Blue

そして誰もいなくなったのBlueのレビュー・感想・評価

そして誰もいなくなった(2015年製作のドラマ)
4.6
素晴らしい作品でした。アガサクリスティの大ファンでそれも相当かなりうるさ型のファンですw。
この作品は小説と殺害方法も違うし、ラストも違います。ここで切るのかと驚いたけど、むしろミステリーの部分が強調されてこれはこれでとても良かった。

このドラマはサイコスリラーの側面を強く出していました。まぁその手のサイコものが好きな人は肩透かしくらうかもしれませんが、ミステリー重視のドラマなので。
俳優も一流どころばかりで、それぞれの役をしっかり細部まで理解して演じているのでとても満足でした。

一応、犯人の思惑があってなぜこんな事をしたかという理由があったので、この文章の最後に小説のラストの事はサラッと書きたいと思います。もちろん犯人は誰かという事は書きませんし、ドラマでのネタバレにはなりません。なぜあんなレコードが存在をしたのか、なぜ村の人々は来なかったのか、その設定は書きます。何も知りたくない人はここでやめてください。

そして誰もいなくなったは中学2年の時に読んでから少なくとも毎年読んでいておそらく50回は読んでいます。ちなみに42歳ですw。
遠方の出張の時とかには必ず持っていきます。ほどよい文量で4時間くらいで読めるし、ほどよい文学性で重くもなく、ミステリアスに終わっていく様にとても惹かれます。

つまり軽くもなく重くもなく、しかし構成がキッチリとして見事なのに文章は流麗で、読み終わった後はアガサ独特の余韻に浸れて最も読んでいる本です。
英語でも読んでますが、アガサクリスティの場合は特に翻訳が素晴らしいです。

音楽も素晴らしくアガサクリスティの小説にピッタリの音だと思いました。ただ全般的に音が鳴っていて、沈黙が恐怖を誘うような部分がなく、ラストの方で波の音を強調するだけでいいのに、音が常に鳴っていて残念に思いました。まぁそこくらいかな。減点は。

過去を振り返るところがどんな感じになるか心配だったのですが、サッと振り返りパッと現実に戻り淡々と進みながらジワジワと恐怖が近寄ってくるところを見せ場にしてるところがとても良かった。

小説には小説の面白さがあり、ドラマにはドラマの面白さがある。質感は一緒で見せ場は違えどもやはり一流の俳優達の息の合った掛け合いは素晴らしかったです。

とても満足のいく良作でした。BBCのドラマは本当に充実しているなと実感しました。多分毎年見返しそうなドラマです。



とここまでがドラマの感想です。小説の事を書きたいと思います。
まずレコードについてはアマチュアの劇団が舞台に使うので録音したという設定になっています。

もう一つ、島になぜ村民が来なかったかというと、かつて所有していた人がアメリカ人で夜な夜なパーティなどをしていたために村民の間では訳の分からない事をやってるから寄り付かないという風になっていました。
そして今回はさまざまな職種の人々がこの孤島で一週間どんな生活をするか実験をするから、寄りつかないでくれ、と頼まれていたという事になっています。

犯人は殺害の順番と罪の重さの順番に行われていて、この手順も含めてある意味これも芸術であり、最初はこの完全犯罪を謎のままにしておこうと思ったが、やはり他の人にも自分の事を知っておいて欲しいという欲求が出てきて、瓶に全てを書き記した手紙を入れて海に流します。

それをひろった漁師がいて手紙を警察に渡して終わります。

ここからあくまで個人的な小説の感想ですが、真実を書いた手紙を瓶に入れて流す=人生という大海原で、真実の入った瓶を見つけられる確率はわずかだし、そこに書かれている事が必ずしも良い事ではないかもしれない、というところにアガサクリスティの精神性があってとても惹かれます。

ドラマと小説とでは最終的に違う終わり方になるけど、本を読んだらドラマが見たくなる、ドラマが見たくなったら本を読みたくなる、そんな循環作用ができた稀有な作品だと思います。

本もドラマも遠い海の向こうの孤島であなたが来るのを待っています。ぜひ導かれるまま舟を漕いでください。

真実の入った瓶が見つかるとは限りませんが。
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