せいけさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

せいけ

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戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

4.7

なんだこれと驚くしかない
かなり歪なバランスで作られた戦争映画
なぜこんなところでこんな編集を?なぜここでこんな音楽が?といちいち戸惑わされる
その歪こそがテーマと繋がるある意味ではウェルメイドとも言
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

5.0

大胆に飛躍する演出に驚かされながら、面食らっているとどんどんベネデッタという存在がわからなくなってくる
このわからなさこそがやはり映画の奥行きを深める
安易な感情移入を拒みながら、映画は危うさと迫力を
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Winny(2023年製作の映画)

4.5

手堅く作られた実録映画
日本がIT後進国と呼ばれるに至った事件を描く
セリフのリズムが心地よく、関西が舞台ということもあっていい塩梅のユーモアもあり小難しい題材ながら間口が開かれているのに好感が持てる
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エルヴィス(2022年製作の映画)

4.7

独特なバランスの伝記映画
エルヴィスとパーカーの関係性をメインにパーカーの視点から描かれる
パーカー役をトム・ハンクスが絶妙な塩梅で演じているので擬似的な親子関係に暴力性も切ない温かみも微かに感じられ
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小さき麦の花(2022年製作の映画)

4.7

静かな調子に見えて画面の密度が素晴らしい
奥行きを生かした構図と人物の繊細な演技が折り重なることでワンシーンの情報量が豊富であるにも関わらず端的に示される
特に手前と奥で起きている出来事のギャップを生
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.5

スピルバーグが描く自伝的映画
まさしく最近の潮流である映画についての映画
カメラが映し出す暴力性から目を背けない
怖がりだからこそ恐怖シーンを演出できるとスピルバーグの実作品との照らし合わせなどなど作
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

5.0

戦争の歯車として前線で戦う若者たち
粗雑な戦略とシステムの中でまざまざと冷淡に人が死んでいく過程が描かれる
美しい撮影が残酷さに拍車をかけるかのよう
視界も明るくないまま、ただ闇雲に前線を駆ける姿はま
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

カオティックな映像表現が最大の見どころ
同時に様々な人生が存在しているといういわゆるマルチバースを表現するには映像はうってつけ
1本の映画で色んなジャンルの映画を堪能した気になれて楽しいし全くの他者の
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オーファンズ・ブルース(2018年製作の映画)

4.7

これが卒業制作とは才能の恐ろしさを感じる
夏が終わらなくなったような異国のような世界観で幼馴染を探しに行くというミニマルな冒険が展開される
とにかく映像から漂ってくる空気感がいい
臭い、湿度画面を通し
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ちひろさん(2023年製作の映画)

4.5

大きな展開は少なく、今泉作品の中で最も抑制されたトーンながらすっと見入ってしまう空気感がある
規範に囚われず自分らしく地に足つけて生きていくちひろが魅力的
たくましさを湛えながら、寂しさといか言語化で
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.3

原作未読であってもダイジェスト感は伝わってくる作りながら、ジャズという音楽について才能について本質をついた万人に開かれつつ深みもある作品
若い子たちが夢中で頑張ったら幸運にもチャンスが回ってきたってだ
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イノセント・ガーデン(2013年製作の映画)

4.0

映画において俳優は顔、演出は程々の抑制が肝だと実感させられるような作品
ストーリーの掴みとしてはややインパクトに欠けどこに向かっているかわからない節があるけど、おおよそのことの真相が判明してからのラス
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別れる決心(2022年製作の映画)

5.0

古典的なラブロマンスでありながら、演出や編集、カメラワークと音楽の使い方でここまで映画としての鮮度が上がるのかと驚いた
過去に散々映画は作られてきて現代で映画を作るには高尚な題材や撚りに捻った物語など
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オリ・マキの人生で最も幸せな日(2016年製作の映画)

4.3

フィルムの手持ちカメラで世界チャンピオンに挑戦するオリマキに追っていく
ボクシング映画とは思えないほどカタルシスを避けていく作劇で唯一無二の佇まい
減量も上手くいかず、練習にも気が乗らない
恋をしてし
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バビロン(2021年製作の映画)

5.0

昔は良かった的なハリウッド史を描きながらもやはりデイミアン・チャゼル映画に仕上がっている
張り裂けそうな密度の映像とテンポよく切り替わっていく編集で見せていくリズム感はさすが天才的なレベル
夢を追う人
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対峙(2021年製作の映画)

4.5

ソリッドなシチュエーションによる会話の密度が凄まじい
単に加害者家族対被害者家族という構図だけに陥らず会話の端々やちょっとした目線のやり取りで事件の背景が浮かび上がり、当人たちの感情がどんどん発露され
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エゴイスト(2023年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

