ゴトウ

ONE PIECEのゴトウのレビュー・感想・評価

ONE PIECE(2023年製作のドラマ)
3.0
意外とおもしれェ‼︎‼︎何やっても文句言われるの確定の実写化をなぜやるのか…は置いといて、これくらいのハイクオリティでやってくれるなら楽しく観られます。こうやって語り直しすると、作り手側が大事だと思ってる部分とそうでない部分とが浮き彫りになったり、今思うとキツい…みたいなところが軌道修正されてたりするのも面白い。リアリティラインはマンガ寄りで割り切って、生身の人間がやってると不自然に見える部分以外は切る!これだけやってくれてればある程度の文句は抑えられるんです…漫画原作邦画とは予算が全然違うだろうから、比べるのも酷ですけどね。

ゾロとナミの関係性とか、サンジの女好き度合いとか、刺さる人にはブッ刺さること間違いなしの公式二次創作もあるので、作り手のONE PIECE観、麦わらの一味観がハデに出ていて良い。特に初期のルフィはデカい敗北も特になく、名言こそ吐くが底が知れないところもあった。目が黒い点一個で描かれているのも得体の知れなさを増幅していたのだけど、さすがに生身の人間が演じているとそれは難しいし、「実写ドラマがONE PIECE初見です」という人(いるのか?)以外は後々ルフィが挫折したり、ヨレたりすることもわかっている。それもあって、ルフィに年相応に浮き足立ってオロオロする感じもあったのが新鮮だけど違和感なく受け入れられた。

メリーの死がカヤの自立の契機として歓迎されているという話を聞いて、アメリカ的価値観を通して見るとワンピースのここはいらないんだ〜という楽しみ方もできる。ココヤシ村のみんながナミの村買い戻し計画を知らないことになってるのとか、大人は子どもを守るもの!という規範が強いのかな。確かに子どもが泥棒してるの黙認はまぁまぁ渋い。子ども連れてる成人というのが犯罪くさいからウソップ海賊団は丸々カットされたのかもね。

セットや小道具は割合ファンシーな仕上がりで、変に実在するものに寄せたりして「リアル」な仕上がりを狙っているわけではなさそう。この辺りは好みが分かれそうなポイントだった。テーマパークのアトラクションっぽいというか、ウソくさいとかいうツッコミすること自体がヤボで、わかった上で楽しむことが求められている感じ。ユニバのウォーターワールドで命の危機まで感じるわけじゃないけど、まぁそういうもんだよね〜と思って話を聞いているとか、ディズニーランドのカリブの海賊で「汚ねぇ手を船から出すとぶった斬られるぞ」と言われても怖くないけど手は出さないとか、そんな感じ。テーマパークの中っぽいので、「この人がルフィってことね」くらいの目で見ておく必要はある。ウロウロしてる人を衣装からして「あ、アラジンね」とか「ジャック・スパロウね」とか思って見るのと同じ(ナミ役のエミリーラッドはディズニーワールドでベルやウェンディ役をやっていたらしい。海外にも2.5次元俳優みたいなジャンルがあるのだろうか)。ただ刀で戦うやつがいるとその戦いを描くのはどうやっても避けられないので、マンガやアニメでは割合うやむやにされている「刀で人体を斬りつけて殺害している」というのが浮き彫りになっている印象は受けた。明確に不殺を掲げているわけではないにせよ、やはり殺人者ではあるんだな…と改めて確認してしまう部分もあった。あとアーロンパーク崩落のくだりは建築技術がヘボすぎて笑ってしまった。内装凝ってるけど素材砂?

あとは印象に残る主題歌、BGMはなし。『ウィーアー!』と『解放のドラム』が強すぎるわな……。ルフィが成人男性の見た目になり、より人間っぽく描かれるようになったこともあってか、吹き替え版における田中真弓氏の落ち着いた演技は見どころ。なんだかんだアニメ版の声優が吹き替えしてくれているのも安心できる。大筋の話は知ってるから流し見しててもいいというのがNetflixのダラダラ視聴と相性が良いのかもしれない。これが成功例になれば、みんなが知ってるマンガ×配信海外ドラマ化はまた出てくるかもしれない。わかってて切ってるんだろうけど、悪魔の実の説明とかよく考えればあまりにも少なかったよね。

クロコダイルまではやる気満々っぽいけど、じゃあこれで頂上戦争まで観たいかって言われると手放しで見たい!とは思わないのが正直なところ。ワノ国の話はもういょっと整理してドラマ化してほしいけど…。期待しないでみたら意外と面白かった、という感じなのですが、初期のワンピースを読み返したくなるというのは原作への貢献といえるのではないでしょうか。扉絵シリーズは本編でやらないのが疑問な重要ストーリーの場合もあるので、コビー・ガープ組をガッツリストーリーに組み込んでくれたのは大変良いと思いました。『聖闘士星矢』の記憶を上書きできてよかったね、真剣佑…。
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