真田ピロシキ

幽☆遊☆白書の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

幽☆遊☆白書(2023年製作のドラマ)
3.8
予算があるって最高だなーーーネトフリ資本があれば日本でだってこのクオリティのアクションをドラマで撮れるのだ。動きが半端ない。映画の『るろうに剣心』や『キングダム』以上かもしれない。第一話で魔界虫に取り憑かれたいじめられっ子の桐野くんを相手取るところからして壁を蹴り上げたり多彩なアングルで撮られて忙しい。それ以前に桐野くんが学校のクズどもに暴力を振るわれてる時点で大変痛みの伴う暴力表現。もっと言うと幽助がトラックに轢かれるシーンが見たことないガチ味で交通事故で親しい人を亡くした人にはトラウマものじゃないのか。注意書きがいる。名もなき妖怪でこれなので、名ありキャラになると止まらない。4話の鴉と武威が最高潮。ここでは鴉の爆弾や蔵馬の魔界植物、飛影の黒龍波など様々な必殺技が乱れ飛ぶが、そういったCG技より通常の肉弾戦にこそ血湧き肉躍る。特にここの蔵馬はローズウィップを駆使しながら三次元的に縦横無尽と動き回り、その様子はスパイダーマンやスキルを解放し切った大作アクションゲームのようだ。マンガのキャラクターなんてバカげたものなのだから、こういう生の動きで本気さを見せてくれないと入り込めない。その点で妥協するどころかここにこそ心血を注いだ本作は大正解。

物語は大きく圧縮されている。しかしこの漫画はドラゴンボール系譜のインフレとトーナメントの漫画なので、それを実写でご丁寧に再現しても幼稚でしかない。ランドウも朱雀もトーナメントもダラダラやる必要はない。桑原が強くなり戦う決意をする過程や飛影を仲間にする展開を完璧とは言わないにしても上手く脚色されていて、漫画のトレースを求められるアニメより良い仕事をしてるとさえ思える。ドラマで活きているのは幽助のキャラクターで、自分は子供の頃からコイツに何の興味も持ったことがなかったのに、この実写版での強きを挫き弱きを助ける概念上の不良っぷりはカッコいいねえ。オリキャラ(だよね?)の桐野くんの小さいが芯の強さを見定めて魔界虫からの支配を脱させようとするとこなんか泣きそう。桐野くんが本当に僅かだが抵抗できてるのがまた素晴らしい。こんなモブ同然のキャラでも無力じゃない。何気に桑原の決意を固めさせるのにも貢献してる。

それと幻海師範。出番はとても減らされているが物語に託したものは大きい。魂を売って永遠の若さを持つ戸愚呂に言う。「アンタの頭は戦いばっかりだ」。戸愚呂が下衆の兄者と違って方便とは言えエイジズム全開のマッチョ野郎なわけじゃん。コイツは言わば成長するのを拒んでる奴で、それに対して成熟して次代に託していく幻海に漫画をリアルタイムで読んでいた自分などはあるべき大人の姿を見て取れる。いつまでも少年から卒業できない逆コナンな大人が多い今では、概ね同じ話でも実写である程度対象年齢層を上げた内容にしたことに意義を感じられた。

幽助や桑原などの一部以外はコスプレくさい人が多いが、それは致し方がない。遠藤賢一の怪演が光りすぎてる兄者のように、役者の演技で格好のチープさを補えているのもありそこまで気にはならない。ただ最終回は完全にジャンプバトル漫画に傾いて退屈だった。これはONE PIECEのように物語のテーマに広がりがなかったからどうしようもない。続けるなら次の仙水が妖怪より酷い人間の醜悪さを突くはずなので、話数を増やし脚色も大いに加えて徹底的にやって欲しい。雪菜が受けてた仕打ちや蔵馬と母の関係など掘り下げることができたのなら、少年漫画原作ドラマの枠を超えられるかと思う。結構期待している。