Blue

バリー シーズン4のBlueのネタバレレビュー・内容・結末

バリー シーズン4(2023年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

8話でおよそ4時間弱。映画を2本見終えるくらいでとそれでこの物語とオサラバするという、見る前にちょっと切ない気分になりましたが、2日間で見終えました。
コメディの部分は抑えめかなと思ったけど、小ネタ満載で笑いながら6話目からは爆笑しながら見ました。
刑務所でケビンコスナーが映っているドラマがありました。あれはイエローストーンというドラマで、トラウマを抱えた孫とトラウマのキッカケを結果的に作ってしまった祖父とのキャンプシーンです。
なるほど確かにイエローストーンの人間関係に似ている。この時点でバリーと叔父フュークスとの関係、あるいは演技指導のクジノーとバリーの関係を想起させたし、最終的にこの二つの軸がもつれ合っていくのだなと想像しました。

荒涼とした大地にポツンとある家、誰かが来てもすぐに危険察知できる様な場所で生活するバリーの家族。
同時にあの殺伐とした風景そのものがバリー、サリーの心象風景でもある。そしてキリスト教を信仰するバリーの姿になるほどと思いました。キリスト教の聖地はイスラエルである事。ユダヤ教では荒涼とした地で人間は赤土によって作られたと言われてます。

そこに昇る朝日は生命の誕生、夕陽は死を想起させるし、イスラエルは荒涼とした砂漠地帯でもある。リンカーンもユダヤ系アメリカ人です。ハンクとクリストバルは砂の事業を手掛かけ、クジノーの姿はイエスキリストにどことなく似ている。その胡散臭い姿に笑いましたが、イエスキリストは罪を背負って十字架につけられ、3日後に死人から蘇る。
キリストの復活にかけて彼はイスラエルから帰ってくる。

シーズン4の、このドラマのテーマは、時は砂時計の砂のように落ちていき、人間はその落ちてくる砂に埋もれてゆく事かなと想像しました。
そして人間そのものも細胞という小さな砂が結合してできたような生物であり、死ぬと人間の姿は砂のように崩れ、やがて跡形もなくなり吹き飛んでゆくような存在である。

砂の事業によって大儲けして一階のフロアにクリストバルの銅像?がありましたが、これは間違っているかも知れませんが、その顔を見てクリストバルは実はイエスキリストに寄せた人間だという事に気づきました。イエスキリストがどんな顔だったのか、色々と顔を復元した画像があるのですが、ちょっと似ているのです。
そしてキリスト教の教義には偶像崇拝禁止があるのだけど、金にまみれた形で偶像があるという事がその滑稽さを表しているし、そこで一瞬の砂嵐のような銃撃戦が繰り広げられ、砂によって儲けて建てられたビルの真っ白なフロア/砂漠に死んでゆくという流れはなんとも無常感が溢れる演出だと感じました。

バリーも奪還しにビルに来るけど、マシンガンを買って車に乗り込む背中の姿は銃と銃が重なって十字架/罪に見えるというところもおかしかった。

見終わった後は「蜃気楼」のようなドラマだったと思うし、そこが狙いだったのではないかと思います。ビルヘイダーとアレックバーグのこのコンビには常に驚かされてばかりでした。こんな言葉だけでは足りないけど。

トムクルーズが一生懸命熱いアクションと興奮する映画を制作してるのに対して、このバリーは低温でありながら中身はとても熱いドラマでもある、はずしてるのにハマってるという、それも常にハマってるというかなり稀有なドラマだと思いました。
サクセッションシーズン4が終わり、もうこれ以上のドラマに2023年は会わないだろうと思っていてなんの気なしにバリー見始めたら見事どハマり。
なんだこのドラマはと爆笑しながら見ていたら、テコンドーの娘の回では掟破りの演出に、これやっていいの?と思いながら大爆笑、このドラマは何をしですかわからないと目を離せないままラストまで一気に見ました。
ラストの意味がなんなのか、まだ思考が追いついてないですが、色々と思い返しながら余韻に浸れそうです。

盛大なスタンディングオベーションをビルヘイダーとアレックバーグそしてスタッフとキャストに。画面を通じながらとてもとても満足度の高い観劇でした。
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