Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 12ページ目

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

3.9

宝石の価値はよく分からない(単なる石ころかもしれない)のに、一攫千金を夢見て色んな人が欲望を垂れ流す。

誰が見ても綺麗なダイヤモンドではなく、色んな色が混ざったオパールなのがポイント。現代版ゼア・ウ
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ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)

3.4

トイストーリー4の語り直し、という印象を持った。

「生きる目的」に固執してきた中年が、世界の美しさに気づき、新しい生き方を手にする。新世代を教育して送り出し=子離れをきっかけに、自身もミドルエイジク
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絞殺魔(1968年製作の映画)

4.2

「正常と異常の合間は曖昧」

めっちゃCUREだった。1960年代のボストンで起きた連続殺人事件をドキュメンタリー調で描いた作品。

ラストの尋問シーンがヤバかった。カメラに切り返される顔や、鏡に写っ
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JAWS/ジョーズ(1975年製作の映画)

3.6

ざっくり感想。今見ると観光vs市民の命の対立が浮き立って感じた。

・船上では人が大きく移動が出来ず、サメの動きも見えない。代わりに「落ちてはいけない」事がルールに追加される。物理的アクションの乏しさ
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恋愛準決勝戦/ロイヤルウェディング(1951年製作の映画)

3.6

1951年のMGMミュージカル。エリザベス女王の成婚に合わせて作られたというストーリーはかなり粗いが、フレッド・アステアのダンスは驚異的だ。

主人公の兄妹がミュージカルダンサーという設定なので、劇場
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落下の王国(2006年製作の映画)

2.8

「ルックJTBで行く世界遺産」的な映像にパラジャーノフを引用しているが、カットを割ったりカメラを動かしたり、意図がよく分からない(パラジャーノフは、固定画面の中で人や物が動くからこそ感動的なんだと思う>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.3

水の行方

水を出迎える炎によって、濡れたキャンバスは乾き、絵が描けるようになる。水の画家・マリアンヌ(ノエミ・メルラン)と炎の貴族の娘・エロイーズ(アデル・エネル)の恋愛関係は、キャンバスが燃え出さ
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プリズン・サークル(2019年製作の映画)

4.3

例えば恋人に変に強情な態度を取って傷つけてしまう。そんな経験は誰にでもあると思う。

自分の辛さを覆い隠そうとするあまり、無意識に認知が歪んでいる。その感情を解きほぐし、偏った考えに至った自分の脆さを
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トータル・リコール 4Kデジタルリマスター(1990年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

バーホーベンの魅力を言語化するためにレビュー続けてる感すらある

驚くほど大量にガラスが割れ、壁が破れ、ドリルで穴が空く作品だ。それを繰り返すうちに現実と虚構の境界が分からなくなっていく、というのが全
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Mank/マンク(2020年製作の映画)

3.9

メタ的過ぎませんか…?

①雑誌記者だったジャック・フィンチャーが書いた脚本を、CMからやってきた異端児デヴィッド・フィンチャーが映画にする=新聞特派員だったマンキウィッツの脚本を、ラジオからやってき
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市民ケーン(1941年製作の映画)

4.1

あっさり感想。

・主観と客観の境界を曖昧にする編集によって、ケーンの実像を隠す。現実に読者を騙していたハーストと、観客を騙すウェルズが配役的に重なる作り。

ニュースを客観的に見ていると思ったら、記
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悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)

4.9

「俺の思うサーク」と、実質的な遺作である今作の特異性について書きます。くっそ長いです。一部内容は「間奏曲」と重複します。

▽空虚な二項対立
サークは、アメリカ白人社会を舞台にしたメロドラマを得意とす
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間奏曲(1957年製作の映画)

4.4

どうにかしてダグラスサークの素晴らしさを自分の言葉で語りたいのだけど、これが大変難しいのです…。

「平凡なアメリカ人の女」ヘレン(ジューン・アリソン)は、幻想的なまでに美しいミュンヘンでドイツ人の指
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アイヌモシリ(2020年製作の映画)

4.1

分断と融和をテーマに世界中で映画が撮られている中、ようやく登場した「日本の先住民」の映画。こんな作品を待っていた。

現地のアイヌの人を本人名で起用している半ドキュメンタリー的な作り。序盤の揺れるカメ
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ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

3.8

ガラスの天井を突き破れ!

ホラー映画で無数に殺されてきた「金髪ビッチ」が、1人の人間として主体性を取り戻すお話。古き良きジャンル映画を現代的に語り直し、かつエンタメとしても成立させる作りは、昨今の映
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本気のしるし 劇場版(2020年製作の映画)

4.1

前半2時間が面白すぎる。休憩中隣席のおじさんに「面白すぎませんか」と声をかけそうになったくらいに面白かった。

「テレビドラマで撮りたいと企画したが、テレビドラマの撮り方は知らなかった」とぶっちゃける
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ブラックブック(2006年製作の映画)

4.4

ハリウッドで苦労と経験を重ねたバーホーベンが、久々に本国で羽を伸ばして撮った傑作。その意味では「パラサイト」と似た経緯の映画だなと思う。

狂った世界で一面的な快楽(エロや暴力)に意識を奪われず、理性
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ロシュフォールの恋人たち(1966年製作の映画)

3.8

目黒シネマ初体験。とても良い雰囲気でした。上映前には監督名や公開年まで丁寧にアナウンスしてくれる。今後の上映予定が書いてある手作りの小冊子、ドヌーヴとドルレアックのイラストがかわいい。

冒頭の広場で
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マウス・オブ・マッドネス(1994年製作の映画)

