こたつむり

レディ・ジョーカーのこたつむりのレビュー・感想・評価

レディ・ジョーカー(2013年製作のドラマ)
3.5
★ きらきらと輝くもの、ざんざんと貫くもの
  君が捨てたのは枷ではない、寧ろ希望だ

「これぞ、刑事ドラマのお手本だ」
と言わんばかりの硬質な手触りでした。
ドラマの教科書なるものがあれば、載るのは間違いなし。そんな安定感がありました。

特に素晴らしいのが小道具やロケハンの拘り。
ビール会社内にある食堂(接待にも使える立派なやつです)とか、身代金を用意するときに紙幣の番号を控えるとか、捜査本部に用意された栄養ドリンクの山とか。

ひとつひとつを怠ることなく、語ることなく。
淡々と積み重ねているから、多少の嘘や誇張もドラマ的な演出として見逃す気分になれるのです(それに、その辺りにツッコむと虚構として成立しません)。

それも時間がたっぷりとあるから為せた業。
7話で372分。通常の映画の3倍ですからね。多少、ダレる部分はありますが、鑑賞後にずしりと胃の奥が重くなるのも当然。満腹感は格別です。

あと、音の使い方が上手いですね。
効果音や伴奏の入れるタイミングが「ここしかない」と思うところばかりで「音を制する者は物語を制する」と誰が言ったかどうかは知りませんが、その言葉を地で行く演出でした。

ただ、ミステリとして捉えると肩が下がるかも。最終回の盛り上げ方から察するに、社長が誘拐されたとか、身代金はビールだとか、事件性の高い部分は物語が動き出す“きっかけ”に過ぎず、本当に描きたいものはその先にあるのです。

その辺りが大人のドラマたる所以でしょう。
地上波と違う味わいは、まさにアルコール飲料。勿論、未成年お断りではないですけどね。

まあ、そんなわけで。
濃厚な味わいの社会派刑事ドラマ。
不条理の先に浮かび上がる慟哭は慚愧の念か、勝利の咆哮か。欲を言えば、もっと破天荒な部分があれば深みが増したとは思いますが…そうすると社会復帰が難しくなりますからね。人生はバランスが大切だと思います。
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