oqmrさんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

新ドイツ零年(1991年製作の映画)

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1990年、ベルリンの壁が崩壊。90 = neuf zero =ニュー・ゼロ。言葉遊びだけど音遊びではない。相も変わらず、ゴダールは本作をテレビ局から依頼されて製作したらしい、テーマは「孤独」、フラン>>続きを読む

キツネとウサギ(1973年製作の映画)

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民話にはその国の伝統文化果ては世界観まで端的に表れるので国歌より国家代表らしいし民衆的。そんなロシアのある民話がウィリアムモリスっぽい有機的な様式で描かれる。これがまた動くと可愛い。予定調和のストーリ>>続きを読む

人生フルーツ(2016年製作の映画)

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ドキュメンタリーの主人公となる津端夫妻のみならず、映画自体の演出も一切カッコつけてないさっぱりした作品だった。「できることは自分たちの手で」「お世話になった人には感謝の手紙を」「自然を大切に」などなど>>続きを読む

これを最後に(1992年製作の映画)

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日本に行ってお金を稼ぎたいが何故かそのためには離婚しなくてはならないと思っている夫と何があっても一緒にいたい妻。そのころの日本の好景気とか国際情勢とかどうでもよくて問題はもっとミクロなものなんだろうな>>続きを読む

愛より強く(2004年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

娼館には行くのに、トルコ人が娼婦として客を取るのはトルコの誇りが許さないなど、捻じ曲がった伝統の枠組みに苦しめられる女性、と妻に先立たれ人生に絶望する男性。在独トルコ人の苦悩、を軸に観るとどうしても政>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

河瀬直美の『もがりの森』的な、スピリチュアルな、自然を受容するようなアジア独特の魅力と和辻哲郎的に理解する。という表面的な理解というか、多分理解の映画じゃないとなんとなく気づきつつ。最初、水牛が逃げて>>続きを読む

動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)

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映画を始めとするフィクションが虚構であることを批判的に表現する演出のことを「メタ・フィルミックな」と呼ぶとすると、この映画の先端と末端に施されたメタ・フィルミックな演出は幼少期の監督自身の経験をより実>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

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人々はこれを映像詩と形容するが果たして韻律などはあるのかしら。韻律の形式が崩壊しているということは現代詩的なものなのかという屁理屈を言っておきたい。多分映像詩が意味するところは一般的な映画に比べて説明>>続きを読む

男性・女性(1966年製作の映画)

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「インタヴュー映画」とレヴューに多く書かれていたので対話に注目してもう一度見て見たらより味わえるシーンがいっぱいあった。分かりやすいところで言えば窓際の女性へのインタヴューシーンとか。「政治に興味はあ>>続きを読む

狂気の愛(1985年製作の映画)

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最近個人的な流行のアンジェイ・ズラウスキー作品。相変わらず半分狂人みたいな人間しか出て来なくてズラウスキーぽいなとおもてたら、なんやら本作はドストエフスキー『白痴』を元に作られた作品だそう。だが私はド>>続きを読む

散り行く花(1919年製作の映画)

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グリフィス以前の映画を見てからでないとグリフィスの偉大さは理解できないっぽい。巨匠作品を見たときあるあるのそれ以降の監督にめっちゃ影響を与えてるからあんまりすごさがわからないというやつ。グリフィス作品>>続きを読む

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「物語の進行のテンポが静かでゆっくりで実際何も面白くないのに見れてしまう」系の映画。父、母、子供がそれぞれ抱えてる問題とそれに対する彼らの反応に対して観客は大いに共感できるから成り立つ二時間なのだろう>>続きを読む

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

一番気になったシーン。如何にもデザイナーな男性のショーの途中、突然赤と青の三角形が現れジェシーと対面する。不気味な低音を響かせながら美しく光るそれは権力の象徴(のピラミッド)のアレゴリーなのか何なのか>>続きを読む

愛の渦(2013年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

音楽が面白い。ヤンキーが聞いてそうなダサいEDMでしっかりとキメてくる。乱行パーティーという異常な場ではあるが一目惚れの衝撃も確かに表現しつつ、主人公の恋愛の安っぽさが拭きれない感じが絶妙だった。場所>>続きを読む

ブルージャスミン(2013年製作の映画)

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一番笑えないウディ・アレン作品。彼あるあるの「過去と現在を行き来する時間の進行」、このスタイル自体がとても博打的なところがあるのかなと考えさせられる作品だった。ジャスミンの欺瞞が積み重なって彼女がそれ>>続きを読む

キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-(2009年製作の映画)

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こんなまとめて何組もやるの?と驚いた結婚式を象徴に「貧しいが幸せ」な明るい前半といずれキナタイ(屠殺)に落ち着く犯罪と闇の後半。それら二つの時間いずれかではなく二つの別世界を結ぶ車の移動時間に痺れる。>>続きを読む

アリラン(2011年製作の映画)

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訳あって映画を撮れないけど撮らないと幸せになれないので撮る、らしい、な映画。三年の山籠り。H・D・ソローの『ウォールデン・森の生活』を読んでから社会から離れて自然の中で生活することに憧れがあるが、実際>>続きを読む

白い風船(1995年製作の映画)

