ゴトウ

初恋、ざらりのゴトウのレビュー・感想・評価

初恋、ざらり(2023年製作のドラマ)
3.6
小野花梨と風間俊介の快演、わりに重苦しく、動きも少ない話も観ていられた。発達障害の妻と定型の夫(『僕の大好きな妻!』)のドラマも直近であったし、ドラマの題材として深夜の30分枠では浸透してきているのかな。ことごとく異性愛カップル、かつ女性側が障害者設定なのは、発達障害を題材にしたフィクションにおけるジェンダー規範なのか、経済的に発達/知的障害男と定型女のカップルは成立し得ないというグロテスクな事実があってそれを下敷きにしているのか?

弱者を切り捨てずに共に生きていくという理想はあれど、できることだけ(簡単なことだけ)やらせていることに意味があるのか?そこで相対的に低い賃金だけを得て生きることはできるのか?できるとしてそれは「社会」に参画できているといえるのか?そしてその時、当事者の自己実現は置き去りになってはいないか?といった問いにまで発展していくのは題材に対して誠実ではある。一方で、一つのドラマとしてどう決着をつけるのか?にはヒヤヒヤしながら見ていたのだけれど、「あなたは僕といると自分が欠けているように感じて辛いかもしれないけれど、あなたがいると僕は幸せだからそばにいてほしい」と一個人のエゴに回収してみせた。これが有紗の言うように「ズルい」のかもしれないけれど、ある意味もう一段誠実であるようにも思えて、素直に感動させられた。現実にある問題に対して何か解決策を提示することが、フィクションに確実に必要というわけでもないと思うし。

母親と暮らす家のリアルさとか、自分で選んでいるんだろうなと思える有紗の服装とか、細かいディティールもよかった。運送会社のパートのおばさんとか、よくぞあんな絶妙にいそうな人の絶妙な言動描けるな〜と感心した。地上波ドラマ観てると、「若い勤め人の主人公が都内の広くて綺麗な部屋に住んでる」みたいな絵面のリアリティの無さで真剣に見る気失せるみたいなことがよくあるのですが、こういうところまでこだわりが見えるとより身を乗り出して話を楽しめるような気がします。
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