Blue

マイク・タイソンのBlueのレビュー・感想・評価

マイク・タイソン(2022年製作のドラマ)
3.8
タイソンの野生味は出ていたけど、全体的に淡白になってしまったドラマだなぁというのが感想です。3話あたりまでは惹き込まれてたけど、そこからはちょっと駆け足で人生を描いてしまったというか。

タイソンが似てないというレビューもあるみたいだけど、まーウィルスミスがモハメドアリを演じた事を考えるとまだマシだと思って見ましたw。
野生味は出ていたし個人的に主役には好評価です。
HBO制作でウイニングタイムというドラマを見たあとで、音楽も映像も遠慮なく金を使ってゴージャスに描いていたけど、こちらは同時代でありながら迫力がなかったというのが印象でした。

とは言っても時代に呼応したドラマで、これから10年を占う意味でこのドラマは一つの指針を指したドラマと言っていいかな、と思います。

貧困があり、ルールも掟も関係なく、成り上がっていく事が全て。似たようなドラマが他にもあります。先に示したNBAのレイカーズの社長とマジックジョンソンとの関係を描いたウイニングタイム、Netflixで人気のナルコの神、とアニメのサイバーパンク、これから配信され世界中で人気を博すであろうチェンソーマンなど。

格差がひろがり、トランプ以降の人種による意見の対立、分断も広がる中で理想や夢よりも金を権力をつかみとろうとするようなドラマが量産され人気を博している中で、マイクタイソンはまさにピッタリなアイコンとも言える。

その一方でこれからアメリカはラテン、アジア、黒人という有色人種が白人よりも多くなります。

タイソンは人生そのものを成り上がっていくが同時に失いもする。そして現在は自己を見つめなおし数えきれない犠牲者を出したが、再び人生を歩み始めている。
つまりアメリカの歴史において、世界の歴史においても有色人種は色々と暗い歴史がつきまとったが、これからは舵を切っていくのは有色人種であるという事。

その勢いを感じさせる象徴としてこの時期にタイソンのドラマを制作するのは、これから10年の間ではとても意味のある作品だなと思います。

40代以上の人ならば誰でも知っている存在で、劇中にあったマイクタイソンパンチアウトというゲームは、スーパーマリオもロクにクリアした事がないゲームが苦手の自分でもクリアしたゲームです。今でもやりたいですねw。

確かにあのあと白人がボスキャラになっていた気がします。タイソンが東京ドームで負けた日も憶えています。家で親戚のおじさんとか来てタイソンが負けてみんなが嘘だろと言っているなかで、友達から電話がきてドラクエ4買ったから遊びに来いと言われ、タイソンが負けた衝撃のシーンを頭の中で思い出しながら雪道を走ったのを鮮明に憶えています。
またアメリカにいた時にタイソンが耳をかじった試合もリアルタイムで見ました。始まる前に1時間くらいドンキングが話をしていて、終わってからもドンキングが1時間以上話をしていてウンザリしたのを憶えています。
レイプして刑務所に入った時の事も、そのあとの散々な事の顛末も。

産まれる前にも後にも貧困があり、いじめがあり、その上で犯罪者となり、結局道具として良いようにあしわられた。
タイソンならずともスポーツ界にはそういう人が沢山いたと思います。特にボクシング界は。

デカい相手でも恐れるわけでもなく果敢に攻めてKOを勝ち取る姿は、カッコよくもあり怖くもありました。安全に暮らせる地域で、まともな親によって育てられていたら、20歳から35歳くらいまでチャンピオンでいられたのではないか、と鑑賞後に思ったりもしました。

1人でスポットライトを浴びてステージに立ち、声は聞こえるが周囲の人は見えない。でも何が起こるかわからないこの暗い中でもこれからは潔白に生きていたいという白の服装を着込んで話すタイソンという演出はとても良かった。

このドラマはこれから10年を占う意味でも最初のストレートパンチである事は間違いないと思います。時代が動き始めた事を実感する作品でした。
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