ゴトウ

ムショぼけのゴトウのレビュー・感想・評価

ムショぼけ(2021年製作のドラマ)
3.0
個人の一方的な語りは(例えお涙頂戴の体でなくとも)都合の良い物語として再構成されていることには注意する必要があるし、それがアウトローによるものであればなおさら。作中の宗介は最後まで素朴な距離感でインターネットに接していたけれど、一時ブームになっていたアウトローYouTuberや、怪しげな「裏社会」情報を発信するインフルエンサーのように悪どく使おうと思えばいくらでもできる。HIROのようなフカしの間抜けを「YouTuber」として設定するのも、宗介の「真っ直ぐでウソがつけない不器用な男」みたいなある種美化されたヤクザモノ像を演出しているように見える。…というフリも効いているので、突然の総集編→最終回の畳みかけにはやられた。出所してきたばかりのどこまでもええかっこしいな男が、改めて生き方を反省する畳み方は納得感もあった。

小さい頃の自分とケンカするくだりとかはノスタルジックでストレートに泣けたし、いとも簡単に命が失われるシャバに戻ってきたことを宗介がイヤというほど実感させられる(しかも宗介は命を奪う側に立っていた)展開も、そこまで天真爛漫なリサに翻弄されるおじさんとして描かれてきただけに衝撃的。子どもが案外勝手に大きくなっているのもあり、ちょっとしたきっかけで落ちていく仲間たちが宗介の前途を暗く示唆するようでもあり、何気なくドライな部分も多かった。

宗介に感情移入すればするほど、「宗介」を描き出した元ヤクザの(つまり沖田臥竜の?)物書きとしての老獪さ、というかウソ臭さも感じざるを得ないのですが、こうしてポップなものとして味わっている分には楽しかった。板尾が冷や水をかける役としてずっといたのも、最終盤でもう一段ひっくり返されるまでのいい振り。軽薄だけど成功してるフカシ野郎、九条ジョーはハマり役でした。
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