恋愛映画あるいはもっと広い意味での愛情についての映画に仕上がっていると感じた
一般的な規範における善悪ではなく、飽くまで誰かのためを思っての行いならそれを咎めることなどできないのではないかと言われてい
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(1960年製作の映画)

4.8

刑務所からの脱獄という極限までシンプルなストーリー
登場人物の背景も最小限に削ぎ落とすことで、冗長さが全くなくなりソリッドなシチュエーションから生まれる緊張感が最後まで持続していた
しかし驚くほどに脱
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

5.0

バスケと映画の相性の良さを感じた
視線のやり取りや直線的な動きの連動からくる躍動感とリズムに否応なく興奮させられる
それこそプレイスタイルとやり取りからキャラクターの人物像を類推させ、はっきりとしたバ
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.5

孤島にて親友から唐突にそっぽを向かれ、子供のような喧嘩に発展する中年男性の話
こんなにこじんまりとして導入からあらゆる示唆に富んで、小さな話と大きな世界を同列に描くマーティン・マクドナー脚本が上手すぎ
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マジカル・ガール(2014年製作の映画)

4.7

入口と出口がこんなにも異なるなんて
独特な間合いから漂う不穏さに加えて日本の魔法少女要素が紛れ込んでくるという歪さがときに可笑しくでもやっぱり不穏
音楽の使い方も弾けている
オープニングの示唆的な会話
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ナイルの娘(1987年製作の映画)

3.8

洗練された画作りが印象に残る
フィックスの長回しがメインだけど、美術やカメラを置く位置が絶妙で動きが少ない画面にも立体感があり見ていて画に飽きない
映像面ではさすがと思わされながら、話は若干薄味でとこ
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天上の花(2022年製作の映画)

4.0

東出昌大の真骨頂のような映画
色眼鏡で消費されるにはやはり勿体無い存在
愛ゆえの暴力という詭弁としか思えない理屈をこの人ならあり得ると思わせる演技はさすがだと思う
アンモラルな存在を客観的にこんな人だ
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冬の旅(1985年製作の映画)

4.5

1人の女性の出来事を複数の証言を頼りに紡いでいく形式
ドキュメンタリー性とフィクション性がほどよく同居しているような雰囲気
リアルな地に足着いた感触でありながら時折かなりケレン味ある演出をかましてくる
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幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

4.5

この内容で幸福とはかなり皮肉が利いているタイトル
独特な編集と音楽、鮮やかな色使いで画面の多幸感を演出するけれどそれが却って幸せの上滑り感が表れてくるような
主人公はよく言えば誰にも平等に接することが
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そばかす(2022年製作の映画)

4.3

アセクシャルな主人公を描いた作品
やはり三浦透子の存在感がいい
ポスタービジュアルさながらタバコを吸うシーンが様になる
題材の提示が分かりやすすぎたり、展開のさせ方が少し都合良かったりと映画として粗が
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ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

4.0

文字通りダゲール街で暮らす人々を優しく見つめたドキュメンタリー
なんてことない人々の日常が記録されているけど、その中でもあっと驚くような瞬間が立ち上がる
個人的に印象的だったのはこの人々が仕事をしてい
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とべない風船(2022年製作の映画)

2.5

題材の切実さや魅力的なキャストを活かせていない印象
物語の大きな転換点と転換点の間にあるディテールが練り込まれていないのでこの映画内のリアリティを信じることは難しい
位置関係が曖昧な演出、登場人物の関
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

5.0

馬鹿みたいな感想だけど映画が始まった瞬間に自分は耳が聞こえるんだと思った
リズミカルな環境音の連鎖により映画に乗せられながら、逆説的にケイコの世界を微かに実感させられる
改めて三宅唱が捉える世界は美し
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ワイルドツアー(2018年製作の映画)

5.0

今ここにある瞬間の記録の積み重ねが映画なんだと当たり前のことを実感させられる
初々しさを正確に記録されているからこそ、リアルとフィクションの境目が曖昧になりありきたり過ぎるほどありきたりな物語にとてつ
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密使と番人(2017年製作の映画)

4.0

極々シンプルなストーリーから展開される緩やかなサスペンス
自然の風景をひたすら歩いて移動する様はケリー・ライカートの映画を観ているときのような感触
言うまでもないかもしれないけど、どのカットを切り取っ
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THE COCKPIT(2014年製作の映画)

4.5

ものづくりに密着したドキュメンタリーはやはり面白い
被写体そのものの魅力とアイディアの断片が少しずつ重なり形になっていく過程のワクワク感が文字通り記録されていく
改めてこういうものを見せられると才能が
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あのこと(2021年製作の映画)

4.5

中絶が違法だった60年代フランスにて予期せぬ妊娠からなんとか奮闘する女子大学生の物語
スタンダード画角や主人公に極端に寄ったカメラアングルで否応なく彼女に起こる出来事を体感させられるつくり
妊娠が発覚
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