りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 72ページ目

攻撃(1956年製作の映画)

4.5

最前線における軍隊内の腐敗や不条理を堂々とえぐった本作は、当時ハリウッドを席巻した赤狩りへの反発が色濃い。クライマックスでコスタの同僚は事の次第を総司令官に報告しようとして大隊長に止められるが告白を選>>続きを読む

ガン・ファイター(1961年製作の映画)

5.0

各々が危険な旅路へと参加する利害関係を紹介する手際の良さ。そこからのエピソードも、カーク・ダグラスを主とするキャラクターの肉付けになっている。

追う者と追われる者の、奇妙な旅。三角関係を巡るやり取り
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何がジェーンに起ったか?(1962年製作の映画)

4.5

露悪的な性格描写、むき出しの激情、ねちっこい暴力性、ベテラン女優たちの厚化粧をさらに誇張する不気味なモノクロの陰影など、すべてが異様で悪夢的な密室劇の傑作。奇矯な老女たちの心の奥深くに分け入り、そこに>>続きを読む

特攻大作戦(1967年製作の映画)

3.5

「大脱走」「ナバロンの要塞」党に通ずる60年代集団アクションもののひとつの金字塔。十二人の個性派たちをリーマーヴィン演じる少佐が彼らの共通敵となることで束ねていく過程はユーモラスかつ快調。

やはり印
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ロンゲスト・ヤード(1974年製作の映画)

4.0

本作のハイライトは間違いなく囚人チームVS看守チームの試合である。だが、そこに行き着くまでのアルドリッチの手際の良い演出が地味に光っている。

プロローグで主人公の人となりをさりげなく見せつつ、カーチ
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合衆国最後の日(1977年製作の映画)

3.6

政治的な小難しさが一切ないエンターテインメント作品。
施設に侵入し脱出するまでの攻防戦。
画面を分割する独特の演出を生かした電話でのやりとり。
ラストのアメリカに対する皮肉もピリリと効いている。
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カリフォルニア・ドールズ(1981年製作の映画)

4.4

1人の男と2人の女のロードムービー。
人生のどんずまりに嵌ってしまった男女が、そこから派手に這い上がるわけではない。
だが、そんな状況の中で開き直って、一発かまそうとする姿勢が最高。
ラストのプ
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アメリカの影(1959年製作の映画)

3.5

マンハッタンに住む、兄と妹、弟の三人の物語。兄のヒューは黒人の風貌だが、弟ベンと妹レリアは見た目は白人に近い。レリアは快活で積極的。

彼女魔は文学愛好家たちのパーティで白人青年トニーと出会う。二人は
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グロリア(1980年製作の映画)

4.0

目玉焼きを作れば失敗し、フライパンごとゴミ箱に投げ入れるジーナローランズ。本作の彼女は母性が芽生えていく過程を描いてはいるものの、それは所謂「母親」の役割を担うことではない。銃をぶっぱなし、啖呵を切る>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.5

ジーナ・ローランズ演じる妻は家に缶詰なのだろう。最初は気が狂った人間に見えるが、段々我々の家庭生活と地続きに見えてくる説得力がある。たまに家を訪ねてくる「ゲスト」に、彼女なりの「おもてなし」をしている>>続きを読む

2000人の狂人/マニアック2000(1964年製作の映画)

3.0

元祖切り株映画であり、鮮血が色鮮やかなスプラッターではあるが、そこに恐怖や痛みが感じられないのは、殺しに興じている側が非常に楽しそうであり、カントリーミュージックに乗せてアメリカ南部特有の陽気さと脳天>>続きを読む

存在のない子供たち(2018年製作の映画)

5.0

今年ベスト級の驚異的な傑作。構成の妙、厳しくも滑らかで的確に登場人物たちにスポットを当てる語り口、そしてもはやどのように演出したか分からない子供の演技など、観客を最後まで微塵も飽きさせない魅力に溢れか>>続きを読む

狩人の夜(1955年製作の映画)

4.5

伝道師という見てくれが、いかに大人たちのガードを下げさせ、聖人というレッテルを上手く利用すれば、その人の人生ににじり寄り洗脳することがいかに容易いことかということを描いた恐怖映画。

