ゴトウ

時をかけるな、恋人たちのゴトウのレビュー・感想・評価

時をかけるな、恋人たち(2023年製作のドラマ)
3.9
30分番組でダサカワ的なビジュアル、お気楽コメディかと思いきや、たまに落涙してしまう回もあった。観る側も(少なくともなんとなくのノリでなら)航時法だのタイムパラドックスだのが当然のように出てくる作劇を理解できるようになっているからこそ、地上波連ドラでも細かい説明を省略できるのかな。漫画っぽいノリの設定が当たり前になって、いまやバラエティ番組で(誤用込みで)「世界線」「タイムリープ」「マルチバース」あたりのワードが飛び交っているし。

ついつい一歩引いて辻褄合わせ(自分の気持ちに蓋をすることの正当化)してしまう主人公が、避けられない時間の強制力に逆らおうとする流れは『エヴエヴ』的というか、未来なんか大枠で見えてるかもしれないけれど、それでもそれを少しでも良くしようとする生き方を描いているようにも思えた。並行世界やタイムトラベルといったSF設定が、自分はそんなキャラじゃないから、とか、どうせ結果は見えてるから、とかいうような卑近な感情を浮かび上がらせる。結果たどり着くのがありきたりな結末であったとしても、そこまでのあがきに意味があるし美しい。最終話までのアホっぽい衣装や仕草の多さと相まって、普通のラブコメみたいな公園での再会の場面で吉岡里帆がめちゃくちゃかわいく見えるんですよね。そこに至るまでのドラマがあって、たくさんの辛いことや別れを経験した廻が最後にベタベタなラブコメにたどり着くのが泣かせる……。

隅々まで理解して観てはいないし、結局辿り着くのはベタな話ではあるのだけれど、細かいタイムパトロールの理屈はやっぱり必要で、そういうディティールを蔑ろにしていないのも好感が持てた。ダサカワ衣装とか未来語の遊びは土台がしっかりしててこそだよね…。瑛太のフニャフニャした感じが、現代とは違う文化で生きている人として説得力があった。伊藤万理華も同じで、記号的になりそうなキャラクターだけど伊藤の演技で生き生きして見えた。なんか気になるな、と思うと元坂道グループで今女優の人なんだ…というパターン多いかも。

『サマータイムマシンブルース』、もう一回観直さないといけませんね。
ゴトウ

ゴトウ