突然の事故で父を亡くした泉(薬師丸ひろ子)は、焼香に手を合わせるのが他の子供よりも遅れる。気丈に振る舞っているが、父の死を受け入れられておらず、火葬によって天に登る煙を直視できない。ブリッジの姿勢で煙>>続きを読む
・喜八作品にしてはややシリアス寄りな印象ではあるものの、やはりテンポは抜群。見る側がぎりぎり理解できる範囲、役者が台詞を言い終わるかどうかのタイミングでシーンを刈り込んでいく。2時間半、勢いは衰えない>>続きを読む
全盲の加藤秀幸氏が映画撮影に挑んだ様子を収めたドキュメンタリー。
冒頭、真っ暗な画面にナレーションと台詞、効果音だけの「映像」が流れ、そこから映画作りがスタート。様々な特殊効果や撮影技法と出会う加藤>>続きを読む
ホドロフスキー版や、リンチ版が成功していたら…そんな「理想のDUNE」に固執していたら、DUNEの映像化は永遠に不可能だ。今の映画界で、この規模のSFを撮れるのはヴィルヌーヴしかいない。DUNEを今す>>続きを読む
長い長い説明を終えて一旦フェードアウトした王女の顔が「言い忘れました」の言葉と共に再び浮き上がってくる冒頭に「これは…」と身構えた。
が、映像や美術は至ってまともで、ビジュアルは魅力的。無論、今の感>>続きを読む
「やめるんだ!問題を増やすな!」
シャマラン「OLD」の元ネタの一つ。パーティーに集まった金持ち20人が、何故か家から出られなくなる不条理劇。夢と現実が混ざる映像演出も出来が良い。
家の中に当たり>>続きを読む
・慣習に縛られた女性が自由意志を持ち、自立する過程を描くキャメロン的なお話。イギリス→アメリカへの「移動」において、ローズは乗せられたレールから降りて自分で行動するようになる。(成金の女は取り残された>>続きを読む
会話劇は苦手だが、この映画はやっぱり特別。見るのは3回目くらいで、展開は覚えていたのに面白かった。
・序盤はワンカットが長く、12人の区別も付きにくいが、彼らのバックグラウンドが明らかになるにつれて>>続きを読む
・暗闇に入る、出て行く、部屋に光が差す…といった描き分けが丁寧。「光をもたらす者」を騙る刑務所の所長は冒頭から聖書を引用するが、渇いた仲間に酒を施すアンディ(ティム・ロビンス)こそがキリストだろう。光>>続きを読む
・「OLD」においてフラッシュバックが物語の秩序を回復させたのと同様、今作のマルコム(ブルース・ウィリス)もまた、フラッシュバックによって自らの存在理由を知る。
→過去に遡って「世界のあるべき姿」を>>続きを読む
黒沢清映画に出てくる戦前の呪いの映像のような…。精神病院をお化け屋敷扱いするのは今からするとアレな感じもするが、それだけに、タブーを犯している感覚が付き纏う映像体験だった。「古い割に」ではなく、普通に>>続きを読む
・植物に殺されるのかも、というシリアスさと間抜けさが混ざった恐怖。念のため造花にも「お邪魔してます」と挨拶し始める、マークウォルバーグの神妙な表情がたまらない。
・「自然はよく分からない」と3回くら>>続きを読む
みんな大好き「映画とは何か」系メタ映画。実質TENET
・数学的思考を踏まえた内容になっているのが痺れた。極限まで小さな変化(limit)から生じる「差異」を読み解くことで、人生の意味を理解しながら>>続きを読む
短評。予想は超えてこないが、しっかりしたアメリカ映画でした。テイラーシェリダンの切れ味を、やけに緩い娯楽性が薄めていて、ちょうど「ボーダーライン:ソルジャーズデイ」くらいな塩梅。
・ウインドリバー同>>続きを読む
「モンソーのパン屋の女の子」と同時期に撮られた短編で、対照的に室内劇が中心。ちょっと長く感じた。
あれこれ分析はするがこれといった決断はせず、見下していた女の子が結婚した途端にエロく見えてきて、結局>>続きを読む
短評。だいたい「モード家の一夜」と同じ。パリの街中をよく歩く映画で、それが物語を進めていくのがシンプルに楽しい。
女と最初にぶつかる場面は編集によって否応なしに物語が動く、ハリウッド的な語りがされて>>続きを読む
「偶然へのフォーカスを取り戻す事」と、私がロメールが苦手な理由について
短編含めて3本続けて鑑賞し、私なりにロメールってこういう監督なのかなという考え方がまとまってきたので書いてみます。
▽記号性>>続きを読む
森崎東は終戦の翌日、兄を割腹自殺で亡くした。軍人だった兄は「みんなもう何かバラバラだ、嘘だ」と最後の日記に書いた。
優秀な兄に嫉妬心を抱いていた森崎は、過去への後悔と、未来への絶望に沈んだ彼の選択に>>続きを読む