羊の皮を被った狼
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ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ(1953年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ダンカンという刑事が拳銃自殺し、バニオン刑事部長が捜査に当たるがこれといって不審な点はない。しかし、バーの女ルーシーの電話から全てが変わる。彼女はダンカンの愛人で、3日前に彼に会ったが元気だった、と言>>続きを読む

恐怖の報酬(1953年製作の映画)

4.5

フリードキン版との一番の違いは、トラックがニトロを積載して発車するまで1時間とたっぷり尺を使っている点だろう。そこで執拗に浮かび上がってくるのは暑さと貧しさである。

なぜ命をかけて彼らがニトロを運ぶ
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セルラー(2004年製作の映画)

4.0

全編がまさにノンストップの隠れた傑作。ギリギリの通話を命綱として、ケータイの電波が弱になったり、混線して聞こえづらくなったり、バッテリーの充電が切れかけたりと新機能でハラハラさせつつ、意外にも超チャラ>>続きを読む

恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

5.0

ショットの映画であり、アクションの映画であり、顔の映画であり、そして狂気の映画。まさにこれぞ映画という場面のつるべ打ち。まさに至福の時間とはこのこと。

巨大なトラックがまるで顔のついた怪物のように見
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

5.0

本作の主人公は終始フラフラしている。夢見心地で、絵が上手で、目の前の光景を自分の頭の中にあるキャンパスで色鮮やかに描くような女の子だ。それは広島から嫁ぎ先の呉へ行っても変わることはない。ドジで不器用だ>>続きを読む

ハロルドとモード/少年は虹を渡る(1971年製作の映画)

3.8

少年とおばあちゃんの純愛映画というなかなかの設定にもかかわらず、周囲とうまく関わることができないふたりがそれぞれ死と生のシンボルとして葬儀で出会い、世間のルールを無視し心の純度を高めていく繊細なタッチ>>続きを読む

クロノス(1992年製作の映画)

3.5

無垢な少女の存在に加え、歯車や昆虫など後のデルトロ作品で繰り返し描かれるモチーフがてんこ盛りの一作。

機械仕掛けの昆虫が人間を吸血鬼に変えるアイデアもさることながら、本作がユニークなのはお約束の吸血
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HOUSE ハウス(1977年製作の映画)

4.6

時間、記憶、戦争、アイドル、化け猫、鏡、電車、虚構、書き割り、合成、アニメーション、後の大林映画を構成するあらゆる要素が散りばめられた電気紙芝居。

再見すると色濃く戦争の記憶が影を落としているのが分
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ねらわれた学園(1981年製作の映画)

3.7

虚構で仕掛けてドキュメンタリーで撮る。
地球を侵略しようとする悪に立ち向かう薬師丸ひろ子。摩訶不思議な世界の中で、彼女の強い意志が光り輝く。

終盤の合成やCGやアニメーションをごった煮にした大林
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時をかける少女(1983年製作の映画)

5.0

大林は映画について、文学は無から有を生む想像力の世界。映画はある有から別の有を生む、いわば肉体の痛みの世界。その肉体の痛みをどれだけ心のドラマに変えうるか、が映画の演出の基本的な工夫となるのです。ぼく>>続きを読む

廃市(1984年製作の映画)

3.8

本作に漂う退廃的、もっと言うと「死の匂い」に心惹かれる。かつてひと夏を過ごした柳川が火事で消失したニュースを聞き、あの夏を回想する。現在の「僕」のナレーションは大林監督自身が務める。

柳川は一見する
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野ゆき山ゆき海べゆき(1986年製作の映画)

4.5

日本も日本人もわんぱくだった時代
ヒロイン鷲見ゆり子を双眼鏡で覗き見
女の人というには小さく、女の子というには大きい
戦争下の子供たち性の目覚め
姉らしき人が息子に私に乱暴しないで
戦争をす
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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

5.0

何度観ても本作に惹かれ涙を流してしまうのは、主人公が不憫だからだろう。妻と離婚し、子供にも会えず(「青春デンデケ」の林泰文)、仕事でパートナーを組んでいた友人に妻を取られ、その後に出逢う、浅草の両親も>>続きを読む

青春デンデケデケデケ(1992年製作の映画)

4.3

バンドメンバーが練習場所を探してウロウロする場面が秀逸。過去の青春の思い出と場所は切っても切り離せない。時間はもう過ぎ去って戻れないものだけど、その場所はその当時の顔をして温かく迎え入れてくれる。>>続きを読む