スパイもののテレビシリーズとしては、スリルもアクションも驚きの展開も平均点くらいかなと思う。
ただ『テヘラン』についてはイスラエル制作ということが大きな特徴であり魅力だと思う。

個人的にイスラエルのドラマを見るのは初めてだし、イスラエル（モサド）とイランとの間の諜報合戦をドラマを見るのも初めて。
このよく知っているとはいえない両国を舞台にしていても、登場人物たちの心情はちゃんとわかる。
両国とも家族や恋人を大切にする人々がいて、裏切り者がいて、デモをする人たちもいることが、いろいろ知らないからこそ新鮮にも見える。イスラエル制作だが、イラン側の人々も丁寧に描いているのもいい。

知識不足のせいで背景がよくわからず、展開が見えにくいが最終盤の追い込みは見事だったと思う。

イスラエルの諜報活動を舞台とするドラマでは、良作シリーズ『ファウダ』がある。主にパレスチナを監視対象の話が多い。イスラエルの諜報機関の雰囲気やイスラエル人やこの地域の人々の気質やモノの考え方が見えてくる。彼らの価値観や宗教観を知るうえで参考になる。

さて、本作はイスラエルの諜報機関モサドがイランに核開発を止めるための破壊工作を緻密に描くものだ。
『ファウダ』は銃撃戦や爆弾などでドンドン捜査官が死んでいく。バイオレンスなシーンが多く、絵的にも飽きさせない。

一方、本作は女性ハッカーが主人公なため、派手な銃撃戦や肉弾戦はあまりない。暴力が見せ場なのではなく、敵に追いつ追われつの緊迫感をウリにしたいのだろう。拷問シーンも『ファウダ』のように荒っぽくない。

全８話あるため、展開が多少もたついている。地味な諜報活動の中で起こるちょっとしたミスやディスコミュニケーションで危機が訪れるという流れなため、激しい諜報戦を期待していると肩透かしを喰うかも。

シーズン１の最終話はクリフハンガーで終えたので、次回作が気になってしまう。まあまあの佳作だ。

中東事情はあまりわからないけど面白かった。
でももっと派手な場面も欲しかった。