ウシュアイア

鬼滅の刃 刀鍛冶の里編のウシュアイアのネタバレレビュー・内容・結末

鬼滅の刃 刀鍛冶の里編(2023年製作のアニメ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『鬼滅の刃』は簡単に言うと鬼にされた妹・禰豆子を人間に戻すため炭治郎が鬼を退治するという話で、その過程で鬼と戦う人や鬼になってしまった元人間の救済の物語になっているのが本作の魅力である。この『鬼滅の刃』のテーマ性が凝縮されていたのは、前シリーズの『遊郭編』であったと言っていい。遊郭編以降は大方のバトル漫画同様にラスボス戦に向けて戦闘力のインフレが起きて、力と力のぶつかり合いになっていく。折り返し地点を過ぎたあたりの位置づけが本作である。

これまではかまぼこトリオと呼ばれる炭治郎、善逸、伊之助に柱(味方陣営の幹部)が一人加わって、十二鬼月という中ボス1体に対峙するという構図が崩れ、炭治郎とこれまで絡みの少なかった玄弥と他二人の柱で十二鬼月2体と対峙する構図になっている。残る5体の中ボスのうち2体投入されているあたり、終結に向かってペースアップが感じられ、まさに最終決戦が近づいている感じだ。

ところが、本編で本格的に絡んでくる玄弥はキャラクター的には地味な上に暗い。柱のうち時透無一郎は身内が惨殺されたことにより失っていた人間性を取り戻して覚醒し、十二鬼月の一体・玉壺を討ち取るが、自己完結気味。また、敵方の玉壺、半天狗も同情の余地がなく、救済というよりも勧善懲悪になってしまっていた。また、話もそれほど複雑ではないにも関わらず、連載に追いついてしまっていたドラゴンボールZのごときテンポもイタダケない。そんな部分でやはり他のシーズンに比べるとストーリー的には盛り上がりに欠けていた。

間延びしていたストーリー部分を迫力ある映像と声優さんの熱演が補っていたので、飽きずに観ることができた。

特筆すべきは甘露寺蜜璃役の花澤香菜さんと玉壺役の鳥海浩輔さんだろう。
ふわっとした部分と凛々しさの二面性をもつ甘露寺蜜璃はなかなか難しい役どころだが、花澤さんがいかに唯一無二の声優かということがよくわかる。十二鬼月の中でも1,2位を争うグロテスクな鬼・玉壺を演じた鳥海さんもよくあんな演技ができたものだと脱帽。

次は柱稽古編らしいが、あれで1シーズンやるのかね。本来なら刀鍛冶の里と合わせて1シーズンでよかった気がする。
ウシュアイア

ウシュアイア