塔の上のカバンツェル

ロキ シーズン2の塔の上のカバンツェルのネタバレレビュー・内容・結末

ロキ シーズン2(2023年製作のドラマ)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

マーベルのドラマシリーズでベストだと思う。
というか、他のドラマシリーズが画やVFXが似たかよったものばかりなので、本作の異彩さが凄いポジディブに受け取れた。

やっぱりSFファンタジーの看板も掲げているんだから、混沌無形なユニークな画を見せてほしいところ。そんな最近のチープなCGと似た展開に食傷気味だった最近のマーベルシリーズなので、本作の美術や造形の総合値としてのシネマトグラフィは誉めたい。

全編をライトオレンジとライトグリーンで小物やセットを色調統制してる美術への力への入れようは素晴らしい。
ライティングやセットもロキのテーマカラーのグリーンで揃えてるし、このドラマシリーズが誰の為の物語か、ということを思い出させてくれる。意味を持った舞台作り、雰囲気作り。
この気の利かせ方が最近のマーベルに足りない最大の要素だと思う。

特にライムクリームパイ。美味しそう。

TVAの60年代レトロフューチャー感も引き続き楽しい。

SFの雰囲気と合わせて、物語時代がどこに転がっていくかわらない感覚…
このシリーズの魅力は金かけたNHKの教育番組でやってた「天才TVくん」や「世にも奇妙な物語」、「トワイライトゾーン」、「ドクターフー」みたいな、観客が何見せられているかわからない感覚に襲われるとこに醍醐味があるんじゃないかな〜。

これまた最近はお腹いっぱいの、平行宇宙、多次元世界…"あらゆる可能性"は何でもありの扉を開き、"どうでもいい"への最短ルートに繋がってしまう危険性が常にあるわけで。
しかも時間改変モノに付き物の、過去や未来を変えたら、その時間軸に生まれるはずだった生命や助かる命や可能性も全部摘み取る…それはジェノサイドでは?…っていう創作上の不都合に真っ向から向き合うこのドラマ。

風呂敷を大きく広げた上に着地するのは、友達が欲しかった孤独なロキが、友達をへて、自分第一のナルシズムから友達や他者のために人知れない存在になることを選び取る…めちゃめちゃ成長じゃないですか。

デッカい世界観にミニマムな個人の成長を描くのよい。

捻くれ者のロキというキャラがまっすぐ成長した上に、ラストは皆んなの平安が映される中に彼の姿はいない…
こういうほろ苦いSF、嫌いじゃない。好き。

楽しかったです。