せいけさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

せいけ

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エル・スール(1982年製作の映画)

5.0

暗闇と光の導きによって語られる、まさしく映画らしい映画の感動を得られた
父と娘の関係性の神秘を巡る物語としてもシンプルに十分過ぎるほど面白い
寡黙でどこか浮世離れした父親の奥底に流れる情動のようなもの
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ツィゴイネルワイゼン 4K デジタル完全修復版(1980年製作の映画)

4.5

どこを切り取っても狂気に満ちているけど美しい
陽炎座より、物語として成立させようという意思を多少なりとも感じるので、観やすいし客観的にいくとこれが最高傑作というのは納得
しかし夢か現かなんとも言い難い
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エデンより彼方に(2002年製作の映画)

4.8

ダグラス・サークの諸作品を形式はそのままにアップデートを目指した作品
影響元の作品の偉大さあってストーリー運びが面白いのだけど、人種差別や同性愛の要素が入る
それにより批評性が高まり、関係性の障壁とい
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闇を横切れ(1959年製作の映画)

4.8

息つく間もなく面白い
地方都市と悪の権力にまつわる話
オープニングと人物設定からしてどこに行き着く話か大体分かる話だけど、映画の面白さは結果ではなく、過程だと声高に叫ばんばかりに、ひたすら前に前に話が
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太陽の塔(2018年製作の映画)

4.3

聡明な学者の方々の知的な分析に頭がついていけねえぞと思いながら、太陽の塔、そして岡本太郎の時代を越えゆく生命力を感じた
無限に広がるルーツにひたすら感心させられる
インタビューの受け手も次第に語りが熱
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女と犬(1991年製作の映画)

3.5

おしゃれな雰囲気だしオーラある女優さんだけど、会話がほんとどうでもよくて笑った
究極の2択を続けるだけ、これを長編でやり切ったバージョンも一周回って見てみたい

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

三宅唱の映画は毎度五感が研ぎ澄まされる
俳優の声と身体、暗闇に差し込む光、流れる時間、映画の要素すべてが詰まっていると言っていいと思う
自分ではどうしようもない困難を抱えて他者を拒絶しながらも他者に支
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許されざる者(1992年製作の映画)

4.8

洗練され尽くしたショットと役者の存在感
まさしくこれぞ映画という様式美
ただ物語についてはどこに行き着いたとしてもカタルシスを感じようがない堂々巡り
西部劇の根底から否定するかのような殺人の悍ましさを
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コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

3.8

生きづらさを感じる少女のひと夏の思い出
新たな生活を予感させる叔母が車の扉を開くショットがいい、櫛をといていくシークエンスがいい、身体を洗ってあげるリズムがいい
ただ綺麗な映像なのに思ったより物語の強
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陽炎座(1981年製作の映画)

4.5

なんだこれ、めちゃくちゃイカれてる
セオリーガン無視の位置関係と編集、意味不明なアクションと夢を見ているかのような展開に否応なく映画の世界観へ引きづり込まれる、という意外の感想が浮かばないくらいぶっ飛
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.5

悪くはないけど、個人的にはハマらずというのが正直な感想
個人的に結構カラオケ大好き人間なので、なるほどと思う部分とちょっとその描写甘くない?という部分と
普通のカラオケルームあんな防音設備いいかな?と
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神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版(1950年製作の映画)

4.3

初ロッセリーニ
正気を疑わずにはいられない強烈な文化のギャップを感じる
のほほんとした牧歌的な暮らしのユーモアと唐突に立ち上がる禍々しい狂気に魅せられた
自分の不勉強のせいでしかないけど、宗教文化の皮
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ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.0

ポスターに映る2人の青春スクリューボールコメディみたいなものを予想していたらかなり思っていたものと違った。
意外と終盤までテーマの核心に至らないし、この2人は意外と一緒にいないし、そもそも本来ならお互
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ニモーナ(2023年製作の映画)

4.7

定義不能なニモーナの大暴れがとにかく愉快
話の展開としては王道だけど、細かい設定が現代的でステレオタイプに陥らない意外性と芯の通ったドラマの強度に感動する
彼女でもモンスターでもなく、ただニモーナ
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僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

4.3

初監督作にしてジェシー・アイゼンバーグらしさを感じさせる時点で勝ち
改めて自分なりの指針によって作品選びをしていた俳優だったんだと気付きを得る機会にもなるという珍しい映画体験だったのかも
映画の内容は
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ショーイング・アップ(2022年製作の映画)

5.0

狂人こそが芸術の圧倒的境地まで辿り着けるという空想を打ち砕くかのように、インディペンデントな芸術家の日常を淡々と描く
ケリー・ライカートにしては珍しくその場に留まり地道な作業をこなす人物が主人公だが、
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.7

