こたつむり

赤い指のこたつむりのレビュー・感想・評価

赤い指(2011年製作のドラマ)
4.0
加賀恭一郎ふたたび。
そんな軽い気持ちで臨みましたが…連続ドラマの“コミカルな雰囲気”は皆無。ひたすらに“しんどさ”が付きまとう物語でした。

唯一の救いは物語の構造が分かりやすいこと。
捜査する側とされる側。つまり、刑事と犯人の両方の視点で描かれるため、迷うことはないのです。しかも、丁寧な筆致なので感情も添わせやすく、気付けば物語世界に引きずり込まれていました。

また、配役も相変わらず見事なんですよ。
主人公の父親役である山崎努さんは当然のことながら、特別出演である田中麗奈さんも素敵な存在感。華やか過ぎず、地味になり過ぎず。病院の屋上の場面は印象的でした。

ちなみに主軸は連続ドラマと同じ“親子の情”。今回は主人公である加賀恭一郎の背景も描かれ、犯人側と上手く対比しています。しかも、その構造を終盤で説明してくれる親切設計。少し野暮ったいですが、この分かりやすさが“テレビドラマ”の持ち味ですね。

それに大切なのは主題を如何に受け止めるか。
本作で言えば、杉本哲太さんが演じる役柄がキモです。思うに、職場では優秀な上司なんでしょうね。機転の速さや決断力など、見倣いたい部分が散見されました。

それでも、道を誤ることはあるわけで。
どこにポッカリと穴が開いているか…分からないのが現実。他人事ではありません。自身の幸福は“砂上の楼閣”と捉えて、常に謙虚でいるのが大切だと教えられた気がします。

まあ、そんなわけで。
シンプルなタイトルからは伺うことができない深みがある物語。タイトルは『赤い指』でも、物語を支配するのは漆黒に近い青。思わず呼吸が浅くなる場面もあるので、それなりに覚悟して臨んだほうが吉です。

ただ、僕としては先の展開が楽しみになりました。正直なところ、連続ドラマの終盤では“軽妙な雰囲気”がノイズになっていたので…(特に刑事主任の軽さが事件の軽さと同義になっていた気がします)重量感があったほうが好みなのです。
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