Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

赤線地帯(1956年製作の映画)

4.1

売春防止法が成立する瀬戸際、明日にも消える幻のような空間で女たちが繰り広げるドラマ。

・個々のエピソードが描かれる群像劇だけど、店の中では画面の奥行きを活用。引きの構図で、客も女も出入り業者も思い思
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赤い天使(1966年製作の映画)

3.8

今まで見てきた四肢切断シーンの中でも上位のエグさ。直接は見せないが、ゴリゴリ…と骨の硬さが分かる(部位によって音が変わる嫌すぎるこだわり)。バケツいっぱいに切断された手脚や血の描写は、モノクロを選んだ>>続きを読む

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)

3.7

最後のバーのシーンとこの写真の素晴らしさで若干平均点が上がっている気はする

・ハイスピード、ハイテンションなラブコメ。押して押して押しまくる。人も物も動き続け、電話もひっきりなしに鳴る。情報量で麻痺
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曽根崎心中(1978年製作の映画)

3.9

梶芽衣子でもう一本。賛否分かれそうなオーバーな演技演出だけど、私は好きでした。フルスロットルの演技とスピーディな編集を眺めていたら、あっという間に終わってしまった。

セリフはひたすら説明的で全ての感
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女囚701号 さそり(1972年製作の映画)

3.7

・オープニング、東映の波ざばーんに重なる君が代からの日の丸のアップ。刑務所を日本に見立てた、体制への反抗心が込められた左翼映画なのは間違いない(立て篭もって食糧要求、繰り返される告発と内ゲバ)。

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サイダーのように言葉が湧き上がる(2020年製作の映画)

3.4

シティポップ的な絵柄で高校生のボーイミーツガールものをやるこの企画を、安直と捉えるか素直で良いと思うかは人次第だろうが、私にはラストのストレートさを始め、キラキラし過ぎて直視し難かったです。お話にもう>>続きを読む

アパートの鍵貸します(1960年製作の映画)

4.2

American Film Instituteの選んだ「アメリカ映画ベスト100(2007年版)」を、少しずつ見てきたのですが、これで100本終わりました。長かった。

定番ばかり並んでいるので、昔の
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チャップリンの黄金狂時代(1925年製作の映画)

3.8

短評。雪山なのにいつもの服装過ぎて笑う。前半の山小屋が特に良かった。

・お金や食事に向かう欲望は滑稽に、愛に対する飢えは悲痛に。冒頭、雪山で列を為す人が倒れるカット。劇中でも人がよく死ぬし、空腹のあ
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トイ・ストーリー(1995年製作の映画)

4.5

▽帰る場所を見つける
ウッディは、帰る場所だと思っていたアンディに、必要とされていないと感じる。バズは、帰るべき母船が実在せず、自分がおもちゃであることを知る。

共に、世界の認識の根本(神)が揺らぎ
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ならず者部隊(1956年製作の映画)

3.5

フライシャーの50年代の戦争映画。随所におっと思うシーンあり。話も普通に良い話。フライシャー好きならどうぞ。

・主人公のサムはアメリカ南部の綿花農園を営む金持ちで、小作人を家畜のように扱っている(マ
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.1

懐が深い…。今作をもってようやく2021年ベスト10が確定したので下の方に書いておきます。

社会のクソっぷりの描写については列挙しないが、冒頭のおっさんの股間を始め、立場の逆転に次ぐ逆転が、最後に男
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いとみち(2020年製作の映画)

4.3

あなたはあなたでいていいのだということ。「労働」によって自由を勝ち取り、存在を「音」として解放していく。今後も何度も見返すであろう、驚くほど素直な傑作でした。

「喋るほど一人になる」と言葉を失った少
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ロスト・ドーター(2021年製作の映画)

4.0

「最後の決闘裁判」の描いた問題が日本に現存する事を原田眞人が証明したように、今作は正直、フィルマークスでも首を捻ってしまう感想が目に入る。私の正しさを押し付けるものではないが、鑑賞の一助になればと思っ>>続きを読む

風と共に散る(1956年製作の映画)

4.3

とにかく冒頭が素晴らしい。とんでもない速さの車、美しい屋敷に不自然に吹き込む風と落ち葉が、迫り来る死を連想させる。窓枠を使ったフレーム内フレームの強調、流れるようなカメラワーク…。ある男が銃に撃たれて>>続きを読む

ラスト・ワルツ(1978年製作の映画)

4.3

解散ライブなのに半分くらいはゲストを入れての演奏。ミュージシャンズミュージシャンらしいザ・バンドの花道。至福の時間でした。

・ブルース本流のマディウォータースから白人ブルースのクラプトンへ。両者の間
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ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった(2019年製作の映画)

3.4

・兄弟愛に敬意、とクラプトン。60年代サイケのアンチとしてのルーツミュージックを貫いたザ・バンド。彼らに憧れてジャムセッションを申し出るも断られた、というエピソードが面白い。思えば当時のクラプトンはク>>続きを読む

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還〈スペシャル・エクステンデッド・エディション〉(2003年製作の映画)

3.9

・サムのおんぶや、エピローグのフロドの別れといったベタなシーンで涙してしまったが、これだけの時間と物量で殴られたら泣くに決まっとるわと思った。

・劇場公開版ではフェードアウト状態だったサルマンの死が
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ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)

3.9

・戦争に巻き込まれた夫婦の関係が壊れていく。ひ弱に見えた夫の暴力性が剥き出しになる展開は「わらの犬」のよう。

・軍隊に捕まりライトで照らされたり、カメラに撮られたりと、戦争の虚構性、抽象性を強調しつ
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都会のアリス 2K レストア版(1974年製作の映画)

