せいけさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

せいけ

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リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

リトル・マーメイドこそ実写化する意味があったんだと感じる1作
人間と海底の世界の断絶はアニメーションより実写の方が伝わってくるし、生身の俳優が演じるからこそ、人間と人魚という対比が効いてくる
主演のハ
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

5.0

ビデオカメラの記録からなる記憶、人の内面は映せないカメラの特性を活かした映画的な物語構築に心を打たれた
父と娘のバカンスは一見微笑ましく見えるが、どこか不穏さも漂う
意外なほどに親子が目を合わせて話す
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怪物(2023年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

是枝裕和と坂元裕二による化学反応が間違いなく起こっている
やや文学調なセリフとそれを自然に響かせる演技と演出そしてあらゆる日本の社会問題を背景に大人と子供のそれぞれの世界が描かれる
まずロケーションが
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クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)

4.3

クリードシリーズの締めくくりになるのかわからないけれど、ロッキーがいないことでロッキーシリーズとクリードシリーズの違いが浮かび上がる自己言及的な作品だと感じた
当然といえば当然だが勝者の人生を歩みほぼ
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午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

4.3

比較的地に足ついた物語でフィクション的な飛躍も抑えられていながらいい映画を見ているなという感覚が最初から最後まで途切れない
子育ての役割も大方終えて、新たな人生を始めざるを得なくなった女性とその家族が
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ウイークエンド(1967年製作の映画)

4.5

これを面白いと思ってもいいのか不安になるほどぶっ飛んだ映画
とはいえシンプルに映画表現に度肝を抜かれるところもあるからまた厄介だ
渋滞のシーンは本当に素晴らしい
あれほど本質的に渋滞を映画表現に落とし
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未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

4.5

等身大の中年女性を地に足着いた演技で体現するイザベル・ユペールが素晴らしい
見ようによっては淡々とした起伏の少ないドラマかもしれないが、劇中かなりの割合で早足で移動するように仕事、母親の介護などやるべ
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.7

実際に起こった連続殺人事件をベースに作られたサスペンス
イランが抱える信仰の理不尽さ、側から見ると歪に感じてしまう社会背景を端的に示しながら展開していく演出の手腕がまず素晴らしい
男性優位社会に染まり
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TAR/ター(2022年製作の映画)

5.0

映画としての完成度は圧倒的
研ぎ澄まされたクールな撮影と天才指揮者リディア・ターを体現してみせたケイト・ブランシェットの演技力に一義的でない脚本が織り重なる
現代的なテーマとアート性が高次元に融合し見
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三度目の、正直(2021年製作の映画)

5.0

奥行きを感じられる整った美しいショットの連鎖と自覚的なのか無自覚なのか感情を押し殺したかのような登場人物を表現する俳優の演技
黒沢清とカサヴェテスが融合したような映画だと感じた
個人的にはハッピーアワ
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トリとロキタ(2022年製作の映画)

5.0

ダルデンヌ兄弟の作品を初めて映画館で見たけど、映画館で見ることにより本質を感じられる作家だと実感
伝家の宝刀である固定カメラでの長回しはまさしくトリとロキタが生きている時間と人生を感じさせる
咄嗟のア
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サンドラの週末(2014年製作の映画)

4.3

「サンドラの解雇」と「ボーナス支給」を天秤にかけた投票にて自身の解雇を撤回すべくひたすら従業員に交渉していくシンプルなストーリー
監督の過去作からみるとサスペンスの持たせ方が静的でわりかし同じことの繰
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リオ・ブラボー(1959年製作の映画)

4.3

セリフで多くを語らずとも見る側に感じさせる周到な演出の数々
ユーモラスなやり取りと緊張感溢れるショットのギャップが魅力
クライマックスのド派手なシークエンスには思わず驚いてしまう
渋さと豪胆さを兼ね備
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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

4.2

あの悍ましい事件を誠実に映画化
事件の全貌を見せず、被害者からの語りで示していく
最小限に抑えられている、事件の要素もあの音声が流れるところの気持ち悪さたるや
なかなか取材が進まないもどかしさゆえに、
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河内山宗俊(1936年製作の映画)

4.3

ほとんどセリフは聞き取れなかったものの、最小限にして豊かな情報量のショットと役者の魅力により物語に運ばれていく感覚
ユーモアも聞き取れないのに伝わってくる
クライマックスの大立ち回りは見もの
明らかに
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息子のまなざし(2002年製作の映画)

4.3

行き場がわからない序盤の雰囲気からひとつ種明かしがされてからの緊張感の保ち方が凄まじい
思えば元妻がある告白をしにくるシーンからして上手い
あれが直接のきっかけになったのかわからないが主人公と生徒の間
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ヴィレッジ(2023年製作の映画)

3.0

過去作と同じようなテーマで焼き直し感が強く登場人物も記号的
作家としての前身を感じられなかったのが1番残念に感じた
それでも目を見張る映像のルックと俳優の活かし方など映画として見どころはある
とはいえ
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イゴールの約束(1996年製作の映画)

