ウシュアイア

Serial experiments lainのウシュアイアのレビュー・感想・評価

Serial experiments lain(1998年製作のアニメ)
3.0
ネットワーク端末「NAVI」が普及した世界で、主人公の中学生の少女玲音(れいん)の周りで怪奇現象が起こるところから始まるSFサスペンス。

話としては非常にとっつきにくい。ストーリーのメインストリームは玲音の主観で進んでいくので、そこに気づかないと置いてけぼりを喰らってしまう。話としてはネットワーク化が進んだ現代において玲音が何者なのかというところに着地する。

ただし、今やスマホ、SNSが一般化した現在からみると、NAVIというスマホのようなモバイル端末で接続したネットワークで悪意のあるデマや誹謗中傷が飛び交っている光景は、今や当たり前になっていたため普通にスルーしてしまった。しかし、この作品が約四半世紀前だったことを考えると、未来予測の正確さには驚かされる。

「集合的(無)意識」や「ネットワークと現実」がテーマになっており、インターネットが普及していないかった放送当時ではかなり先見性のあるテーマだったと思う。

「集合的意識」については作中でも言及があるように、宗教や文化因習といった形で今のインターネットが普及する前から人間が情報を伝達するようになった時点で生成されているものだし、「ネットワーク」も情報を伝えているインフラで現実の一部に過ぎないのだが、ネットによって情報伝達が高速化したことで、集合的意識や特定の考え方の影響は受けやすくはなったものの、新しく出現したかのような錯覚してしまいがちだ。こうした前提はちゃんと踏襲されていて良かった。

とはいえ、主軸で描かれる玲音の主観の世界はかなりパラノイアックで、正直気持ち悪い。観る人を選ぶ作品であることは間違いない。
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