ゴトウ

コタツがない家のゴトウのレビュー・感想・評価

コタツがない家(2023年製作のドラマ)
3.7
番宣のされ方とか、オープニングの歌の「私が食わせたる」みたいな歌詞とかで、「パワフルで何でもできるスーパー妻」のために周りの人間が支離滅裂な行動をする系のドラマなのかな?と思っていたけれど、コメディタッチで「家族道徳の呪縛」的なものを描いていてなかなか見応えがありました。

小池栄子がハマり役で、キレ方とか、本当におばさんが怒ってるみたいな怒り方で説得力があった。とにかくよく泣く主人公、誰かが助けてくれるわけでもなし、夫や子どもが憎いわけでもなし、それで許せるはずもなし……という状況で、悲しくなって泣いたりホッとして泣いたりする。それでも翌朝には、気まずいながらも「おはよう」と挨拶を交わせるのが家族の素晴らしさともいえるし、呪いともいえるでしょう。それだけしんどくても結婚(ロマンチックラブイデオロギーを前提にした人生の一つのスタートでありゴール)の後押しをする仕事に対して疑問を持つ様子はない万里江。なぜ結婚生活が長続きするのか、と問われた遊策が出まかせで語ってみせた(そのあと一瞬で翻した)ように、「素晴らしいものだから」「そこに愛があるから」などという生やさしいものでは説明がつかない。もちろん家族の間に親愛の情があるにせよ、やはりそれは呪縛のようなものなのかもしれない。説明つかないけどこうやって生きるんだ、ときどきは楽しいこともあるんだ!という力技解決はある種の誠実さにも見えた。でもまあ、地獄とわかりつつたまには幸せなこともありますよ!でやっていけるのは会社社長でガッツリ稼いでるからであって、10年何も描いてないような漫画家がヘラヘラ暮らせるのも、そいつと公私共に時間割いて親しく付き合える出版社社員も、経済的な余裕がないと成立しないライフスタイルで生きてるよね。と、奈良美智や矢野顕子まで巻き込んだ経済基盤論争を思い出しもしてしまいました。

キャリアがクソ長いのはわかるけど、あれって上手なの?と疑問に思っていましたが、吉岡秀隆はカリカチュアライズされたダメ夫にバチハマりしていてよかった。「10年以上新作を描いていない、実質ニートのダメ漫画家」まで突飛な設定にして初めて納得できるレベルのフニャフニャぶりっ子具合でしたけど。気の良いおじさん役でドラマ仕事が回ってきて、しかも小林薫とツーショットが一番多いマシンガンズ滝沢の大出世にも感動。ただ野々村友紀子は役者仕事向いてないと思いました!
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