ブレッソンが厳密なテキスト読みに拘ったのは、彼が熱心なクリスチャンだったのが一因らしい。小手先の演技を超えた先に、正しい信仰が体を通して現れる。今作のパンフレットで西島秀俊が「。と、の間の取り方の違い>>続きを読む
Born Under Punchesのサビで歌われる“All I want is to breathe”。ジョージ・フロイド事件との重なりは偶然だろうが、まさにそんな思いが躍動しているライブだった。>>続きを読む
「キャット・ピープル」のジャック・ターナー監督。安定の面白さ。人間の根源に宿る獣性と理性のせめぎ合い、というテーマは繋がっている。
精神を病んで抜け殻のようになった美しい妻を巡る、兄弟と母親のドロド>>続きを読む
老いた牧師アプサロンは、妻と死別し、若いアンネと半ば無理やり再婚する。夫婦仲は冷め切っており、同居するアプサロンの母は、アンネに厳しく当たる。そんな折、前妻との息子、マーチンが遊学から帰郷。歳の近いマ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
IMAXで映像と音は楽しんだけれどストーリーが理解できずびっくりした、、、もう一度見たところ、何とか文章化出来るレベルにはなりました。
▽心の傷を受け入れ、身体に刻み込む
全体のざっくり理解。川で母>>続きを読む
船乗るまでのドタバタ(たまたま被った帽子の角度を気にするエミリー・ブラントが良い)と、潜水艦バトルが楽しかったが、ジャングルをクルーズし始めて以降はそこまで盛り上がらないのが残念。
とはいえ、次々に>>続きを読む
公開から20数年、ようやく「弍号機は神の火を借りたプロメテウスだから鳥葬された」ことを理解しました…
前作ウィッチ同様、不気味な光と影が当時の人々の抱える不安や息苦しさを表現し、彼らの目に見えていた>>続きを読む
神も悪魔も細部に宿る
17世紀のアメリカで村八分にあったピューリタン一家の生活風景を再現した作品。
ストーリーはシンプルだし、分かりやすいホラー的なドッキリ演出はない。この映画を支えているのは画面>>続きを読む
とりあえず完走。ほぼ満員だった。短評。
「この世は演劇」とのセリフ通りの、固定か長回しの室内劇と、対照的な広い広い美しい自然の風景。箱庭やら核戦争やら超能力やら、モチーフはお馴染みのものばかりだが、>>続きを読む
すげー面白かった…。自分でもびっくりだがラストがあまりに良くてちょっと泣いてしまった。前作ネタバレあり。
足音を静める砂の道を離れ、新たな一歩を踏み出す序盤のシーンが印象的だが、「かくれんぼ」がメイ>>続きを読む
前作絶賛派なのでややガッカリ。
前作の「ダメさも素晴らしさも全部入ったゴジラ映画」から「コングwithレジェンダリーゴジラ」という、モンスターバースとして本来あるべき姿に戻った印象。この映画が世界的>>続きを読む
田舎で成長する少年の姿をノスタルジックに描く侯孝賢の自伝的作品…なのだけど、英題の「The Time to Live and the Time to Die」が示すように、死んでいく親世代の視点を挟み>>続きを読む
▽文脈の喪失
雑多な記憶を繋ぎ、「文脈」を維持しながら我々は生活している。
映画も同様で、異なるシーンの文脈を繋ぐ事で我々はストーリーを理解しているのだけど、今作は認知症がその文脈を断ち切っている。>>続きを読む
孤島にバカンスに来たアンナが失踪。アンナの友人クラウディア(モニカ・ヴィッティ)と、アンナの恋人(ガブリエル・フェルゼッティ)が捜索の旅を始め、色々あってセックスするお話。改めて文字にすると酷えな。>>続きを読む
短評。取引関係と、信頼関係の構築&崩壊が、セリフをループさせながら描かれる。核戦争で世界は滅びると信じている少女も、罪の意識から車を直し続ける男も、この2種類の営みの中に身を置くのには変わらない。人物>>続きを読む
「アイ、トーニャ」の監督という事でハードル高めで行ったが、期待通りの良作でした。
信頼できない語り手によるボイスオーバーを盛り込んだ作劇は「アイ、トーニャ」を踏襲したスコセッシ風味でありつつ、サンセ>>続きを読む
三位一体説とET
▽父と子の同時体験
父のいないエリオットは、ETを「息子」のように愛し、教育し、守り抜くことで「父」となる。この構造は分かりやすい。
一方のETもまた、エリオットを庇護する「父」>>続きを読む
ベンハーとイエスキリスト、交わらない2人のユダヤ人が、動作や小道具によって少しずつ繋がっていく演出が面白かった。
「十字架に槍を刺す男」としてローマに取り込まれそうになっていたベンハーが、イエスと出>>続きを読む