3.8

「読むと正気を失うホラー小説は、聖書のメタファーであり、宗教に影響されて個人の世界観があっさりと崩れていく恐ろしさと滑稽さを描いた、メタフィクショナルな快作である」

…と、特権的な気分でゲラゲラ笑っ
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東京上空いらっしゃいませ(1990年製作の映画)

4.6

中井貴一の吹くトロンボーンが嘘っぱちなのと、終盤のキスの意味がピンと来ない事を除けば、ほぼほぼ完璧な映画じゃないでしょうか。私が映画に求めるものは揃っていました。

これが娯楽作として全国公開されてい
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空に住む(2020年製作の映画)

3.8

家で靴を脱ぐ文化圏に生まれて本当によかったと思う。タワマンではベッドやソファーに横たわる時だけ、宙に浮かざるを得ない。

ここでは猫の運動を除けば、音だけが時間を進めてくれる。

録音の再生を中断させ
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

3.9

台詞の多い映画は苦手なんだけど、これは退屈しなかった。脚本が素晴らしい。アーロンソーキンさすがやー。

ベトナム戦争を巡り、民主党が分裂していた時代。シカゴでの党大会で警官とデモ隊の衝突が起きて、多数
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ウィッカーマン final cut(2013年製作の映画)

3.5

あっさりレビュー。

フリーセックスの島に放り込まれた童貞がこじらせた自意識によって死ぬ。悲しい話だ。

斬首♪斬首♪と横揺れする村人を尻目に、炎上するウィッカーマンの首が落ちる。その先に目線を向ける
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スパイの妻(2020年製作の映画)

4.0

黒沢清のいつもの演出、濱口・野原の力強い脚本と台詞、NHKドラマっぽい映像。これらが1つに溶け合って見事な化学反応を起こしている、というよりは、それぞれ強烈に主張し合っている印象。

ストーリーはシン
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パターソン(2016年製作の映画)

4.0

仕事帰りにラーメン食った直後、劇場でこんな美しい映画を見たら眠くなるのは自明だった。パターソン青年には悪いがこれが俺の生きる日常なんだと、水曜から木曜にかけて寝た(テロップで曜日を教えてくれるのがあり>>続きを読む

快楽(1952年製作の映画)

4.4

これが映画の快楽だよノーランよお(やつあたり)

▽良かったシーン
第1話「仮面の男」のパーティーの長回し。キレッキレ。会話がバトンリレーされる様子を、階段や廊下、広い会場の中で縦横無尽に追い続ける。
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桜桃の味(1997年製作の映画)

3.8

凄い映画だとは思うが、ちょっと今の自分のテンションには合わなかったなー。メタ視点の入ったメメントモリ映画=ダウナーなファイトクラブ?

フレームの中で会話する自殺志願者の男が、荒寥とした土地を車でトボ
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友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.3

映画的な気持ちよさと不快さの絶妙な使い分け。

大人は「タバコ買ってこい」とか「洗濯物取ってきて」と、自分の利益のために子供を使役し、物を一方的に投げつける。抑圧的な社会体制や、イラン政府と民衆の関係
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リアル 完全なる首長竜の日(2013年製作の映画)

3.4

「中盤からいつもと違う」という綾瀬はるかの宣言通り、「ホラー風味の虚実の曖昧化→虚実一体の世界へ」というお馴染みの展開(東京が溶け出す中盤まで)から、ある一捻りが入り、ラストはスピルバーグ…というより>>続きを読む

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)

4.3

昼も夜も車で彷徨い、張り込み中の会話はオフビートなのに飯は旨そうな映画、つまり良い映画だった。

久々の掛け値無しの暴力映画だ。緊張と緩和と死。どれだけダラダラ生きても死ぬのは一瞬だと自分に教えてくれ
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トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

4.0

役割を背負って動けない大人と、役割を拒む子供の快活なアクション。相米慎二やトリュフォーを連想するが、今作は大人も子供も苦しんでいて、あっちこっち動く。

虚構が現実を侵食する様子をホラー的に描く前半か
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永遠のモータウン(2002年製作の映画)

3.9

ラスト20分泣いたわー…。

月並みな表現だが「メイキングオブモータウン」が、社長であるベリーゴーディJrが語る表の歴史だとすると、今作は裏の歴史。会社の音を支えた演奏集団「ファンクブラザーズ」の姿が
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アカルイミライ(2002年製作の映画)

4.1

あの世とこの世の間に漂う「幽霊」として、クラゲがふわふわと浮いている。海棲生物なのに淡水に馴染むように育て、東京の川に大量発生させる守(浅野忠信)の試みが成功する事で、川で毎日灯籠流しやっていて、しか>>続きを読む

メイキング・オブ・モータウン(2019年製作の映画)

4.0

楽しかったー。にわか知識が具体化していく感じ。ノーラン、ペドロコスタと躁鬱な脳味噌フル回転映画が続いてたので、我ながら良いチョイスだった。

当時の社内会議の貴重な音声もあり、剛腕社長の回顧録を兼ねた
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ヴィタリナ(2019年製作の映画)

3.9

ペドロ・コスタ監督初鑑賞のビギナーながら、なんとか着いていくことが出来た。しばらく黒は良いです…というくらいダメージ喰らったけど…。

ポルトガルに出稼ぎに行った夫を待ち続けていたヴィタリナが、リスボ
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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.4

米ソの二項対立は終わり、第三次大戦は回避されたはずなのに、顔の見えない「他者」との分断は強まり、環境は破壊され、未来は不透明になり続けている。

あの赤と青が一つになるラストショットには、世界の融和に
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