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漁師の一平爺さんに育てられたその少年は、トリトンという名で、幼い頃に海岸で拾われた子だった。緑色の髪を持つ彼は『海人』だと噂されていた。ある日、一匹のイルカが現われ、トリトンに出生の秘密を教えた。そんな時、漁村を海獣サラマンドラが襲ってきた。トリトンを狙っているらしい。海獣を倒したトリトンは、自分という存在を理解するため、海へと旅立つことにした。
イルカのルカーと共に海に出たトリトンは、そのまま老大海亀メドンのところへ連れて行かれた。メドンは太平洋城にある七つの渦の、その中心に住んでいた。メドンはトリトンの両親の形見であるほら貝をトリトンに渡した。受け取ったトリトンがそれを耳に当ててみると、「海の平和のために戦え」という両親の声が聞こえてくる--。
自分が置かれた運命を早く解き明かしたいと願うトリトンは、ルカーの制止を振り切り、単身、大西洋へと向かってしまう。その大西洋では海を支配するポセイドン族がトリトンを待ち構えていた。彼らの罠にはまったトリトンは、海の墓場でポセイドン族の幹部で北太平洋司令官ドリテアと戦うことになる。はじめての本格的な戦闘にトリトンは苦戦を強いられたが、メドンが犠牲となって救われた。トリトン族はかつてこのポセイドン族によって滅ぼされたのだが、まだ生き残っているものもいるらしい。トリトンとルカーは仲間を求め、北の海へと向かった。
北海に着いたトリトンとルカーは老アザラシのプロテウスと出会った。彼は同じトリトン族の娘を育てているという。会ってみるとそのピピという子は、人魚だった。しかもピピはとても気難しい女の子。トリトンとは最初から衝突してしまう。そんな時、北の海を支配するミノータスの部下デモラーが襲ってきた。
デモラーを倒したことでトリトンはアザラシたちの英雄として称えられた。しかしピピはそれがまた気に入らない。そんなピピがミノータスの部下、ユニコンにさらわれてしまう。トリトンはアザラシたちと共に救出に向かうのだが、ミノータスが吹き起こす冷気に当てられ、アザラシたちは全滅してしまう。トリトンはミノータスを倒そうとするのだが、ルカーに制止され、仕方なく救出したピピを伴って南へと向けて脱出していった。
トリトンたちは南太平洋上にあるイルカ島を目指していた。ポセイドンは南太平洋司令官、ポリペイモスに命じてトリトンたちを追跡させた。ポリペイモスは音波を武器とする巨大提灯アンコウでトリトンたちを攻撃する。応戦するトリトンにイル、カル、フィンという三匹のイルカが加勢してくれた。三匹の囮作戦が功を奏し、トリトン一行は辛くも難を逃れた。
赤道直下にあるイルカ島で暮らすことになるトリトンとピピは、しかし喧嘩ばかり繰り返していた。トリトンに馴染めず、しかも北の海を忘れられないピピはひとりイルカ島から飛び出してしまう。そんなピピに大海蛇のリューダが襲いかかってきた。ピピを探しにきたトリトンは、大海蛇に向かってオリハルコンで出来た短剣を突き立てた。
トリトンはイルカ島の近くにある島の少年、ブッチャと知り合った。ブッチャはトリトンを自分の島へ連れて行くのだが、赤いマントを身にまとったトリトンの姿を見て、ブッチャのおじいさんは驚きの声を上げ、そしてトリトンに島を出て行けと追い立てた。この島には赤いマントを身につけたものが現われると、島に大津波が押し寄せる、という伝説があったせいだ。そして伝説どおりに大津波がやってきて島を海中に沈めてしまう。それはトリトンを狙うドリテアからの攻撃だった。
イルカ島の近くに出現した幽霊船に興味を持ったトリトンは、ピピの制止を無視して、その不気味な船に乗りこんでみる。そこでトリトンが出会ったのは、ポセイドンの魔力によって吸血鬼にされてしまったカミーラだった。カミーラは血を求めてトリトンに襲いかかるのだが、トリトンが持つオリハルコンの剣の輝きがカミーラにかけられた魔力を消し去った。カミーラの魂は救われ、彼女は静かに永遠の眠りについていった--。