特別凝った演出でもストーリーでもないけど、扱う題材にとって適切なタッチと上映時間を心得ているからカウリスマキは信頼できる
シンプルすぎるくらいシンプルなメロドラマだけど、その背景にある不条理や自業自得
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VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

4.3

認証の妻と心臓病の夫を二分割の画面で同時進行に描くという画期的な手法を用いた映画
その画期性とは裏腹に起こる出来事を愚直なまでに淡々と描く
普通だったらカットバックで上手いこと映画のリズムで省略すると
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.8

どこを切り取っても美しい世界観にまずは圧倒される
フィクションであることを全く隠さない美術やカメラワーク、クラシカルでありながら遊びが効いている衣装と不思議な音楽使いによって、140分ずっと目と耳が喜
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.7

はっきり言って当時の時代背景やスペイン内戦についてのメタファーという読み解きは全くできておりません
ただ、そういう雑学的なところを通らざるとも伝わってくる得体の知れない不思議な何かがある
美しいショッ
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それから(2017年製作の映画)

5.0

ホン・サンスでいちばんストレートな面白さがある作品だと感じた
不倫にまつわる、勘違い、早とちり、嘘、誤魔化しが渦巻くドタバタ会話劇
いつにも増して美しいモノクロ撮影が出来事の滑稽さをより際立たせる
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夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)

4.3

キム・ミニの魅力が炸裂するキム・ミニ劇場
スタイリングもロケーションもよい
ホン・サンスにしては普通に綺麗な映像をバックにしながらも、やはりいつものような取り留めのない会話劇からの気まずい爆発を描いて
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市子(2023年製作の映画)

3.3

杉咲花の演技に尽きる
この人を見ているだけで物語に没入するパワーは確かにある
キレのいい編集とダイナミックな撮影は映画を観ている実感を与えられた
ただ、作り手の作為性が全面に出過ぎているのが、好みでは
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ジャンヌ・ダルク裁判(1962年製作の映画)

4.0

裁かるるジャンヌと同じ題材、展開だけどドライヤーとブレッソンの演出の違いが際立って面白い。悲劇性を強調するドライヤーと淡々とフラットに描くブレッソン。
感情もカメラもフラットにすることで歪さ異常さが浮
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ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)

4.3

美しい映像と美味しそうな料理にひたすら魅せられる
冒頭の料理シーンはそれにしたってすごい、静かなトーンではあるが、まるでケイパーものかのごとく、滑らかにカメラが動きチームの作業で料理が完成していく
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笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

3.8

岡山天音の演技に惹き込まれる
というより全体的な芝居のクオリティコントロールは抜群に良くて業界にいるリアリティを体感させられた
お笑いに魅せられた人間がお笑いにの世界の社会性を目の当たりにしながら生き
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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ブラック企業のキツく繰り返しのような毎日をそのままタイムループとしてやってみるアイディアの面白さ
文字通り繰り返しの人生を打破するためのドラマは意外な熱さもあり、軽めのテイストもあって楽しく見ることが
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

淡々と日々を過ごす平山を追っていくドキュメンタリーのような作品で、さして劇的な出来事は起こらないのに見入ってしまう
役所広司の存在感がただただ凄い、セリフも少ないのに出ずっぱりとなると所作と表情が重要
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マリの話(2023年製作の映画)

4.7

ああ、こうなるだろうな、ということはこういうことかなどと予想の範疇に収まらない映画。あの映画作家を想起せざるを得ない、時系列・虚実が入り組んだような構成に見入ってしまう(果たしてそれも虚実と言えるのか>>続きを読む

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(2023年製作の映画)

4.5

圧巻のアニメーション表現とポップカルチャーネタのつるべ打ちと愛くるしくてたまらないキャラクターたちに魅せられる
原題にティーンネージャーとある通り、10代後半のバカバカしくも微笑ましいタートルズたちの
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

5.0

徹底してカメラが動かず、普通の主婦の家事をひたすら見せられているだけなのに惹きつけられて仕方ない
まさしく反復とズレによるシンプルでスリリングな作劇
日常の繰り返しが映画になり得ることを改めて気付かさ
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オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

独特なリズムで撮られた映画
これがシャンタル・アケルマンか
冒頭から最早変わっている、これ普通の映画なら間違いなくエンディングになる間合いでショットとショットが紡がれる
我が意を得たりというわけではな
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マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

5.0

正面から風格ある名作を作りにいっている心意気に惹かれてしまう
クラシカルな雰囲気と題材もあって新しさはそこまで感じ取れなかったけど、ブラッドリー・クーパーとキャリー・マリガンの演技、大轟音で鳴り響くバ
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アメリ デジタルリマスター版(2001年製作の映画)

5.0

おしゃれな色彩使い、手数の多い演出と意外とバカバカしいシーンもありつつで全く飽きることなく観ることができた
なんてそんなことはどうでもいいくらい、ここまで人間をしっかり描いている作品だったことに今さら
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