地上とは別の進化をたどった地底帝国チューブがついに地上侵攻に向けて活動を開始した‼︎
チューブの侵攻を阻止するために光戦隊の姿長官はレーシングチームの若者たちをマスクマンとして鍛え上げ戦いに挑む‼︎‼︎

若き日の海津亮介主演の光戦隊マスクマンと地底帝国チューブとの戦いを描いたスーパー戦隊シリーズ‼︎
まさにスーパー戦隊版ロミオとジュリエットといった感じの作品で主人公のタケルと地底帝国のイアル姫の結ばれない愛を中心に描いており恋愛要素が全体的に強めな印象であった。
また登場人物も魅力的で個人的には地底帝国のイガム王子とイアル姫という双子の兄妹を見事に演じ分けた浅見美那さんの演技が大変素晴らしくファンになった。
若干ラストの展開が急ピッチだったりレッド以外が目立つ回が少なめなど寂しい部分はあったが、全体的には安定した出来のスーパー戦隊シリーズだった。

本作の演出は劇場版含めほとんど長石多可男と東條昭平だけで回しており、終盤山田稔がいくらか登板するが、現場の大変さは想像に難くない。それでも今作でメイン監督デビューを飾った長石演出はどれも工夫に満ちている。

まず、ショットの暗さが良い。今作の敵陣営は地底帝国チューブという集団であるが、地下からやってくるという点において、例えば『ダイナマン』のジャシンカ帝国と類似はしている。だが、ショットの暗さによって、少なくとも画面においては差別化ができている。チューブの方がどこか不気味に映るのだ。キアロスクーロかというくらいカッキリとした陰影から心霊ビデオチックな（黒潰れして見えづらい、けどどこか惹かれてしまう）暗さまで、バリエーションに富んでいるのも嬉しい。

また、手のイメージが作品の主題を象徴している点も好印象。何よりもまずOP・EDが然り。OPの、メディテーションの構えとしての印を結ぶ手のアップ、というのはもちろん、EDにてあやとりを五人でリレーしていくというアイディアは、本当に発明だと思う。連帯というものが見事に視覚化されている。
あるいは、2号ロボのギャラクシーロボが、戦隊ロボには珍しく必殺技が徒手空拳であることも見逃したくない。
終盤になると、レッドマスク=タケルと反逆者・イアル姫との恋愛模様に、チューブのはぐれ者・キロスが割り入ってくる。テレビ画面に映された姫を愛おしく触れるタケルの手、氷漬けにされた姫へ伸ばされるキロスの手…。というように、手は、愛を雄弁に語ってみせもするのだ。
仲間と団結する手、敵を撃ち倒す（鋼の）拳、そして愛を語る手。このように、手のイメージを追えば、この作品のテーマは一目で分かるようになっている。

「人の体には、未知の力が秘められている！鍛えれば鍛えるほど、それは無限の力を発揮する！！」
というナレーションでおなじみのスーパー戦隊シリーズ11作目は、人体に秘められた可能性・オーラパワーを使い変身する光戦隊、その名はマスクマン！！
5人のヒーローは全員が武術の達人で、厳しい修行の末にたどり着いたオーラの力で敵を打倒します。

前作、前々作、その前も宇宙規模の戦いとなっていたことから、本作はその逆をいく構成となっています。
修行で身につけた人の内なる力で変身するという設定もそこからで、敵の脅威を察知していた姿三十郎が集めた、才能のある5人の若者が主役です。
本作の敵は、遥か太古の昔、地下で人類とは別の進化の道を辿った地底世界の帝国です。
地底を侵略し、統一を果たした地底帝国チューブの王ゼーバが、次に地上の征服を企み攻めてきます。
光戦隊マスクマンは、必殺の武器・ショットボンバーや、5大合体ロボ・グレートファイブでチューブの悪の計画に対抗します。
見せてやるんだオーラパワー！光戦隊マスクマン！！

基本的にシンプルなストーリー展開で、地下帝国の侵攻という点に珍しさはありますが、わかりやすい敵の帝国とそれを迎え撃つ戦隊ヒーローの図式で進みます。
チューブ内でも複数の幹部がいて、チューブの侵略を進めるために地帝獣を率いて作戦を勧めます。
その幹部間の衝突はあれど、内部分裂や複雑な勢力争いなどはなく、一貫してマスクマン対チューブの戦いが描かれます。
ただ、ひとつ大きな試みがあり、それがレッドマスクことタケルと、チューブの王女・イアル姫のラブロマンスです。
ストーリー序盤に、タケルとイアルはお互いの素性を知らずに恋人同士となっており、まもなく引き裂かれる運命が訪れます。
裏切り者となったイアル姫は氷漬けとなり、独居に幽閉されてしまいます。
この二人の恋愛が作品の主軸となっており、戦隊ヒーローには珍しいロミオとジュリエットのような図式は女性ファン獲得に貢献したようです。
ちなみに前作以前より、この頃の戦隊ヒーローは女性人気が高く、美形男子が演じる敵幹部が人気だったので、本作で描かれるラブロマンスもそれを意識したものだろうなと思います。

加えて、マスクマンでは、ブルーマスクの人気も高かったですね。
16歳の少年拳士・アキラが変身するのですが、これがなかなかチャーミングな顔をしていて、当時、アイドル的な存在でした。
終盤では、そんな彼が洗脳を受けて敵の戦士としてマスクマンと戦うというサービス回（？）もあり、タケルのラブロマンスも含めて女性ファンサービスの熱い戦隊ヒーローと思います。
なお、アキラを演じる広田一成氏は中国武術のガチ勢で、アキラを演じていた時点で武術の世界選手権の上位入賞者という超凄腕だったりします。
アキラの洗脳回では、彼が生身でアクションをするので、そのキレのある動きも見ものです。

ブラックマスクことケンタとタケルの、当時の若者コンビの掛け合いも楽しく、忍びの出身であるハルカが、仲間といるから弱くなったことに気づき自分の本当に強さに気付いた回も名作回です。
ピンクマスクことモモコとアキラの2人が協力する回もよく、各メンバーひとりひとりの個性が光っていたと思います。
ストーリー構成がシンプルな分、キャラクターの掘り下げに振れたのかもしれないと思いますが、一方で、展開が単調と感じる可能性もあります。
恋愛要素の取り込みも女性ファンは盛り上がりましたが、男性ファン的にはノイズと感じるのかもなあと思ったりしました。