懐かしいチャットの画面で見ず知らずの男性に語り掛ける2人の少女は、互いを偽装している。女子高生ヨジン(カク・チミン)はもう一人のジェヨン(ソ・ミンジョン)のフリをして男に語りかけるが、実際にカラダを>>続きを読む
山奥にひっそりと佇む寺院には、若い僧侶とまだ小さな子供がいた。その寺院は湖の上にあり、日の出と共に目覚め、2人の生活が始まる。幼年期、小さな子供は筏舟を漕いで、薬草を取りに行く。彼は目に飛び込んだ緑>>続きを読む
南北間の軍事境界線となる通称38度線、ここで兵士たちは夜通し脱北者を監視している。その境界を超えた場合は、彼らの主張を聞かずとも躊躇なく撃ち殺される。海兵隊に出兵した若き男カン(チャン・ドンゴン)は>>続きを読む
明洞の昼間の雑踏の中を男はふらふらと生気の欠けた表情で歩いている。繁華街の喧騒を抜け、デパートの前のベンチに腰掛けた女に目をやると、少し離れた所から彼女の様子をしばらく見ていた。物静かなヤクザのハン>>続きを読む
綿矢りささんの原作小説にあるAとの会話はどう考えても映画的ではないと思って恐る恐る観たが、黒田みつ子の殺風景でどこか温かみのある部屋の中に、あたかもAがいるような雰囲気がしっかり出ていて驚く。みつ子>>続きを読む
伝説のロック・バンド「ワイルド・スタリオンズ」として活躍した最高お馬鹿でファニーだった前2作から約30年、予想通りのボンクラ加減が実に最高だった。ヘヴィー・メタル人気に陰りが見え始めた80年代後期か>>続きを読む
山間地帯に面した人里離れた大きな池にある釣り堀。背の高い男ヒョンシク(キム・ヨソク)は軽装と僅かな荷物でこの地を訪れる。この辺りはヒジン(ソ・ジョン)という女性が管理しており、女は男を筏に誘いながら>>続きを読む
1970年代韓国、在留米軍基地に守られた辺鄙な村。黒人と韓国人の混血児であるチャングク(ヤン・ドングン)は、犬で生計を立てる商人の下で黙々と働かされていた。彼と母親が住むのは赤い米軍のバスで、辺りに>>続きを読む
私はいつものようにマロニエ公園で、目の前に座った人の肖像画を描いている。人間の表情は誰だって目・鼻・口しかないのだから一瞬彼らの顔を把握したのち、白いキャンバスに向かい始めるが、どういうわけか冴えな>>続きを読む
男は車窓を眺めながら、針金を器用に曲げては、絞首刑のひもの輪っかを作り出し、発車の時刻を待っていた。死に囚われた男は、パリ行きの列車の中でうつろな表情を浮かべている。そこにコンパートメントに一人の若>>続きを読む
韓国のソウル市にある漢江。その川の波は穏やかで、夜の明かりは乱反射し、ゆらゆらと揺れる。川が見渡せる橋には、毎日いくつもの曰く付きの人物たちが圧倒的な川を前にして躊躇い、時に全ての感情を捨て自分の身>>続きを読む
車の後部座席に座った少年は、不安そうな眼差しでうつ向いているが、やがて外から気を引くようなおもちゃが出て来て、思わず目をやる。車は母の子宮のメタファーであり、そこから少年が外に出ると、車は急スピード>>続きを読む
まだ朝を迎えることのないニューヨーク州バッファロー市。女は気配を消すようにベッドからそっと出ると、2人の息子を急いで起こし、勢い良く車へと乗り込む。北部地方のエリー湖岸にあるバッファローから車は南下>>続きを読む
音楽においても映画においても、才能ある者がヒットを飛ばすとは限らない。しかし才能がない者がヒットを飛ばすのはそれ以上に難しい。今作でエディ・マーフィが演じたルディ・レイ・ムーアという人物には、残念な>>続きを読む
不意に挿入された映像に、Directed By Robert Zemeckisの文字が出て来た時、これは罠だと思ってしまった私は割と早い段階で映画の全貌に気付いてしまったかもしれない。帰り車中でジョ>>続きを読む
三角関係は友人同士でもしんどいのに、ましてや性別が入れ違いならなおさらにしんどいだろう。友人の頼みを何の気なしに受け入れたはずが、最初から嘘で始まった関係に、自分自身が思いがけない葛藤に置かれる。け>>続きを読む
舗装されていない手つかずのデコボコ道を、車は砂煙を舞い上げながら走り、性急な勢いで牧場へと足を踏み入れる。両脇に松葉づえを抱えたその男は、キング・サイズのベッドを見つけると、うつろな表情ですぐに横た>>続きを読む
しんしんと雪の降る片田舎の街で、後部座席に挟まれた少年は外部の者によって救出される。雪はゆっくりと下に落ちるように見えて、徐々に180度ほど回転しながら、風に舞って横に流れる。そのフワフワした質感は>>続きを読む