4.7

ドキュメンタリックな手持ちカメラからなるサスペンスと俳優が醸す演技に驚かされる
ダルデンヌ兄弟の手腕は既に初期作にして確立されていると感じた
イゴールと父親の関係性の脆さというか危うさが見ていてきつい
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青空娘(1957年製作の映画)

5.0

魅力的な俳優をどこまでも懸命に追いかけるカメラ
いきいきと可憐にそこに存在する若尾文子の存在感に心を持っていかれる
妖しげなイメージだったが、こんな役もできるとは
衣装や小道具もカラフルに彩られ、コミ
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レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.7

美しい映像から展開される呆れるほどバカバカしいドタバタ劇
なんといっても主人公マイキーが魅力的
ここまで利己的で共感のしようもないくらいろくでなしな人間もそうはいないがこれが映画だと見ていたくなるんだ
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清作の妻(1965年製作の映画)

4.8

狂った愛を描くと増村の右に出る者はいない
死んだ方がマシと思えるほどの他人からは理解されない愛情に説得力を持たすことができる若尾文子となによりも規律を重んじる清作
語りのテンポが良すぎていつの間に?っ
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卍 まんじ(1964年製作の映画)

4.7

はち切れそうな感情が全面に迸る不思議な恋愛映画
同性愛に対する社会的な要素は一見するにほぼなく、かといって禁断的な愛を煽動するものとも違うように感じた
劇中のセリフであるようにまさしく「極端から極端」
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AIR/エア(2023年製作の映画)

4.5

あのエアジョーダンが作られる過程を描いた映画
スラムダンクをここ最近見ていたので、解像度が少し上がった状態で鑑賞
史実として誰もが知ることなので、過程に重きを置いた作劇が題材に対して程よい距離感を保ち
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妻は告白する(1961年製作の映画)

5.0

山登りの最中、夫を見殺しにしたと疑いを掛けられる女
文字通り宙吊りにされた男女3人の関係性のサスペンスとリズムのよい会話劇がとても面白い
法廷モノとして見ても十分な面白さがあるが本作の最大の魅力はその
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生きる LIVING(2022年製作の映画)

4.0

画作り、衣装、街並みすべてが気品溢れる美しい映画
ビル・ナイの厳格さと悲哀が同居して演技も素晴らしい
日本特有かと思っていたお役所仕事感がイギリスでも同じようにあることに少し驚く
いわゆる余命宣告され
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少女は卒業しない(2023年製作の映画)

5.0

映画は孤独と他者を描けていたらそれでいいのだという至極個人的な映画観を再認識するような作品
ここが世界のすべてとすら思っていた学校の中で感じる孤独や自分だけの苦悩と卒業することで広がるここだけではない
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

5.0

社会構造を炙り出しそれを見事なまでにひっくり返す構成の素晴らしさ
ともすれば、頭でっかちな映画になりかねないところをブラックユーモアと映画的なスペクタクルを交えてエンタメに昇華している
どの人物も滑稽
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戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

4.7

なんだこれと驚くしかない
かなり歪なバランスで作られた戦争映画
なぜこんなところでこんな編集を?なぜここでこんな音楽が?といちいち戸惑わされる
その歪こそがテーマと繋がるある意味ではウェルメイドとも言
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

5.0

大胆に飛躍する演出に驚かされながら、面食らっているとどんどんベネデッタという存在がわからなくなってくる
このわからなさこそがやはり映画の奥行きを深める
安易な感情移入を拒みながら、映画は危うさと迫力を
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Winny(2023年製作の映画)

4.5

手堅く作られた実録映画
日本がIT後進国と呼ばれるに至った事件を描く
セリフのリズムが心地よく、関西が舞台ということもあっていい塩梅のユーモアもあり小難しい題材ながら間口が開かれているのに好感が持てる
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エルヴィス(2022年製作の映画)

4.7

独特なバランスの伝記映画
エルヴィスとパーカーの関係性をメインにパーカーの視点から描かれる
パーカー役をトム・ハンクスが絶妙な塩梅で演じているので擬似的な親子関係に暴力性も切ない温かみも微かに感じられ
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小さき麦の花(2022年製作の映画)

4.7

静かな調子に見えて画面の密度が素晴らしい
奥行きを生かした構図と人物の繊細な演技が折り重なることでワンシーンの情報量が豊富であるにも関わらず端的に示される
特に手前と奥で起きている出来事のギャップを生
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.5

スピルバーグが描く自伝的映画
まさしく最近の潮流である映画についての映画
カメラが映し出す暴力性から目を背けない
怖がりだからこそ恐怖シーンを演出できるとスピルバーグの実作品との照らし合わせなどなど作
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

5.0

戦争の歯車として前線で戦う若者たち
粗雑な戦略とシステムの中でまざまざと冷淡に人が死んでいく過程が描かれる
美しい撮影が残酷さに拍車をかけるかのよう
視界も明るくないまま、ただ闇雲に前線を駆ける姿はま
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