相変わらずトリトンとピピは顔を会わせれば喧嘩ばかりしていた。イル、カル、フィンはそんなふたりに心を痛め、何とか仲良くさせようと「歌う島」にふたりを案内する。そこはとても楽しい場所なのだが、トリトンとピピはここでも喧嘩。ピピは先にひとりで帰ってしまう。トリトンはピピがイルカ島に戻っていないと知って、慌てて彼女を探した。やっぱり喧嘩ばかりしていてもピピのことを放ってはおけないようだ。
襲い来るポリペイモスにトリトンは苦戦を強いられていた。しかしポリペイモスに手柄を奪われてはたまらないと思ったドリテアがトリトンを救出する。そして改めてドリテアはトリトンに戦いを挑んでくる。海の墓場で熾烈な戦いを繰り広げたふたりだったが、トリトンの剣がついにドリテアを倒した。
北太平洋司令官のドリテアがトリトンの前に敗れ去ったと知ったポセイドンは烈火のごとくに怒りを爆発させた。ポセイドンの放った怪光線は、地底のマグマを揺り動かし、イルカ島は大爆発の末に海底へと没して行った。
からくもイルカ島の大爆発の難を逃れて脱出したトリトンとピピは、遠くの弧島に打ち上げられた。しかしルカーとはどうやらはぐれてしまったらしい。ルカーの無事を心配するトリトンたちの前に海綿巨獣バキューラが襲いかかってくる。トリトンはバキューラが太陽に弱いと見て取り、オリハルコンの輝きで倒せるのではないかと考えた。
ルカーを探すトリトンとピピは旅のイルカたちと出会った。そのイルカたちからトリトンは彼の両親らしい人物についての噂を聞かされる。そんな折、打倒トリトンの意に燃えるポリペイモスの手下たちが襲いかかってきた。
大西洋を目指すトリトンとピピはほら貝の音が聞こえるのに気づき、音へと向かって進んでみた。やはりほら貝を吹き鳴らしていたのはフィンだった。フィンとの再会を喜ぶトリトンだったが、そこへ太古の恐竜が姿をあらわす。恐竜もやはりフィンの吹くほら貝の音に引き寄せられてきたらしい。仲間の声と思ったのだ。そんな恐竜と親しくなるトリトンたちに、ポリペイモスの手下たちが襲いかかってくるが、トリトンはこれを撃退する。ポリペイモスの度重なる失敗をポセイドンは許さず、部下のマーカスに命じて、ポリペイモスを処刑した。
ポセイドンはドリテアとポリペイモスを失い、代わりにレハールを全太平洋地区司令官に任命した。光と影を自由に操る力を持ったレハールは、海上に幻影を作り出してトリトンとピピを海底洞窟へと誘い込む。しかしトリトンはレハールの罠から脱出していく。トリトンとピピはルカーに再会し、容赦のないポセイドン族に、怒りを新たに大西洋へと向かって行く。
トリトンたちの行く手を遮るように突如、海底火山が爆発した。もちろんポセイドンの企んだことだ。この爆発に巻きこまれて海底資源を調査中の科学者が負傷してしまう。トリトンはこの老人を助け、近くの島へと運んで行く。この島もやはり昔の海底火山の爆発によって出来た島らしい。トリトンと老学者はこの島の洞窟でトリトン族の歴史を記した壁画を発見する。興奮するトリトンだったが、またしてもポセイドンが襲いかかってきた。ポセイドンは再び島を爆発させ、遺跡を破壊すると、老科学者の命までも奪っていくのだった。
巨人タロスは永い眠りから目覚めた。ポセイドンがトリトンを倒すために彼を目覚めさせたのだ。ペンギンたちの守り神であって、決してポセイドン族の仲間というわけではないタロスだったが、自分を復活させてくれたポセイドンにその恩を返さなければならない。タロスはしぶしぶながらも大西洋を目指すトリトン一行の前に立ちはだかった。その戦いのさなか、ピピとフィンがレハールにさらわれてしまう--。
