真田ピロシキ

マスクガールの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

マスクガール(2023年製作のドラマ)
4.5
呪いの話。本当は誰も悪くなかったはず。強いて言うなら作中で1番上の世代が種を蒔いた。モミの母は娘を不器量さだけで冷たく突き放し、キョンジャは孤独で薄暗い世界に落ちるしかなかった息子のことを何も見てはいなかった。そうやって歪まされた世代が憎しみと死の螺旋へと雪崩れ込む。

息子の復讐に燃える信心深い悪魔という形容が相応しいキョンジャの姿。ところどころ心が揺れるのだが、息子の変態性はどうしても認められない向き合えなかった。この人は超越したヴィランではなく平凡な人。讃美歌を歌いながら追いかけるのは大いなる存在を幻想でも感じなければこんな行動はできなかったのだ。哀しい人だ。その息子は所謂弱者男性。日本の二次元エロコンテンツをわざわざ日本語で喋りながら愛でてるのがHENTAIジャパンに対する明快なメッセージとして刺さる。見返りを求めた時点でただの弱者男性なんだよ。

4話の容姿に恵まれなかった者同士の連帯がルッキズムのみならずシスターフッドの物語としても輝きを見せる。女性に限らず傷ついた人同士で手を合わせることができたのならば世界は少しはマシになるんじゃないかなあ。そのテーマは次の世代ミモにも受け継がれて結末へ。凄惨ながらも救いは最後の世代であるミモを娘を愛さなかった祖母もモミも復讐のために近づいていたキョンジャでさえ殺そうとしながらも好いていたことで、私ら大人世代の抱えている腐った価値観を葬り去らないとという意思を感じた。

復讐劇としても面白かった。登場人物にケレンと同時に真実味を感じられる。刑務所で踏みつけられても諂わないへこたれない相手が折れるまで立ち向かうモミのカッコよさよ。キョンジャは血も涙もない復讐鬼に見えてミモには育て方を失敗した息子のこともあってか情が移って葛藤している。突飛な話であるがこういうところに深みがあるから冷めることがない。舞台も登場人物も嘘くさくてバカバカしかった映画『悪魔を見た』なんかよりずっと面白かったよ。ネトフリ韓国ドラマも最近は外れが多いと思っていたが、今回は大当たり。全7話のリミテッドシーズンなのも良かった。やはり続き前提のアメドラ手法は取り入れないのがいい。