真田ピロシキ

17才の帝国の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

17才の帝国(2022年製作のドラマ)
3.2
去年の最推し映画『彼女が好きなものは』の安藤くんと三浦さんこと神尾楓珠と山田杏奈がダブル主役で脇を固めるのは星野源に河合優実。主題歌は羊文学の塩塚モエカでなんと声の出演もしている大好物すぎるキャスティング。尊敬する塚本晋也監督も少し出演。1話を見た時の感想は衰退した近未来の日本でAIによって選ばれた若者達が実験都市の行政を担うという話に、SFの体裁を取りながら若年層のみならず全体的に投票率の低下が叫ばれて久しい日本人に民主主義を取り戻さんと今を風刺するドラマと思い啓蒙くささも感じるが良い感触だった。17歳総理 真木くん(神尾楓珠)のヤングケアラーという過去も切実な今を描こうとしていて、その当事者を見落とさないという姿勢を感じられた。地べたからの視点。

だけど3話から風向きが変わる。真木直々に総理補佐官として任命されていたサチ(山田杏奈)がそれまで何の役にも立っていないのはいいのだけど、真木が自分にユキという女の姿を重ねていたと知りショックを受けて公務を欠席。それは高校生だし多少はねと思ったがずっと休んでるの。いやさ、高校生でも1つの市に責任を持ってるのに100%私情で放り出したらいかんでしょ。こんな無責任な人を任命した真木の立場もマズい。前市長の保坂(田中泯)が生徒会と揶揄していたのに反論できない。しかもユキを知るきっかけが無断で真木の私室に入ったからで平気で他人のプライバシーは侵害するわ何なのこの娘。それでユキの正体は10歳で死んだ真木の友達をAIにして歳を取らせたもので、その外見はサチそっくりという。なんかアニメみたいな展開になってきたなと思ったらアニメの脚本家らしくて、美少女キャラのアニメでやられてたならそんなに気にならなかっただろうが実写ではノイズになり一気に冷め始めた。

真木のやる改革も市議会廃止に続いて市職員半数の首切りでドラマ上ではAIによる効率化という言い訳があるが、現実に当てはめると公務員を減らせと叫ばれていた声に聞こえる。それで公務員を減らして良いことありましたかね?役所ですら非正規になっていって。今更公務員バッシングかよと。保坂との対立も過去の風景を見せて情にほだされた感じでうやむやに解決したように見える。老人は大体にして悪玉だが、老人を見捨てる社会は若者も平気で見捨てると思いますよ。真木はユキが暴走したせいで一気にイメージダウン。支持率も約束してた30%未満になったので辞任となり、実際に考えると気持ち悪いと思われるのは仕方ないが、変なSFの話ばかりされてて身近な政治の話は遠のいたと思えてならなかった。自分たちで辞めさせておきながら、辞任時のスピーチを聞いたら暖かく見送っていたのも情に流されやすすぎてどうなの。ポピュリズム?利権政治に変わるのはポピュリズムと言いたいの?現状を鑑みると間違ってはいないのかも。

そんなんで3話以降はすっかり惰性。AIもメタバースも昨今の流行を取り入れた以上には思えず、高齢者層も見るNHKの限界なのだろうか。これが海外ドラマ並みたいな記事を目にしたが盛りすぎでしょう。サチというキャラは好ましく思えなかったが山田杏奈の一人二役は別人にしか見えなくて良くて、昨年は高校生ばかり演じていた河合優実が今回は正反対の役で楽しめた。塩塚モエカを存分に味あわせてもらえたのも大変良かったところ。来週羊文学のライブ行きます。