コロナ禍の影響で、今年のクリスマスは質素になるし、年末年始の忘年会・新年会も全てキャンセルになりそうだ。せめて映画でクリスマス気分だけでもと勇んで出掛けたが、観なければ良かったと激しく後悔した。「聖>>続きを読む
冒頭の廃墟のような学校のイメージに囚われながら、文化祭の初日という一番楽しみな瞬間を迎えようとする登場人物たちは今日も時間に追われている。淡々と間延びした何の変哲もない普通の時間は、全てが最も幸福で>>続きを読む
最近の映画研はクリス・マルケルの『ラ・ジュテ』も知らないのかよと老婆心ながら呆れつつも、埃まみれになった『夢みる人』の台本に自らを奮い立たせる新人監督と、彼女を支えるサークル仲間たちの成長がすこぶる>>続きを読む
小柄な少年スティーヴィーは少し年の離れた兄と体格に差があり、何をしてもまったく歯が立たない。13歳の少年が見つめるのは、兄の部屋にキレイに整理整頓された90年代文化の山に他ならない。アルファベット順>>続きを読む
『罪の声』というタイトルは言いえて妙で、声そのものに罪はない。それどころか声を操る主にも罪などない。罪というのは人間がしてはならない行いをした者のことを指し、法に触れた行いは結果として、加害者と被害>>続きを読む
何の変哲もない郊外の住宅街、これまでの人生で恐らく一番大きな決断をたった今して来た男(BOY)と女(GIRL)は突然出会ってしまう。それは不意に落ちた雷のようとも、出会い頭の事故のようなものとも言え>>続きを読む
岩手県一関市、駅前から少し離れた住宅街にその店はある。屋根に雪が降り積もるこれからの季節、レンガ作りの外壁、そして野口久光氏の描いたフランソワ・トリュフォーの『大人はわかってくれない』のポスターの先>>続きを読む
大林宣彦の『青春デンデケデケデケ』や今年公開の岩井澤健治の『音楽』、洋画では『シング・ストリート 未来へのうた』のように、青春音楽映画にハズレなしと言うが、今作もそれらにまったく引けを取らない。何せ>>続きを読む
刑期を終え、ようやく出所した男を待ち構える1人の男。はぐれもの同士の2人の間には、守るべき仁義などありはしない。この渡哲也と原田芳雄の視線の交差が最後まで心地良い日活ニューアクションの佳作である。3>>続きを読む
華奢な女の子のバッグに入れられ、背中で背負われた猫は、透明な球体部分からどのように世界を見つめただろうか?映画を観終わった瞬間、そんな事を思わずにいられない。一人娘の最愛の両親の死から始まる物語は「>>続きを読む
大きな生糸工場らしい建物の門構えに、にじり寄る憲兵たちの姿をフィックスで据えた渾身のロング・ショットでこの物語は始まる。1940年神戸、戦争の兆しは平和な街の中にも少しずつ侵犯する。尋常ならざる顔を>>続きを読む
言葉にするのも難しい、声に出すのも憚られる「生きづらさ」を象徴するような1本だ。1982年、4月1日に生まれたキム・ジヨンという名の一人の女性。夫と娘に恵まれ、両親も健在で、一見何不自由のない生活を>>続きを読む
青春映画に端を発する思春期映画というのは、映画が幕開けた時からの主人公の成長が鮮明に描けているかが肝になる。
主人公は嵐の只中で何をどうもがき、いかにしてそれを乗り越えるか?あるいは現在進行形で思春>>続きを読む
薄曇りの中、少しヒンヤリとした田舎道を走る男の狂気じみた息遣いは、明らかに軽いジョギングではない。血に飢えた男の切実さがスクリーンから迫る。
リプチンスキーのカメラワークも彼にピタリと張り付くから、>>続きを読む
ホーム・ビデオに映る無邪気な子供の笑顔、裕福な家庭では優しい両親が彼に語りかける。絵に描いたような幸福な核家族の光景。アメリカ・アーカンソー州の教会、保守的な彼の父親マーシャル・エモンズ(ラッセル・>>続きを読む
とある団地の上層階、端っこにある部屋ではクローゼットに少女が監禁されていた。恐怖の表情を浮かべた祖父江初子(ともさかりえ)は部屋に灯油を巻き、南京錠で厳格に施錠されたクローゼットに向けてゆっくりと「>>続きを読む
助手席に座った女が1人、気怠い表情で外を見ながら、たばこの煙をゆっくりと吐き出す。彼女とルームミラーで偶然にも目が合わないように、後部座席の女もまた外の景色に目を向けている。2人の間に横たわる心底気>>続きを読む
数年前に息子を失ったショックから未だ立ち直れない母親の姿。その表情には深いシワが寄ると共に、深い深い悲しみに覆われている。今作における「オルカ」は、その亡くなった息子の具現化されたイメージだろう。か>>続きを読む