぎる時代感や価値観だけれども、
>>続きを読む

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

5.0

話すこと、記録することが未来の世代の繋がるという視座の高さに身が引き締まる思いでずっと鑑賞した
結果重視な昨今のエンターテイメントの風潮へのアンチテーゼも少し感じつつ
説明は削ぎ落とし、情報は豊富とい
>>続きを読む

間奏曲(1957年製作の映画)

4.3

情念と倫理の間で揺れるメロドラマ
豪勢な音楽と神聖な美術など映画としてのルックも目を惹かれるものがあり、人物の心情を正確に映す照明使いも素晴らしい
アメリカを離れドイツにやってきたヘンリーの気品高くも
>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

4.2

動きの少ない画面と肩の力が抜けた自然な会話、映像では明示されないものが多く終盤に出てくる居酒屋の如くまさしく小説のような映画
他者が知り得ない人間の内面は言葉を持って飲み示される
ホン・サンスには珍し
>>続きを読む