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シュルプのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

シュルプ(2022年製作のドラマ)
4.6
時代劇なのにテーマはとっても現代的で、王妃と大君たち、大妃と王、後宮と息子…とそれぞれの親子が織りなす物語の中に、派閥やしきたり、格式を重んじる宮廷で生きながらも、自分の生き方を自分で決める、自分の思う通りに生きることを主題とし、そこにクィアの存在や男性の育児、女性支援などのジェンダー的話題を盛り込んでいて、とても新しさを感じました。

キムヘス演じる王妃が、肝が座っていて強く頼もしくありながら、息子達が抱える問題に、自分の思いを押し付けたりせずに、彼らに耳を傾け、理解をし、意思を尊重し、味方になってやれる、ほんとにかっこいいお母さんでめちゃくちゃ魅力的でした。

世子のポジション争いなどの権力闘争をめぐり、様々な陰謀や妨害を仕掛けてくる大妃や後宮たちに対しても、問題の解決の仕方が、復讐や単なるやり返しではなく、もっと大きく包み込む事で相手の心を変化させていく、その懐の深さにも毎回痺れたし、自分にとって都合が良いかどうかよりも、正しいことかどうかを考え貫けるところもかっこよかったです。

キャストもとても良くて、キムヘスの王妃がほんとにハマり役で、毅然として堂々たる王妃ぶりなのに、やらかした息子達を追いかけて宮廷内を爆走したりと、チャーミングさや母ちゃんとしての親しみも感じられるキャラクターを見事に演じていました。

あと大妃役のキムヘスクさんの憎たらしさも凄すぎる!
話し方、表情、何もかもが怖いし腹黒過ぎて、こんな姑は絶対イヤなのです。
キムヘスvsキムヘスクの対決が、迫力があってドラマの見どころのひとつになっていて、とても見応えがありました。

それから、王妃の息子である大君たちもまたそれぞれが可愛いんですよね。
問題児だった次男のソンナム大君も、自覚が芽生えて世子の器になっていくところや、これまでの母から受けてきた愛を感じて自立していくところも良かったですし、三男のチャラ男に見せかけて、困難な状況でも諦めずに自分の生き方を貫こうと頑張る姿にも、心から応援したくなったし、わたしは何と言っても四男のケソン大君のエピソードがほんとに泣けてきて、あの時代に絶対に理解も受け入れもされない事に苦悩しながらも、隠れて生きるのでなく、自分らしく羽ばたこうとする姿に、ただただ幸せになってほしいと願わずにはおれませんでした。

最終話がとにかく素晴らしくて、タイトルの「シュルプ」である傘のシーンで、母の愛に支えられて息子達がそれぞれ自立し、今度は母を守る傘になるまでに成長していった事を感じる美しさと、ポスターや3話に出てきた映像を持ってくる演出の妙にうならされました。

はじめは朝鮮時代版「SKYキャッスル」的な印象でしたが、権力争いによる陰謀も絡めながら、でも主軸は親と子の普遍的なストーリーであるところも良かったです。
ケソン大君を演じたユソノが、私の大好きなバラエティ番組の「1泊2日」にレギュラー出演することが決まったらしいので、これからますます楽しみ!
キムヘスとキムヘスクの大御所の演技対決も素晴らしかったですが、大君、王子達などの若い俳優達もとても良かったので、これから活躍が期待できそうです!

追記:
たまたま京都のウトロ記念館の事を知り、この夏に訪れましたが、記念館の展示の中にキムヘスさんの写真があってビックリ。
彼女は、もう20年近く前から、ウトロ地区の在日朝鮮人の人たちを支援するために寄付をし続けてたそうで、差別され苦労してきた上に立ち退きを迫られている人たちのために市民運動にコミットするというのが、なんて聡明でかっこいい人なんだろうと感動しました。
(ちなみに、キムヘスさんだけでなく、韓国を代表する人気コメディアンのユジェソクさんも、長年ウトロを支援していて、彼の人気バラエティ番組でも取り上げたり、ウトロ地区を訪れたりもされてたというのを展示で知りました。)

このドラマでキムヘスさん素敵!と思った方は、彼女個人としてのこういった素晴らしい側面も知ってもらえたらと思います。


キムヘスク 20作品目
キムヘス 7作品目
ウジョンウォン 9作品目

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