『平家物語』は驕れる平氏を源氏が滅ぼす物語という認識であったが、なんと浅い理解であったことを思い知らされた。『平家物語』は栄華を極め滅亡していく平氏一門の人々の思いを伝えた物語なのだ。
本作は『平家物語』のエッセンスに立ち返り、軍記物語とはいえ、戦のシーンよりも平氏一門の人間ドラマが中心となっている。
頭領を父清盛から引き継ぎ、驕れる清盛を案じ、平氏一門の未来を憂いた平重盛、舞や笛を嗜む優しい心持ちと武士の本懐の間で苦悩する維盛・清経・敦盛、戦いの中で南都の寺社を焼いてしまった重衡、生家の平家と輿入れした朝廷との対立に苦悩する平徳子など平清盛＝平家一門ではないことがよくわかる。
平家一門の武士以上に、平家の興亡に翻弄された平徳子が中心に描かれているように思えた。山田尚子監督、吉田玲子脚本という、製作スタッフが女性が中心となっていることもあるのだろう。
軍記物語とはいえ、戦いがあっさりしていて従来の平家物語観で観ていると、やや物足りなさを感じる。義経が活躍するこれまでの平家物語とは違うもので、これはこれで良いと思う。
やはり平重盛役の櫻井孝宏さん、平維盛役の入野自由さんはうまい。あまりメインキャストでお見かけしないが平重衡役の宮崎遊さんも印象的だった。
