ウシュアイア

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ないのウシュアイアのレビュー・感想・評価

4.2
思春期症候群-思春期の少年少女の特有の複雑な思考や感情によって引き起こされる超常現象は新しいようで概念としては確立していなかったものの意外と歴史がある気がする。お年頃の男の子や女の子が主人公のSFは、主人公の屈折した感情や思考とリンクしているからだ。例えば、『世にも奇妙な物語』の『友子の長い夜(朝)』とか、『イグアナの娘』とかも思春期症候群の概念にあてはまってしまう。

ラブコメ系ラノベが原作のアニメは『涼宮ハルヒの憂鬱』を挫折して以来だが、完走。ラブコメ系ラノベ特有の「萌え」とか「ツンデレ」が強調されたキャラとか、軽妙な会話などのお約束はともかく、本作のメッセージ性はつきささるものがある。

本作で出てくる思春期症候群の克服は一貫して「自分の気持ちに正直になること」がカギになっている。本作で取り上げられているが、学校を支配している空気、他人の目を気にしてぼっちになりたくないという気持ち、男女の友情と恋愛感情の葛藤、といったことから解放されて、自分の気持ちに正直になるってやっぱり難しいってのは思春期を遠く昔のことになった大人でも共感できると思う。

一方で、咲太のいざというときの男気は女性向けとして、ある意味自分の気持ちに正直に生きる咲太のまさに「ブタ野郎」にふさわしいゲスな本音も男性には共感できるところが多い。とはいえ、過度な「萌え」とか「ツンデレ」とか「ドSキャラ」も男のゲスな妄想の産物。だから面白い。

とはいえ、最後の「かえで編」は少し残念。花楓の記憶喪失は超常現象でもなんでもないし、唐突に現れた大きな翔子はイマジナリーフレンドとしてただのヒューマンドラマに落ち着いてしまった。続く映画で明かされるであろう翔子の謎の伏線エピソードだったのだろうか。
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