真田ピロシキ

ONE PIECEの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ONE PIECE(2023年製作のドラマ)
4.0
原作は10数年読んでいない。ハンコックが出た辺りまで。超有名タイトルなので読んでなくても少しは情報が入ってて、ローやジンベエやうっせえわなシャンクスの娘の存在くらいは知っている。漫画実写化にも色々あるが、日本製作でも成功したるろうに剣心やキングダムのように現実に寄っててやりやすいものもあれば、かつてのドラゴンボールみたくどうすりゃいいんだってものもある。ワンピースは間違いなく後者だが、これが高い理解度と真剣さで良く表現されていた。予告を最初に見た時にルフィの原語版ボイスがどこか田中真弓に似てると感じられた時点で期待できそうと思わされてた。

予感は的中して特に最高なのが真剣佑のゾロ。別にゾロは大して好きなキャラでもなかったのだが、動けるイケメンがあの野暮ったいが情に篤い折れない男を演じればカッコ良すぎてこのドラマ最大のお気に入りキャラに。他の麦わらも各々の魅力を的確に描かれていて、ルフィへの信頼感が最初からとても高いサンジは女好き設定はちゃんとあるのにゾロと並んでBLに行きそうな雰囲気すらある。ムキムキな裸も見せる。ルフィの恐るべき人たらしよ。ナミも根の良い不良娘だし、ウソップはもう少し見せ場を作って欲しかった気持ちはあるが、原作ほど天然じゃないルフィはウソップのホラにも乗っかる優しさを見せてて、全体的に麦わら一味の人間味を引き出すキャラとして好演。何気にウソップも腕は太い。射撃の名手らしさか。

最初に書いたように原作を随分読んでいないが情報は少々入っていて、そうした後の展開を取り入れて再構築したと思われる。バギーは今では四皇の1人らしくて、シャンクスと共に元ロジャー海賊団の一員として海賊王を目指している野心家の姿が描かれる。魚人幹部のクロオビにすら勝てないようにあまり強くはないのにデカい野心は持てる奴。良い夢追い人。ビジュアルが同じ道化のジョーカーに寄せられてて、ここ10数年でいくつも実写ジョーカーが作られた蓄積でか自然に受け入れられるものとなっており、ジョーカーでもダークナイト版に見られるようなカオスの権化気取りの奴らではなく昔のアニメイテッドシリーズにあったような酷い奴だがコミカルで強すぎない良い塩梅とされており作品のトーンに似合ったキャラである。

また原作では反差別テーマをハッキリ打ち出しているようになったことも聞いていて、それをアーロンに代表する魚人族。バラティエのウェイターに魚人がいて乗り込んだアーロンは「人間に仕える魚人」と憎々しげに睨み、魚人蔑視で失言をしたネズミ大佐に七武海入りしたジンベエを持ち出されて差別などしてないと弁明されても「アイツは人間に媚びた裏切り者だ」と怒りを露わにする。戦闘中のルフィに俺は差別しないと言われても「お前の気持ちなんか知るか」と突き放すのに被差別集団の怒りと恨みと失望が籠っている。アーロンが極悪人のクズなのは間違いないが、そうさせたものは何なのかが刺さる。蜂起を促すアーロンは魚人に取っては英雄。この辺は下手こくとガンダムオタクが正義も悪もないと言うような無意味な相対主義になってたが、ルフィの「人を利用する奴は許さねえ」でモーガンやクロから連なる悪党としてきっぱりアーロンを否定しているのでそうならなかった。真摯な物語作りをされてるよ。

このマンガ度100%のビジュアルでコスプレドラマなのにちゃんと世界観に真剣味を持たせられているのが凄いところ。「技名を叫んだ方が強そうだろ」と言う少年漫画お約束への目配せをルフィとサンジにやらせる一方で、ゴムゴム技や三刀流はあまりやりすぎると滑稽さが増すからかここぞと言う時に取っておくバランス感覚。早々にバロックワークスを出してるので打ち切られなければクロコダイルまでは確実。バロックワークスで驚いたのは最初にゾロのスカウトにやってきた奴を真っ二つにしていて死なない漫画としてワンピースを認識していたので思わず巻き戻しするくらい驚いた。メリーさんも絶対死んでるよなと思いながらもなかなか確信が持てず、明確に述べられて実写ワンピースの世界観がハッキリする。これならアラバスタの鳥の人は普通に死ぬだろうな。ワンピースをヌルい漫画と思ってた人にも安心。シーズン2を期待してる。