オーストリア=ハンガリー帝国、皇妃エリザベートを描いたドイツの伝記ドラマ。
田舎娘が帝国に嫁いで王子との恋や母君である女王に虐められて〜っていう宮廷ロマンスの王道。
ロケ地の宮殿や衣装美術が美しいんだけども、王宮の煌びやかな壮麗さに死せる帝国の何処か暗い色彩が印象深い。
セットが限定的なのも帝国の衰退期ってことで納得もできる。
それでも宮殿や庭園のロケ地はとっても美しいので目に嬉しいのも間違いなく。
史実では、バイエルン人として産まれながら、オーストリアでは抑圧されているハンガリー人に同情し、近代ハンガリー史に影響を与えることになるエリザベートの反骨精神や快活さが、保守的な伝統に凝り固まって身動きが取れない死せる帝国にも垂らすっていう王道の宮廷ドラマとして楽しめた。
エリザベート自身の運命や、周りを取り巻くいづれも非業の死を遂げる登場人物たちのキャラの史実の濃さも含めて中々に興味深く。
夫であり皇帝である若きフランツ=ヨーゼフ1世は、死にかけた帝国であるハプスブルク家とオーストリアを引き継ぐわけだけど、後に第一次大戦によって帝国の崩壊と絶望を見届ける形でこの世を去るわけで。
意地悪なママ母として描かれるゾフィー大皇妃も1850年代のナポレオン戦争後のプロイセンの台頭やイタリアの勃興など厳しい国際関係で堅実な舵取りをせねばならならないキャラでもある。
印象深いキャラ達の中で本シリーズ内で取り分け個性的に描かれるのが、弟マクシミリアン。
本シリーズでは道化として描かれる彼だけども、弟として産まれた以上、周囲から期待されずに重大な事を成し遂げたいという承認欲求の塊みたいな小物感がクセが強い。
そんな彼が後にフランスの操り人形であるメキシコ帝国の王に据えられ、革命を前に「メキシコ万歳!独立万歳!」と絶叫して最期を遂げるという史実を知っていると、王として生きたいという彼の願いが痛々しくも中々に胸に迫るものがある。
第一次大戦までのヨーロッパの平和の100年と言われた時代において、死に向かいつつあるオーストリア=ハンガリー帝国の激動の最期をそれぞれ踠きながら生きた人々の数奇な運命という目線で観れば、中々味わい深い作品だと思う。
シーズン2の製作も決まったみたいだし、楽しみ。