4.1

・冒頭、空を飛ぶ飛行機はピンボケしている。カメラは左下へパンし、アメリカ西海岸の海を映し出す。浜辺に佇み、その風景をポラロイドカメラで収めた男の顔は不満そうだ。

主人公は目に見えたアメリカを記録でき
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ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔〈スペシャル・エクステンデッド・エディション〉(2002年製作の映画)

3.9

・この世界の魔法使いは、戦局を変えるような強力な魔法の使用を禁じられている。サルマンが度々現場に入り、担当者と律儀にコミュニケーションを重ねるのはそのためだ。そんな涙ぐましい努力もラストで無に帰す訳だ>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.3

想像以上にnot for meな映画でした…、、華子(門脇麦)と美紀(水原希子)を対立させず、相互作用でちょっとずつ前を向く。現実ではなかなか困難であろう、この爽やかなシスターフッドは、逸子(石橋静河>>続きを読む

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

3.9

2時間半は長過ぎるが、序盤は笑い転げた。ブラックコメディなので人は選ぶと思う。

例えば、アルマゲドン的な編集に乗せたロケットの発射直前、ジョナ・ヒル演じる大統領補佐官が世界に訴える。「物に祈りを捧げ
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Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

3.5

男社会に中指を突き立てるだけでなく、それを許容し、継承してきた「母親像」と訣別するお話だった。

異物を呑み込む事で、他者に支配された体を自分の手に取り戻す。排泄した異物を大事に並べるのは、自分の意志
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

牛の移動という「王道」な導入から、現代的な内容へシフトしていく傑作西部劇。父から子への継承という意味では、赤い河のアップデートなのかな。

▽「男の悲哀」なんて許さない
父権主義的でマッチョイズム礼賛
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ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

3.8

・グロあり触手ありの負け犬チームもの、金掛けたジェームズガン映画やな、という普通の感想に。随所にカッコいいシーンはあるものの、集大成的な大傑作というよりは、彼の色んな引き出しの詰め合わせ、という印象。>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

暗転とモノローグの多さには明確に異を唱えつつ、良い映画でした。私個人の記憶も色々呼び覚まされ、しっかり抉られたわけですが、それは置いておいて①2つのファミレスシーンの素晴らしさ②仮想現実としての東京、>>続きを読む

空白(2021年製作の映画)

3.3

病み気味の田畑智子が親として登場する冒頭に、初期の傑作「さんかく」からの連続性と時間経過を感じて少し嬉しくなった。しかし、「ペースがゆっくりな子」が無理に走り出した瞬間、嫌な予感が広がった。憎しみが連>>続きを読む

フリー・ガイ(2021年製作の映画)

3.0

ゼイリブ+ゲーム+ループもの。この手のトゥルーマン・ショー的な映画は、「LEGOムービー」がやれる事を相当やり尽くしてしまったと思っている。違う映画と比べても仕方ないが、目新しさは少なく、全然乗れませ>>続きを読む

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.0

I will not be silent.

見逃していた今年の話題作を回収中。面白かった。なんで劇場いかなかったのかと後悔。

▽リドリー・スコットの作風整理
決闘に取り憑かれた男を巡る「デュエリス
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偶然と想像(2021年製作の映画)

3.9

「モード家の一夜」のレビューで偶然について書いており、ロメールの事を考えていた。

村上春樹原作の大作を経て、よりセリフは鋭く、演出はクリアに、物語としてはポップで飲み込みやすい方向へ進化しつつある。
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ロード・オブ・ザ・リング(2001年製作の映画)

3.8

数年おきに見返している。フロドが自らの意思で歩き出し、サムがすかさず付いて行く。未知の世界を進む不安とワクワク感に満ちたラストシーンは未だに色褪せない。

・無数の選択肢と制約の中で、ピータージャクソ
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.2

エドガーライトの「スタイリッシュな」編集が苦手なのもあり、否定派です。

(バン、バンとリズミカルに映像を繋ぐ編集は本来飛び道具的に使われるべきであって、あまり多用されるとワンパターンに感じてくる。ベ
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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(1999年製作の映画)

3.8

ソシアルクラブのメンバーの人生とハバナの風景が描かれる前半はまったりと見ていたが、カーネギーホールでのライブのため、彼らがNYに降り立つ場面で熱量が上がった感じがした。

なぜなら、初めて訪れる土地に
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白雪姫(1937年製作の映画)

3.7

・短評。ほぼミュージカルで歌と動作が美しく連動。鏡を見て憎しみの炎を燃やす継母と、井戸の水を見つめる白雪姫の対比→王子の登場により水面が揺らめく。冒頭から鮮やか。

・森へ逃げるシーン、セル画と背景を
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セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

3.9

突然の事故で父を亡くした泉(薬師丸ひろ子)は、焼香に手を合わせるのが他の子供よりも遅れる。気丈に振る舞っているが、父の死を受け入れられておらず、火葬によって天に登る煙を直視できない。ブリッジの姿勢で煙>>続きを読む

激動の昭和史 沖縄決戦(1971年製作の映画)

3.9

・喜八作品にしてはややシリアス寄りな印象ではあるものの、やはりテンポは抜群。見る側がぎりぎり理解できる範囲、役者が台詞を言い終わるかどうかのタイミングでシーンを刈り込んでいく。2時間半、勢いは衰えない>>続きを読む