山岡

ワンダヴィジョンの山岡のネタバレレビュー・内容・結末

ワンダヴィジョン(2021年製作のドラマ)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

MCUフェイズ4の1作目にして、今後多数予定されているディズニープラス向けオリジナルドラマの1作目として非常に注目度の高かった作品。

僕としては、初めて本格的にMCU正史とリンクする作品ということで期待しつつも、ワンダとヴィジョンという、これまでさほど魅力的に映ってこなかったキャラが主人公であること、そしてトレイラーで示された擬似レトロシットコムからかなりの不安感も持っていた。しかし実際蓋を開けてみると視聴者の想像を遥かに超える衝撃的な作品で、リアルタイムで見られたことをとても喜ばしく感じた。

とにかく、50〜60年代のシットコムの凄まじく手間のかかったパロディをエクスキューズもなく垂れ流し続けた1〜3話の衝撃は凄まじかった。サノスとの戦いで死んでしまったはずのヴィジョンと、彼を失い悲しみにくれているはずのワンダが何の説明もなくおしどり夫婦を演じている映像は、ヴィジュアル、音声、ネタの質感、そのいずれもが50,60年代の当時のものを見事に再現しており、その凄まじい手間と労力に感嘆…その一方で、コメディとしては1ミリたりとも笑える場所がなく、ただただ不気味、奇妙なフィーリングだけが残る…しかしそれがつまらないかといえばそんなことはなく、少しずつ小出しにした提示される謎について推理するのは面白いし、そもそも、先の見えない衝撃的な映像を見ていることそれ自体が非常にスリリングでサスペンスフルな体験となっている。この余りにも奇妙な1〜3話は、『アベンジャーズ エンドゲーム』で史上最高興収を記録した超人気シリーズだからこそできる試みであると同時に、映画ではなく毎週配信されるドラマシリーズならではの表現であると思う。

そして1〜3話の苦行の後、擬似シットコムの外の現実で何が起こっていたかが示される4話。まるで高温のサウナに長時間耐えた後に入る水風呂のような快感を覚えた。あの回の喜びは今でも忘れられない…これまでシリーズに登場していたダーシー、ウー捜査官、モニカ・ランボー(大人の状態で出てきたのは初めてだが…)などのキャラクターがクロスオーバーしてくれる喜び、3話までの謎が一気に紐解かれる気持ちよさ…そして何より誰もが気になっていた指パッチンで消えていた人々が現実世界に戻る瞬間が描かれたのには非常に感動した。個人的なピークはこの4話だ。

もちろん、『X-MEN』シリーズとの合流とマルチバースの存在が示唆された5話も嬉しいサプライズだったし、エリザベス・オルセンの姉が出演していた『フルハウス』にオマージュを捧げた6話もかなり見応えがあった。

しかし、その後の7〜9話は…これまで残してきた謎の伏線回収がなされるものの、そのどれもが視聴者の想像を超えるものではなく、映像的な刺激にも乏しかった。前半戦で余りにも衝撃的な映像を見せられ続けたので、ハークネスの見せる魔法の世界や2人のヴィジョンによるバトルを見せられてもピクリともスリルが感じられず、正直、後半戦はかなり尻すぼみ感があった。

とはいえ、シリーズ全体としてはとても満足のいく作品だった。毎回毎回見せられる凄まじく手間のかかったシットコムのパロディは見応え抜群だったし、話数が進むにつれてパロディ対象のシットコムの年代が新しくなっていく様も、シットコムの歴史を大河ドラマで見せられているような不思議な感覚があって面白かった。そして何よりもシットコムの主人公になりたいワンダを、姉のオルセン姉妹がシットコムで名声を得て、これまでの半生で姉たちの影を追い続けてきたであろうエリザベス・オルセンが演じたという、題材とキャスティングの見事なマッチングこそが作品の最大のキーとなっていたように感じる。

この約2ヶ月、毎週金曜日が楽しみで仕方なかった…MCUのチャレンジに心から敬意を表するとともに、再来週から配信が始まる『ファルコン&ウィンターソルジャー』に大いに期待する。
山岡

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