りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 68ページ目

ケンタとジュンとカヨちゃんの国(2009年製作の映画)

3.0

青年期は情緒不安定になる。アイデンティティがぐらつき、社会などの縛りに歯向かおうとする。そして自分探しの旅をしたくなる。そんな不安や理想と現実とのギャップ、子供と大人との狭間で苦しむ姿を描いたのが本作>>続きを読む

ゲルマニウムの夜(2005年製作の映画)

3.5

宗教への挑戦。宗教人への挑発。
偽善的なものに対する怒りに満ち満ちた世界。
抑圧すればするほど、倒錯する性。
何でも赦されてしまう罪。
それらを静謐かつシンプルな画面に迫力を持って描いている。
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ハルチカ(2017年製作の映画)

3.5

本作は音楽映画であるが、3分の2は部員集めをする橋本環奈を愛でる作りである。正直この部分はかったるい。ただ、本作は主に3つのシークエンスで見逃せない魅力がある。

まず中盤に部員全員が部室から外に飛び
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箱入り息子の恋(2013年製作の映画)

4.4

親離れできないよりは、子離れできない親にがんじがらめにされ、そんな状況に抗うことを諦めかけている人間を描いた厳しい映画。

一見ロマンチックな物語だが、そもそも目が見えないからこそ見た目の問題は解決さ
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猫は抱くもの(2017年製作の映画)

4.1

あらすじだけを辿れば、元アイドルだが現在は田舎でスーパーのレジ打ちをしているアラサー妄想女子の沢尻エリカが、ゴッホという画家志望の男と出会ったり、アイドル同窓会という番組に出演しに東京へ行ったりしなが>>続きを読む

のぼうの城(2012年製作の映画)

3.7

「のぼう」というキャラクターは良い意味でつかみどころがない。そんな人物を狂言師である野村萬斎が、独特の台詞回しで「バカ」と「天才」の狭間で見事なバランスを取って演じている。決して偉そうにせず、自ら手も>>続きを読む

メゾン・ド・ヒミコ(2005年製作の映画)

3.0

ゲイの父親を中心に、彼の娘や老人ホームを都合の良いように捨てることで、世間とは隔絶したところで責任を逃れ安住しようとする姿勢を断罪する厳しい一面を持った作品。ゲイという本来の姿を隠し、全身麻痺の老人を>>続きを読む

R-18文学賞 Vol.2 ジェリー・フィッシュ(2013年製作の映画)

4.0

気待ちいいことがしたい
男女とか関係なく若気の至り
あなたじゃないといけない
行き場のない性欲の美しさ
クラゲのように虚しく彷徨う
性欲から愛へと変わっていく過程
その愛のしがらみに囚われ
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泣き虫しょったんの奇跡(2018年製作の映画)

3.7

主人公のしょったんは、天才ではなく執念の人。年齢制限という壁に阻まれても何としてもプロの棋士になりたいという執念。実話の映画化だけに主人公は、紆余曲折を経てその夢を実現するが、その紆余曲折がゆるいエピ>>続きを読む

火花(2017年製作の映画)

3.5

木村文乃が最初から風俗で働いているようなDQNキャラクターなので驚かない、外見が面白いから売れる芸人への当てつけで豊胸手術をして菅田の前に久しぶりに現れる桐谷健太が唐突すぎる。逆のことを言って泣かせる>>続きを読む

空中庭園(2005年製作の映画)

4.3

「家族に絶対秘密を作らない」というルールの上に成り立つ家族。そのルールに安住していた一家の崩壊と、その先に見える希望を描く。

小泉今日子の痛々しさは生半可ではない。幸せな人生、理想の家族を幼き頃から
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ナイン・ソウルズ(2003年製作の映画)

3.7

オープニングでやられてしまった。
東京の空撮の画から始まるこの映画。その東京の街は東京タワーに向かってだんだんと灰色へと色あせていく。最後にはまだ色彩を保つ東京タワーが残り、徐々に東京タワーの絵が
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青い春(2001年製作の映画)

4.5

尖って突っ張っている自分が、どこで角を取って丸みを帯びていくか。それは社会や世間に媚びて従属することなのか。その狭間で行き交う高校生の戸惑い。ヤンキーじゃなくたって、思い当たる節がある。

ふとした瞬
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ブラインドスポッティング(2018年製作の映画)

3.8

ニガーという言葉に含まれるイメージやレッテルを相対化し距離を取る黒人青年と、まさに「絵に描いた」ようなニガー的性格の白人青年のバディものという観点がまず面白い。白人がニガーと呼ばれ、黒人にマシンガンの>>続きを読む

帰れない二人(2018年製作の映画)

3.0

肝っ玉姐さんが恋人のヤクザの命を救うべく一肌脱いでお勤めしたにもかかわらず、迎えに来ないどころか彼女の知り合いの女と付き合っており…という展開を迎える本作は、惨めな境遇になった自分を嫌悪する男と、そん>>続きを読む

工作 黒金星と呼ばれた男(2018年製作の映画)

4.5

北朝鮮と韓国という絶妙なバランスで成立している関係性と、立場や情勢によってそれぞれの思惑が複雑に絡み合う超一級品のポリティカルサスペンスであり、あまりにも熱い組織に属する男同士の感動ドラマ。そんな一筋>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

3.5

冒頭ワンカットで夜道を歩く黒人のそれを静かに追いかける車との不穏さで幕を開ける本作は、差別をテーマにしたホラーでありコメディでもあるが、黒人を劣った存在ではなく、優れた存在として近寄る白人たちという、>>続きを読む

罪の手ざわり(2013年製作の映画)

4.1

実際に起こった4つの事件
罪に触ってしまうまでを描く
置かれている環境から社会を炙る
娯楽性も意識しつつ
男は虎となり咆哮をあげる
女は蛇となり地べたを這いつくばる
ケダモノどもに制裁を加
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竜馬暗殺(1974年製作の映画)

4.1

幕末という動乱期を背景に、暗殺された坂本竜馬の死をめぐって、その真実、背後にある無名戦士たちの生と死、青春の栄光と孤独、繁栄と悲惨を、16ミリフィルムの粒子の粗い白黒画像で描いた傑作。

田村正毅のキ
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さよなら、さよならハリウッド(2002年製作の映画)

3.7

アレン映画の主人公は常にアレンの分身であると言われているが、アカデミー賞を受賞しながらワンマンぶりが敬遠されという設定、さらには劇中で登場する中国人カメラマン、そこで撮られる映画は40年代を舞台にした>>続きを読む

トキワ荘の青春(1995年製作の映画)

4.2

当時の写真やヒットした歌謡曲を交えながら、時代の流れの中で若者たちが漫画家としての成功、挫折、決断、選択、そして別れを静かなトーンで描いた青春映画の傑作。

特に6畳ほどの狭い空間に集い、飯を食べなが
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ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

5.0

まず強烈な被写体を発見できた事で面白いこと間違いなし。神の法の元で天皇を断罪し、事態が良い方向に向かうのであれば暴力も全く辞さない男・奥崎健三。滅茶苦茶な言動で相手を脅し、時には被害者の親族をサクラに>>続きを読む

祭りの準備(1975年製作の映画)

4.6

本作の主人公はシナリオライター志望の青年だ。夢のある作り話ならいくらでも書けるはずなのに、彼は身近な生活に密着した題材しか書こうとしない。非現実的な世界を夢想する余裕がないほど、彼の住む田舎町は閉塞感>>続きを読む