ウシュアイア

宇宙よりも遠い場所のウシュアイアのレビュー・感想・評価

宇宙よりも遠い場所(2018年製作のアニメ)
4.6
ごく平凡な女子高生が、行方不明になってしまった南極観測隊員の母をもつ同級生、民間南極観測隊に同行してリポートの仕事をすることになった女子高生タレントと出会い、バイト仲間の女の子を加え、4人で様々な苦難を乗り越えて南極へ行く、というお話。

海上自衛隊や極地研究所の協力を得て、南極への道のり、南極の自然環境、南極観測隊の生活などがガチでリアルに描かれており、また、
高校生が南極へ行けるわけがない、
と周囲からバカにされてもチャレンジする話でもあり、すべての人に勇気を与えてくれる作品だと思う。

特に印象的なのは南極に着いた主人公たちは
ざまあ見ろ、
と散々バカにされてきたことに対して叫ぶのだが、そこに大人も同調しているところである。観測隊の大人たちの苦労はあまりはっきり描かれていないが、同調する大人のセリフで大変さが伝わってくる。こうした細かい機微を盛り込んだ脚本は秀逸だった。

正直なところ女子高生がわちゃわちゃする系のアニメが苦手でほとんど観てこなかったこともあって、人間ドラマの部分で、うわー女の子ってすごい面倒臭い、と思ってしまった。

男の子が主人公ならば、登場人物のそれぞれが南極への想いを抱いて、困難を乗り越えて結束していく展開が予想されるのに対し、女の子が主人公の本作では南極で消息を絶った母を追いかけている報瀬には南極へ行く動機があるものの、他の三人は動機が弱く、むしろ南極への旅を通じて結束していく展開になっている。(南極レポートの仕事をすることになった女子高生タレントも最初は南極へ行くのを嫌がっている。)

少年漫画でも南極を目指す主人公たちを周囲がバカにする展開はあるだろうけど、陰険な嫌がらせや露骨な掌返しといったことまでの話はあまりない。

男の子と女の子では思考回路が違うことがよくわかる。

この話の主人公が男子高校生だったらもっと男の人の共感ポイントが多くなるとも思った。一方で、主人公を女の子にしたことで南極へのハードルが上がって意外性が増し、南極観測隊のかっこいい大人の女性を描くことができたと思う。

部分的だが報瀬や日向が少年漫画の男の子のような役割を担っているし、特に報瀬の立ち回りは男の子でも女の子でも成立して、男でも女でも共感できるポイントになっている。

女子高生わちゃわちゃ系のキャラクターデザイン、声優の演技が苦手でもいい作品だと思った。
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