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「問題の前に無力な子供の表情を愉しむ」といういかにも初期のキアロスタミっぽい脚本だが事実彼の演出した作品ほど心に残らないところに偉大さを見る。一見サディスティックなこのやり方で観客にとてもやさしい気持>>続きを読む

二重生活(2016年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「誰かがわたしを認識してくれるから、私が存在する。」というタイプの実存主義についての修士論文の執筆に苦戦していた大学院生の珠が尾行することで誰かを実存させ、結果的に自分の実存不安も解消されてゆく、とい>>続きを読む

ヤギと男と男と壁と(2009年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

予告編のリズム良さと反して最悪な笑いのテンポ無理矢理感。最後にもっともらしいメッセージを持ってきて本当に壁をすり抜けたのかどうか観客に委ねるという終幕を見て、なるほどこれがしたかったのねと思ったが、そ>>続きを読む

プレイタイム(1967年製作の映画)

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ジャックタチの近未来コメディ。AIが人類を支配していたなど警鐘的な意味はなく、ウェスアンダーソン的な、おもちゃ箱的な楽しさと、イオセリアーニ風の情緒が両方楽しめ満足だった。複雑なボタン配置の機械とか長>>続きを読む

ブロードウェイと銃弾(1994年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「アート・カムズ・ファーストなチーチこそが真の芸術家である。自分はそれにはなれない」という結論に至るまでのデイヴィッドの変遷を語るのだが、デイビッドはウディ・アレンの写しといった印象はなくむしろ映画と>>続きを読む

アンナ・マグダレーナ・バッハの日記(1967年製作の映画)

4.0

始まった瞬間の『ブランデンブルグ協奏曲』で映画世界に引き込まれることは間違えない本作はJ.S.バッハの2番目の妻であり、『アンナ・マグダレーナのためのクラヴィーア小曲集』で有名なバッハ夫人による正確な>>続きを読む

ゴダールのマリア(1984年製作の映画)

4.5

「カメラがあれば映画はできるが、映画には他の要素もある。それを検証する。」という意図を持って誕生した本作。聖書のなかもっとも有名な逸話のひとつであるマリアの処女懐胎の物語を現代にゴダール風に再生させて>>続きを読む

アオサギとツル(1974年製作の映画)

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二種の動物の対立構造。どちらが受け入れるか大人になるか。教訓というよりこの関係性が完成形であってほしい。神殿に住むロマンチックな鳥に憧れる。

イタリアにおける闘争(1970年製作の映画)

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図録!猿でもわかる共産主義入門!映像付きでわかりやすい!ってぐらいストレートなメッセージを抱えながら、しっかり「映画」を保つところがさらに意味不明なゴダールである。細かいところは覚えていないというのが>>続きを読む

フリーダ(2002年製作の映画)

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メキシコの国民的画家フリーダカーロの絵画作品のほとんどの主題であるメキシコ人として身障者としてのアイデンティティや、流産や夫ディエゴ・リベラとの出会いと繰り返される彼の浮気(果てはフリーダの妹までに及>>続きを読む

ジュリエッタ(2016年製作の映画)

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アルモドバル、または仰々しい美しさのパワープレイの匠。劇中において一般的な核家族は存在しない。ボアの父親は不在だし、父親は外国人介護人を溺愛する。見えない故に不安が翳る自分と家族の運命。「親子だから」>>続きを読む

ぼくとアールと彼女のさよなら(2015年製作の映画)

4.0

二人の心理的な距離感を物理的なものと捉えて距離を置いたりレンズを変えてまで等しく保とうとする子供のようなアプローチに思わず微笑してしまうのだが、其の様な取り組みは意図して施された「余裕のある遊び」であ>>続きを読む

地球は女で回ってる(1997年製作の映画)

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大学の授賞式とか、タクシー内での死とか地獄だとか宗教だとか、女性だとか。距離を保ってそういう問題に接してるようで実際苦悩に殺されそうになってるんだろう。ジャズがいいなぁ、と。これからこういう音楽を使う>>続きを読む

これが私の人生設計(2014年製作の映画)

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建築士の人生「設計」は単なる言語的な比喩表現ではないと期待されて劇場に足を運ばれた建築関係者、愛好家のみなさま、お疲れ様です。「みんな何かを隠して働いてる」って「忙しい」で休める感覚で働いてるイタリア>>続きを読む

エンジェリック・カンヴァセーション(1985年製作の映画)

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10分しか撮ってなかったフィルムで80分の映画を作らなければいけなかった監督(に付き合わされることになった観客たち)の悲劇。どう考えてもイケてるジャケットと、エド・ロシャを彷彿させる画面の色彩で観ない>>続きを読む

ケルジェネツの戦い(1971年製作の映画)

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うつろな目をした人々イコン画が怖い。小さいと思っていた切り絵があつまると大きく見えてまた怖い。毎度ながら音楽が握る物語の主導権。というか音楽が映像の連続性を担保しているから当たり前か。

25日・最初の日(1968年製作の映画)

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既存封建権力者に立ち向かう民衆の闊歩がショルタコビーチの旋律と重なり合いロシアらしい赤いガッツを生成する。音楽が画面を支配するさま。