ピピとフィンを救出するため、大西洋行きを一時断念してトリトンは太平洋へと引き返した。そのトリトンを待ち構えていたのはレハールによって甦らされた白鯨だった。白鯨と戦うトリトンに思わぬ援軍が現われる。それはかつて白鯨を倒したことが自慢のロレンスと、そんな父を誇りに思っているギルティだった。この親子は村の連中から白鯨を仕留めたなんて嘘だと思われていたので、自らの腕を証明するため、蘇った白鯨にもう一度挑むのだった。
海グモの牢獄。そこにピピとフィンは囚われていた。そこには海グモのほかにヘプタポーダというポセイドン族の一員が待ち構えている。ヘプタポーダはトリトンを倒せば輝く太陽のもとで暮らさせてやると約束されていた。輝く太陽。ヘプタポーダはそれに憧れていた。しかしトリトンと戦ううちに、本当の太陽は空にあるのではなく、自分の心の中に輝いているのだと気づき、ポセイドンを裏切ってトリトンに加勢し、海グモの牢獄から脱出せてやるのだった。
海グモの牢獄から脱出するヘプタポーダとトリトンは、レハール率いるゲルペス連隊に出迎えられた。さらにレハールは幻影で半魚人の群れを作り出し、トリトンと戦わせた。幻の軍勢を相手に苦戦するトリトンたち。ヘプタポーダはレハールに倒されるのだが、トリトンのオリハルコンの剣の放つ輝きによって、その邪な目を潰され、永遠に海底の闇の中をさまようこととなった。
レハールまでも失ったポセイドンは、作戦参謀のレネウスにトリトン抹殺を命じる。しかしレネウスは自分では出撃せず、インド洋司令官のブルーダにトリトン攻撃を指令した。指令を受けたブルーダは、死神アーモンにトリトン抹殺を命じた。そんなポセイドン軍の慌しい動きなど知る由もなく、トリトンは大西洋を目指していた。途中、怪しげな島を発見して上陸したトリトンたちは、その島こそがイソギンチャクの化け物、死神アーモンだと気づき、壮絶な戦いを展開する。
ヘプタポーダの遺書に目を通したトリトンは、太古の昔から生き続けているラカンと言う名の不死身の魚がマダガスカル島沖にいると教えられる。トリトンはそのラカンと出会い、話を聞いた。すると、トリトン族は満足に武器も使えない状態でポセイドン族に滅ぼされたと聞かされる。ポセイドン族への怒りを新たにするトリトンの前に海ムカデのセイノス軍が襲いかかってきた。
ラカンは地中海を抜けて大西洋を目指せとトリトンたちに忠告した。しかしその行く手にもポセイドン一派が待ち構えていた。今度の敵は分身怪物のガダルだ。
辿り着いた地中海でトリトン一行を待ち受けていたのは、ゴルセノスの海底洞窟だった。その洞窟の中に飲み込まれてしまったトリトンは、見渡す限りの砂漠に落とされる。ゴルセノスはオリハルコンの探検を逆に利用し、そのきらめく輝きでトリトンから視力を奪った。その上で、砂でできた分身を使ってトリトンを襲わせる。トリトンは必死に防戦するのだが・・・。
トリトン一行はようやく目指していた地中海に辿り着いた。しかし次々に仲間を倒されたポセイドンは、捨て身で攻撃を仕掛けてくる。トリトンたちはポセイドンが巻き起こした巨大な渦巻きに巻き込まれ、そのまま魔の海へと引き込まれてしまう。魔の海ではミノータスとその弟のマイベスが待ち構えていた。トリトンは旅のイルカたちの援軍を受けてこのふたりの怪人と戦う。ミノータス兄弟を打ち負かしたトリトンの前には敵の本丸、ポセイドン神殿があるだけとなった。
トリトンたちはポセイドン神殿へと乗りこんだ。いままでの旅の過程で知り合った多くの仲間たちが一緒だった。ポセイドンと対決するトリトンの持ったオリハルコンの剣の輝きによって、巨大なポセイドン神が動き出し、その勢いで神殿は崩れ落ちる。神殿の真下にあったポセイドンの海底都市も崩壊する神殿の下に押しつぶされていった。トリトンはポセイドン族に勝利した。そして過去に何があったのか、そのすべてを知る。ポセイドン族もトリトン族もかつては同じアトランティス大陸で共存していた仲間だったのだ。それを知ったトリトンの想いは複雑だった。トリトンは仲間たちに別れを告げ、いずこかへと旅立って行った--。